真・闇の会夢幻格闘化計画{Dream Duel Project}大番長After.Age表紙
真・闇の会サイトマップ

序章最終話 第一章 「Noir&Branc」

序章最終話 第一章・新規登場人物
鈴麗蘭

ONLY YOU〜リクルスから登場。
現在では鳳凰学園の副総長を務めている。

ロック
闘神都市Uから登場。
神威から不老不死を約束されて仕えている死人使い。

5秒CM
鈴麗蘭
「今日の大番長AAは妾{わらわ}の出番じゃ。
 かつ目して見るが良い。」
<とある場所>
(ORISINAL SONG31.Dash! To Future〜unpluged〜)
 学聖暦1X年 X月X日の頃、
 界孔の中からあたかも
 ピンボールゲームのボールの様に
 弾き飛ばされたマリーシアは、
 同じく魔界孔から弾き飛ばされた
 エクレールを探して
 三国と真宿の間の境を探索していた。
 ここら辺一体は、
 聖城学園と姉妹関係を結んでいる
 鳳凰学園の領内である。

 鳳凰学園は嘗ての聖城学園に毛が生えた程度の
 弱小勢力に過ぎなかったが、
 鳳凰学園にはタイガー・ジョーや魔神勇二ら
 国内屈指の特待生が在籍していた為、
 PGG・ナイトメアアイズ・護国院の
 三竦みの渦中と言う要所にありながら、
 三大勢力を敵に回しながらも
 互角以上に渡り合って独立を保ち続け、
 故に狼牙軍団もその独立を
 容認せざるを得なかった勢力である。
 (元々聖城学園とは姉妹校で仲が良かったせいもあるが)

 ポートペアでの殺人事件で活躍した刑事の如く、
 聞き込み等で必死になって
 エクレールの行方をマリーシアは探すが、
 一向に梨の粒でから前に進まない。

 そもそも何の当ても無くこの日本から
 一人の人間を探し出すと言うのは、
 砂漠に落ちた一粒の砂粒を
 見つける様な行為なのである。

 だが、マリーシアは必ず見つかる、
 見つけると確信していた。
 何故なら特体生というのは、
 『特体生同士は引かれ合う』
 というローカルルールが有り、
 付け加えて言うに、今現在のマリーシアは、
 自分の黒い翼の力をエクレールと共有しており、
 近くに行けば黒い翼が共鳴し合うからだ。

(ORISINAL SONG02.make me funkyA)
「ほう……この様なところに人とは珍しいな……。」

 不意にマリーシアの後ろから
 若い女性の声がした。
 そこには長い頭髪を団子に丸め、
 艶やかながらも実戦にも耐えうる
 チャイナドレスに身を包み、
 ネコ科の動物を彷彿とさせる眼光を持った
 只者ならぬ少女が立っていた。

「ふむ……その翼の力は……。」

 そして少女はマリーシアの背なの
 黒い翼を一瞥した後、
 まじまじと見つめ、一言呟く。

 その一言にマリーシアは
 無意識のうちに一瞬身を強張らせた。
 今までの体験では、その後に奇異や恐れ、
 偏見等を含んだ心無い言動に
 晒された事が度々有ったからであり、
 この少女もその様な輩と同類ではないか、
 と推測したからである。
 だが……

「奇遇じゃな。
 色こそは違えど妾{わらわ}と同系統の
 特体生能力者に出遇うたは初めてだ。」

 少女の口から発せられた言葉は
 意外なものであった。
 その言葉を裏づけるかの如く、
 その少女の背中からは、純白の大翼が二枚、
 持ち主の少女の気位の高さを体現するが如く
 きりっと翻っていた。

「貴女も……その力を……。」

 その少女の言葉に悪意の無い事や、
 自分と同系統の力を持っている事に
 安堵感と親近感を覚え、
 マリーシアの体からは緊張が消える。

「左様。妾は麗蘭、鈴麗蘭じゃ。
 遠慮する事は無いない。麗蘭と呼ぶが良い。」

 どうやら、その少女、
 麗蘭はマリーシアに好意を抱いた様だ。

「あの……私は……マリーシアです……。」

「ほう、マリーシアか。良き名じゃ。」

 麗蘭はそういうと、
 おもむろに道の果てに視線を移した。
 その移した視線の先には
 ささやかながら村落が存在しており、
 その中心には中華風の屋敷が立っている。

「あの村は……?」

「ああ、あの村か。
 あの村は我が鈴家の村、鈴家村だ。」

 マリーシアの問いに対し、
 麗蘭の即答が帰ってくる。
 元々この地は人っ子一人いない
 荒れ果てた荒野であったが、
 約半年前、破滅の刻印を持つ者同士である
 魔神勇二と鴉丸羅喉との一大決戦の後、
 この国に定住する事となった麗蘭が
 自分と部下の一族眷属の者を呼び集め、
 この荒地を切り開いたのが
 この鈴家村の始まりである。

「今日も更けて来た。
  どうせ、今宵の宿の当てもないのであろう。
 今宵は妾の屋敷に逗留していくが良い。」

「ほ…本当によろしいのでしょうか……
 『
グッググ〜ノグ〜』あ……。」

 遠慮しがちに本当に良いのか、
 とマリーシアは訪ねるが、
 身体はそれとは裏腹に
 実に正直に要求を主張し、
 腹の虫が頻りに空腹を訴え続ける。

 事実、マリーシアはここ三日間、
 殆ど喰わず寝ず遊ばずの状態で
 エクレールを探して三千里状態であり、
 その疲労と空腹はピークの状態に
 達していたのも本当だ。

「ふ…遠慮致すでない。
  妾はそなたが気に入ったのだ。
 何を探しておるかは与り知らぬが、
  左様に衰弱した体では、
 探すものも満足には探せない。」

「そ…そうでしょうか……。
 じゃあ……よろしくお願いします……。」

<鈴家村>
(27 All the time)
 場所は変わって鈴家村。
 元々は半年前から荒地を開拓して
 切り開いた村であるが故に、
 所々にに開発中の看板が立てられてはいるが、
 一応村としての機能を果たすには何の遜色も無い。

「おおお嬢、今日もいいお日和で。」

「そのお人は客人ですかいな?」

「うむ。今宵はこの者を我が家に泊める事にするぞ。」

 麗蘭が帰ってくるのを見て、
 気さくな村人達が気軽に挨拶をする。
 だがマリーシアの翼を見ても
 恐れたり奇異の眼で見たりせず、
 何ら変わらぬ態度で
 仕事に従事する等しながら接している。

 それもその筈で、
 村の盟主である麗蘭自体が
 『死の翼』という 異能の力を
 有しているのを知っており、
 そして村人達も個人差は有れど、
 一人一人が多かれ少なかれ
 異能力を有しており、
 今更黒い翼位で驚く者は
 誰もいないのである。

「こ、こちらこそ…よろしくお願いします。」


<鈴家邸>
 場所は変わって鈴家邸の中に移る。
 元々暗殺の世界での頂点に立ち、
 時には国家主席をも凌ぐ程の
 権力と影響力を持ち合わせていた家であり、
 その屋敷の外内装は質実剛健、
 あくまでも実用性と実践性を重視した作りになっており、
 派手さこそはないものの、
 所々に中華風のデザインが散りばめられた
 趣の有る内装に作られている。

「おお、お嬢。お帰りなさいませ。」

 そして、邸の奥から一人の老執事が麗蘭を迎える。
 一見穏やかそうな物腰と言葉遣いだが、
 体つきといい、体捌きといい、
 暗殺界の頂点の家系に仕えてきただけあって、
 この老執事を含めた家の使用人達は
 皆只者ではない事が伺える。

「して、その御婦人は?」

「うむ。この者はマリーシアという。
 さっき知り合ったばかりじゃ。
 妾はこの者が気に入った故、
 今宵はここに逗留させることにした。」

「よ…よろしくお願いします。」

  万事控えめな性格のマリーシアは、
  使用人にまで物腰低い態度で接している。

「ふむ……ところでマリーシアよ、
 そなたは少し埃に塗れておるな。」

「そうでしょうか……。」

 唐突の麗蘭の発言に、
 マリーシアは自分の姿を壁に
 備え付けられた鏡で確認する。
 そこには、麗蘭の発言を裏付けるかの如く、
 煤と埃に塗れた自分の姿を映し出していた。

「そのままで晩餐という訳にもいくまい。
 爺、早速湯浴みの用意を致せ。」

「はっ。」

「あ、あの…私…一着も
 着替えを持っていないんですけど……。」

 麗蘭の申し出に対し、
 マリーシアは自分は着替えを
 一着も持参していない事を申し入れる。

「心配致すでない、
 着替えなら妾のものを好きなだけ進ぜよう。
 どれでも好きなものを選ぶが良い。」

 その事に対して、
 麗蘭は自分の着替えを提供する、と言う。
 流石は鈴家の当主だけあって
 衣服の類は結構持っているらしい。


<鈴家浴場>
(ORISINAL SONG013.Comiket Comical?)

 ところは鈴家の浴場に移る。
 決して広い、
 と言える程の広さではないものの、
 10〜20人くらいならば
 ゆうに入れる程の広さを有しており、
 またツンガポーノレのアーライオンを模した
 獅子頭のオブジェが口の部分から
 湯船に湯を注いでいる。

「あの……何だか……素敵です。」

 と、マリーシアが率直に感想を述べる。
 事実、今までマリーシアの生活は
 あまり恵まれているとは言えず、
 この様な浴場を見る機会は無かったのである。

「左様か。気に入ったのならずっと入っていても良いのだぞ。」

「あ…ありがとうございます……。」

アイキャッチ
マリーシア「鳥(ちょう)サイコー……だと思います……。」


アイキャッチ
女ランス「鬼畜姫ランス(仮)マダー?」

<鈴家・食卓の間〜晩餐>

(ORISINAL SONG02.make me funkyA)

 ところは鈴家の晩餐の場たる食卓の間に移る。
 所々に龍のオブジェや絵画が飾られてあり、
 それらに赤の柱の純白の壁を
 基調とした部屋となっており、
 中にはふちを掴んで降ると
 テーブルの部分がくるくると回転する
 円状のテーブルが数個並べて有る。

 そしてその前には
 チャイナ服の上から桃色を基調にし、
 龍の刺繍が施された
 バスローブを纏っている麗蘭と、
 黒を基調にして朱雀に刺繍を施された
 チャイナ服を纏ったマリーシアがいる。

「ふむ。妾{わらわ}程ではないが、
 中々似合うておるではないか。
 正に春風駘蕩にして
 天衣無縫とはそなたの事じゃ。」

 マリーシアの艶やかな姿を見て、
 麗蘭は思わずそう評価をする。

「そ、それ程でも……ないです……。」

 その評価に対してマリーシアは
 あくまで控えめな態度を崩さないが、
 入浴して旅の汚れを落とし、
 艶やかなチャイナドレスに
 身を包んだマリーシアは、
 身体の凹凸こそ控えめなものの、
 その全身から自然とにじみ出る
 それはいかんとも隠しがたく、
 麗蘭の評価が単なる
 世辞ではない事を裏付けている。

「れ、麗蘭……あの……」

「何だ?いかな事でも気軽に申すが良い。」

「本当にこの服を貰ってもよろしいのでしょうか……?」

 麗蘭に自分の着ているチャイナ服を
 本当に自分に譲渡しての良いのか、
 とマリーシアが尋ねる。

 実は先刻の浴場での着替えの際、
 マリーシアが一年中殆どを
 聖歌隊の正装で過ごしている
 着たきり雀の状態である、
 と聞いた麗蘭がそれを不憫に思い、
 友情の証として数着
 自分の秘蔵のドレスを譲渡したのである。

「善哉善哉{よきかなよきかな}。
 その服は妾{わらわ}の秘蔵の品だが、
 そなたが着るのなれば、
  なんら惜しむ理由があろうものぞ。」

 その問いに対し、
 麗蘭は一向にドレスを惜しむ様子を見せず、
 逆に出荷した農産品を愛{いつく}しむ
 農夫の様な器量を見せる。

「お嬢。」

「おお、爺か。何用だ?」

「はい。只今晩餐の用意が整いましたゆえ……。」

「ふむ、左様か。ご苦労。」

 晩餐の支度が整った事を
 報告に来た老執事が下がると、
 厨房の奥から凄腕と思わしき料理人が数人、
 出来立ての料理を手に持ち、
 おもむろに次々と
 麗蘭達の前の食卓に並べていく。

 戦時中という事もあり、
 その料理は決して豪勢ではなかったが、
 料理人たちの創意工夫によって
 素材に魅力が十分に活かされた
 料理に仕上げられていく。

「ん?左様に固まっていかがした、マリーシアよ?
 何ぞや料理の内容に問題でも有るのか?」

 マリーシアを見ると、
 料理を目にしたまま
 カチカチに固まっていたので、
 麗蘭は唐突に声をかける。

「い、いえ……とんでもないです……ただ……。」

「ただ?」

「私……今までこんなご馳走を見た事がありませんので……。」

「ふむ、左様か。まあ、気にせずに食するがよい。」

 マリーシアは修道院での
 聖歌隊の毎日の食事を思い起こしていた。
 実際粗衣粗食を旨とし、
 美徳とする聖歌隊では、
 日々の生活で贅と呼べるものは皆無で、
 鈴家にとっては豪勢とは言えない食事も、
 マリーシアにとっては
 馳走の中の馳走に見えたのである。

「ところで、そなたには想い人はおるのか?」

「お……想い人……ですか?」

「左様じゃ。」

 麗蘭は思いに耽り、
 茶を飲みながら唐突にマリーシアに尋ねる。
 実は麗蘭はとある漢{おとこ}に対し、
 少なからず興味を出だしていた。

 その漢{おとこ}の名は魔神勇二、
 鳳凰学園格闘部の主将にして
 閃真流人応派の達人であり、
 そして破滅の刻印を持っていた男だ。

 その勇二も半年前に、
 タイガージョーや鴉丸羅喉と共に
 前の破滅をもたらす者を滅して以来、
 修行と称して現在まで
 行方不明になっており、
 麗蘭が鳳凰学園の
 総長代行を務めているのである。

「え……ええ。掛替えの無い無い大切な人が……私にはいます。」

「ほう、して、その者の名は何と申す?」

 マリーシアの掛替えの無い大切な想い人に対して
 麗蘭は湧き出てくる興味の色を隠せない。

 時には国家主席すら凌ぐ権限を持ち、
 中国のみならず東南アジア全体に
 影響力を持ってきた鈴家の当主であるものの、
 その前に一人の年頃の少女で有る麗蘭は
 その手の話にはやはり興味を持っているものと見える。

「彼女の名前は……エクレール、というんです……。」

「彼女?」

 マリーシアの『彼女』という言葉に、
 麗蘭の表情に少し驚きが見える。
 それもその筈、女性の大切なヒト、と言えば、
 まあ常識的にまず男性を思い浮かべるのは
 麗蘭ならずとも当然の事であり、
 驚きを隠せないのも無理は無い。

「彼女、という事は、その……
 なんだ、つまり女同士という事か?」

「え、ええ……やはり……可笑しいでしょうか?」

「否、可笑しゅうはないぞ。
 愛あるならば世の常識等
 取るに足りぬ塵事に過ぎぬ。」

 女性同士、という事で、
 やはり可笑しいのではないのか、
 と不安げそうに尋ねるマリーシアに、
 麗蘭は諭すかの如く回答を返す。
 流石に世界に名と影響を轟かす
 鈴家の当主だけあって、
 麗蘭の雅量は中々のものと見える。

「それでそのエクレールと申す者は、
 そなたの黒い翼の事を知っておるのか?」

「ええ……話せば長くなりますが……。」

 麗蘭の問いに対し、
 マリーシアはこれまでの
 経緯を事細やかに説明する。
 (※『聖夜の天使達』参照)
 麗蘭に説明するその顔は、
 どこか少し嬉しそうな色が見える。

「左様か……そなたとそのエクレールとは
 その黒い翼の力を共有しておると申すか。
 そなたは果報者よな。
 愛する者と自分の力を共有する事が出来るとは、
 まこと、天佑というより他に無いぞ。」

「ええ。私も本当にそうだと思います。」

 麗蘭は自分の羨望の意思を
 包み隠さずマリーシアに告げる。
 実際、麗蘭もこの話を聞いて、
 自分の想い人になる者と
 この死の翼の力を
 共有出来ればどんなによいか、
 と思ったのは確かだ。

「ところでどうだ、
 そのエクレールとか申す者が見つかるまで、
 当屋敷に逗留していかぬか?」

「ここに……ですか?」

「うむ左様じゃ。
 そなた一人が当ても無く闇雲に捜した所で
 五里霧中では詮が無かろうて。」

 と、麗蘭が適切な助言をする。
 確かに麗蘭の助言どおり、
 何の情報も無くマリーシアが只一人、
 日本中一人の個人をくまなく探す、
 となるととても1〜2年で利くものではない。


「我が鈴家には一応衣食住一式揃うておるし、
 何より、鈴家の情報網は世界でも五指に入るからな。」

「何から何まで、本当に有り難うございます……。」

「よいよい、気にする事は無いぞ。
 妾とそなたの中ではないか。」

 恐縮するマリーシアに気遣う事は無い、
 と麗蘭は諭す……
 ていうかいつの間に
 『妾とそなたの仲』に
 なったのかは不明だが。

 そうこう談笑に弾みが
 ついているうちに食事も終わり、
 夜が大分更けてきた事を
 告げる虫の音が響音を奏で始める。

「いやはや、今宵は愉快な一日だ。
 そうじゃ、今宵そなたに出逢うたも何ぞやの縁。
 マリーシアよ、今より妾{わらわ}はそなたを
 朋友{ポンヨウ}とする事にするぞ。よいな?」

  突然、麗蘭がマリーシアを朋友にする事を申し出る。
  少々強引で突然な申し出の為に、
  マリーシアはしばし呆気に取られるが、
  断る理由が有る訳でも無く、

「え、ええ…麗蘭さえよろしければ……」

 と快諾する。


「お嬢……。」

「何用だ、爺。」

「はい。神威の使者と申す者が当屋敷に参っておりまするが。」

「神威の!?」

 老執事の報告を聞いて、
 麗蘭は一瞬怪訝な顔をする。

 それもその筈、神威といえば、
 全人類の抹殺を企てる
 魔族を率いる魔界の長であり、
 無論人類の一員である麗蘭とっては
 不倶戴天の仇敵であり、
 その神威の使者が自分の下に訪れた事に対し、
 怪訝な顔をするのは否めない。

「左様。ならば爺よ、
 その使者とやらを応接間に案内致せ。
 ああ、すまぬなマリーシア。
 急用が出来た故、しばしの間席を外すぞ。」

<応接間>
(ORISINAL SONG17.Necrofamicom{ネクロファミコン})

 場所は鈴家の応接間に移る。
 一往来客を持て成す応接間だけあって
 デザインは凝ってあるものの、
 暗殺の大家鈴家の応接間だけあって、
 基本的には機能美を
 優先したつくりになっている。

 其の応接間にいる客人である
 ロックの容姿は背丈矮小の小男で、
 背中は性格を現すかの如く
 セムシの様に曲がっており、
 人相は…いや死相は鱈子唇に
 どぶ川が腐った様な瞳の眼差しと、
 『 外見で他人を判断するな』という
 建前の標語が空しく吹き飛ぶ、
 さに外見で人格の卑しさが伺える小人である。

「貴様が神威の使者とやらか?
 苦しゅうない。早々に用件を申せ。」

「でしゅしゅしゅしゅ…
 ぽっくんは神威魔導衆のロックと言いましゅ。」

 その名乗り・態度・表情・口調に
 麗蘭の表情には明らかに不快感さが見て取れ、
 一刻も早く会談を終わらせたいという気持ちが
 素人目でも察する事が出来る。

 麗蘭にとって……
 いや、麗蘭以外でも有るが、
 その口調、その口臭、その卑屈な態度、
 その邪な光に満ちた眼差しは
 不快感を催す以外の
 何物でもなかったからである。

「でしゅしゅしゅ。今現在、神威と神威軍団、
 そして魔界孔の勢いは全世界を覆い、
 神威率いる魔族が世界を制覇するのも
  時間の問題でしゅ。
 そして今現ざ……」

用件だけを申せ。

 現在の状況を事細やかに
 説明しようとするロックに対し、
 余計な事を言わずに用件を言え、
 と麗蘭は冷ややかな視線と口調で厳命する。

 麗蘭にとってはこの様な
 品性卑しいの話を聞いている時間は
 苦痛以外の何物でもないからであり、
 特にロックの『でしゅでしゅ』という語尾は
 麗蘭を一層苛立たせる大因にもなっている。

「……我々神威軍団の軍門に降り、
 軍団の幹部となるでしゅ。
 そうしゅれば、事が成就した暁にはぽっくんみたいに
 褒美として神威から不老不死が与えられるでしゅよ。
 どうでしゅ、悪い話ではないでしゅ?」

「フン…要するに……不老不死とやらの好餌で
 妾{わらわ}に神威に媚び諂え、という訳か。
 何を申すかと思えば下らぬ戯言を申しおって。
 全く以って笑止千万とはこの事。
 左様な口蜜腹剣の甘言に
  惑わさるる妾{わらわ}と思うてか?」

「しかしでしゅね……不老不死でしゅよ。
 もう一度御賢察されてはいかがでしゅか?」

 ロックの提案を一笑に付す麗蘭に対し、
 ロックは飽くまで麗蘭のスカウトに勤めるが……

くどい!!
 本来なら貴様如き阿諛追従の徒輩{ともがら}、
 瞬時にて屠り去ってくれるところだが、
 今宵は朋友にめぐり合えた慶日、
 下種の汚血にて汚しとうは無い!
 『鈴麗蘭は貴様の様な佞邪の輩には付かぬ』
 帰ってそう神威に伝えおけい!!」

 と麗蘭は怒りを顕にし、
 ロックの粘着勧誘を一喝する。
 その一喝と怒りの形相に
 身の危険を感じたロックは、
 勧誘は失敗したと悟り、
 一目散に尻尾を巻いて退散する

「爺よ。夜も更けてきた事じゃ。
 妾{わらわ}とマリーシアの寝床を用意せよ。」

「はっ、畏まりましてございます。」

<翌日の鈴家邸>
(27 All the time)
 一夜明けての鈴家邸、この日、
 鈴家邸はいつになくあわただしさに満ちていた。
 今日は旧学連総長にして現全学連の
 地のノモス統括者である姫乃宮華苑と今後について
 打ち合わせる予定が有ったからである。

 本来なら鳳凰学園の総長である魔神勇二が
 応対に当たるところであるが、
 生憎、現在その勇二はどこかに外遊しており、
 臨時の総長代理として
 麗蘭が応対にあたる事になっている。


「久しぶりじゃな、華苑。」

「ええ、そうですわね、麗蘭。」

 応接間の麗蘭と華苑は、
 以外にも親しげに語りかけている。
 実はこの二人が
 知り合ったのは意外に古く、
 鈴家と姫乃宮家は
 先代からの付き合いをしており、
 麗蘭と華苑も十二年前の
 姫乃宮家の主催する
 宴会場で知り合ったのである。

「あれから十二年……長い様で短いものですわね……。」

「左様だな。だが、今日は昔話に花を咲かせに来たのではなかろう。」

「そうですわね。麗蘭、まずはこれをご覧遊ばせ。」

  そう言うと、華苑は一枚のメモを麗蘭に手渡した。

(ORISINAL SONG17.Necrofamicom{ネクロファミコン})
  そのメモには下記の内容が事細やかに記されていた。
・○国と□国に魔界孔が現れ、
 そこから出現した魔族に国を滅ぼされる事件
・他の色々な事件
・世界中の魔界孔の数
・現在の人類の勢力図
・他色々なデータ


「これは?」
  麗蘭が示したメモの部分には、
  『新ホーリーフレイム オルレアン』
  という新組織が設立され、
  その総長にはジャンヌが就任し、
  近々全学連総長斬真狼牙に逢う、
  という予定になっていた。

「読んで文字通りの事ですわ。ただ……」

「ただ?」

「このジャンヌという者は
 旧ホーリーフレイムの総長であったのですけど、
 現在は行方不明になっている筈ですわ。
 それに旧ホーリーフレイムをほったらかして
 新組織を立ち上げる、
 という行動にも解せませんし。」

 華苑がふと思った疑問を呈する。
 そもそもジャンヌは
 日本人そのものを敵視しており、
 例えもし魔族討伐の為に
 その敵視を一時捨てたと仮定しても
 旧ホーリーフレイムをほったらかしにして
 新組織を立ち上げるとは
 到底思えないのである。

「ふむ、ではその旧ホーリーフレイムの総長の席はいかがしておる?」

「旧ホーリーフレイム大隊長のバイラルという者が
 臨時の総長を勤めておりますわ。」

 メモによると、ジャンヌが行方不明になり、
 更に魔界孔の増大によって
 魔族による人類抹殺が現実味を帯びてきたという事で、
 旧ホーリーフレイムの中でも現実主義者である
 アイレーンの提案を受け、
 旧ホーリーフレイムは一時狼牙軍団と休戦し、
 魔族という共通の敵に
 立ち向かうことを条件に路線を変更し、
 臨時の総長にバイラルが就任した、
 いう事になっていた。

「成程。フム…これは妾{わらわ}の推測だが、
 おそらくそのジャンヌと申す者は
 NAGASAKIの外国人社会にて
 重きをなしていた者であろう。
 その重鎮がおらぬと判ったら、
 統率は乱れるは必定。
 その隙を敵対勢力、
 特に魔族が黙ってはおるまいに。
 何者かは知らぬが、
 その何者かがそういう事態を恐れ、
 ジャンヌは健在である、
 という事を内外に知らしむる為に
 敢えてジャンヌの名前を
 名乗っている可能性は高いであろう。」

「そうですわね……
 そういう可能性も捨て切れませんわ。
 次の問題ですが、
 現在、世界では魔界孔が
 急速に数を増やしており、
 滅亡の憂き目に会った国々も
 少なくありませんわ。」

 確かに華苑の言う通り、
 メモに同封されている世界地図の勢力図には
 徐々に魔族の勢力が
 拡大している事を如実に物語っており、
 ロシア、中国の様な大国も既に滅亡していた。

「このままでは取り返しの付かない事になりかねませんわ。」

「落ち着かぬか。急いては事を仕損じる事になるぞ。」

 麗蘭の判断に現状を認識している華苑は、
 強い口調で反論しようとするが……

「例うるならば重病人を治癒するには
 まず粥を摂取させた後に穏やかな薬を飲ませ、
 身体の回復を待って肉食を以って生氣を付け、
 強い薬を投与するならば必ずや治癒しよう。
 なれど、身体を考えず、
 いきなり強食猛薬を与うるなれば、
 却って病状の悪化を招く。
 今の人類の状況は、
 例えるならば重病人そのものであり、
 これで魔軍にぶつかるは
 おのずから死を選ぶようなものであり、
 これを避けるは兵家の常。
 いずれは旭が昇るが如く
 反撃の狼煙を上げる日も来ようぞ。」

 と、その焦りを嗜める。

「え…ええ、確かにそうですわね。
 報告によりますと、
 魔軍は京の魔界穴に次々と終結しているとか。
 最近ではナイトメアアイズの残党が次々と
 神威軍団に参入しているとか……。」

  そう言うと、華苑は一冊のレポートを麗蘭に差し出す。
  そこには、ナイトメアアイズの壊滅までの活動と、
  壊滅後の残党の内容と構成員の活動の内容を初めとした
  詳細な情報がびっしりとカキコまれてあった。

「元は人間とはいえ、あやつらも魔族の端くれ、
 注意を怠れば足元を掬われる事になりかねぬ……。」

 ……そして、数時間の間現状とこれからの予定を話し合った後、

「ところでそのジャンヌとやらの名を語る
 何者かへの対応はもう決定まっておるのか?」

 と、オルレアンへの対応の姿勢を問う。
 実際、このオルレアンという組織は、
 結成されて日が浅い最新興の組織という事もあり、
 全学連への加盟は無論、
 組織の内容すら明らかになっていない組織であり、
 全学連でも即刻組織への対応を
 迫られていたところである。

「それについては心配は無用ですわ。
 既に二階堂という者に折衝の席への来訪を
 要請しに遣わせておきました。
 今頃は向こうに着いている筈ですわ。」

「左様か。いつもの事ながら、そなたは抜かりがないな。」

「フ……当然ですわ。」

予告
嶌美亜子「九州同盟の全学連加盟の日は近づく。
       その打ち合わせの為にエクレール達は
       ままにょにょ号に乗り合わせるが、
       そこには恐るべき罠が待ち構えていた。」
京堂扇奈「次回大番長AA
      『序章最終話 第二章「ジャンヌ卿は生きていたか」』」
狼牙軍団全員「立てよ人類!!

今週の特体生
鈴麗蘭(ONLY YOU〜リクルス)
体力 経験 距離 信頼 気力 攻撃 命中 回避 治安 収益 給料
65 13 普通 72 127 20 70 40 60
スキル 属性 対属性
白羽殲風陣 白魔 黒魔・魔族
白羽殲風陣(気力3)〜相手全員に自分の受けたダメージの半分の
               ダメージを与える

後書き
今回の話は
マリーシアと麗蘭を中心に書いて見ました。
元々入れる予定の無い話でしたが、
現在唯二のアリスソフト家庭用移植ゲー、
リベルクルスのゆかりんボイスを聞いているうちに
ふと思いつきました。

ちょっと早いですが平成25年のエイプリルフールネタは
大海賊もしくは大航海にしたいですね。
主役はスカルサーペントの空也(声 中井和哉)で、
他にも考古学者のスタンジュール・シャイラ(声 山口由里子)とか
スカルサーペントの女好き料理長の狼牙(平田明宏)とか
三人の海軍大将の一角 東亜大全(声 子安武人)とか…

空也
「俺はゾロ枠かよ。」

狼牙
「俺はサンジ枠かよ。」

大全
「青キジ……」


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また私の妄想に満ちたサイトは
http://shin-yaminokai.jp/
となっております。
よろしかったら是非遊びに来て下さいませ。


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