真・闇の会夢幻格闘化計画{Dream Duel Project}大番長After.Age表紙
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序章その四 「四天王」

序章その四・新規登場人物
イデア
オリジナルキャラ。神威四天王の一人であり、
エクレールそっくりの、全てが謎に包まれた少女。
服装は鬼畜王ランスのサテラのような宇宙服。

死神博士
Dr STOP!から出場。自称天才で、神威軍団の魔導衆。
本名を始め、何から何まで全く不明の
マッドサイエンティスト。

破国院邪炎

本名・カーツウェルノルアーディ。闘神都市Uから出場。
邪焔{イビル・フレイム}の異名を取る。


ラ・ピュセル
大番長本編で既に出てきたキャラクターの変装(?)した姿。
長髪のブロンド、ジャンヌのオーダーメイド(?)の鎧、
腰の神剣ヴァルシオン、どれを取ってもジャンヌそのものの外見であるが、
とある赤い彗星が被っていた様なアイマスクをつけているところが違う。


セイル
DALKから名前だけ出演。既に故人で、エクレールの父親。
元々は恋愛男神・マーティスに仕えていた修道士である。

ジャネット
大番長本編で既に出てきたとあるキャラクターの本名。
既に故人で、エクレールの母親。
5秒CM
ムラタ
「今日の大番長AAは俺がメインだ!!!!」
久我匡一郎
「嘘を言うな。」
<−神威軍団本拠−死神博士のラボ>
(ORISINAL SONG16.Shinigami Hakase)
 ところは神威軍団の本拠地に存在する
 死神博士のラボから始まる。
 ラボの雰囲気は……すごくネクラです。

 何かの溶液に浸けられている
 人間・エルフ・魔族の死体や
 ホルマリン漬けの動植物や妖精等、
 凡{おおよ}そ『非人道的』『外道〜っ』
 というカテゴリーで締めくくる事すら生温い代物が
 乱雑に陳列された薄暗い事極まりない部屋だ。

 常人ならば例えそういった類の
 趣味を持っていたとしても、
 一分と持たずに嘔吐感を催してしまう様な部屋でもある。
 だがその部屋の主・死神博士は常日頃から
 平然とそれらを木の人形、
 即ち木人形{デク}と称していた。

 その死神博士の傍に、
 頭まですっぽりと白い覆面を被った
 気味の悪い科学者達が恐ろしげに見守っている。

 その表情は全員一応に暗く、
 非人道的な実験等を
 数多くこなしてきたであろうという事は
 誰でも易に察する事が出来る。
 ここで死神博士は部下の報告を聞いていた。

「死神博士……斬真狼牙が熊元に現れました。
  付け加えますに、ユーラシア大陸で
  ○個目の魔界孔が開いたとの情報が……。」

「そうか……。捨て置け。」

 部下の報告に死神博士は
 何の興味も持たずに淡々と報告を受ける。

 実際、この男は神威軍団に籍こそ置いているものの、
 神威軍団のする事には何ら興味を示す事は無い。
 要するに目的が同じだという理由から
 協力しているに過ぎないのである。

「御意……。」

 流石に、その様に部下も不快な表情を禁じえないが、
 すぐ様元のポーカーフェイスに戻る。

「暗黒のアダムと暗黒のパンドラの件、いかが致しましょう?」

「全力を持って捜せ。我が悲願にはそれらが必要だからな。」

 そう言うと手中のワイン入りグラスを
 死神博士は粉々に握りつぶす。
 そして・・・・・・その口は無意識のうちにニヤリ、と笑っていた。

 その暗黒のアダムと暗黒のパンドラというのが……
 ゴホゴホ…激しくネタバレになるので、
 今はまだ語れないので後のお楽しみに……。

「御意……。」

「それはそうと、博士の言っておられた、
  あのバイラルめが生きているとの情報が入っておりますが……。」

「何……?バイラルめが生きていたというのか……。」

「左様で……。」

 バイラルの名前を聞くや否や、
 死神博士の眼に憎悪の炎が灯る。
 その憎悪の炎は尋常ではなく、
 過去に二人の間に何かが有った事が伺える。

 その憎悪を察したのか、
 無意識のうちに部下の表情が強張る。

「そうか……あの憎き腐れ凡人めが生きていたか……。」

 と、表面上は勤めて冷静を装うが、
 死神博士の表情から憎悪の感情が消え去る事は無く、
 無意識のうちに手に持ったワイルドターキー入り
 (喧嘩ヤクザ御用達)のワインボトルを粉々に握り潰す。

「ならばあの腐れ凡人の動向を一部始終報告せよ。」

「しかし、あの様な小者一人に時間を費やしては
 神威様がお怒りに……」

 ここで部下の反論しかけるが、

「それが如何した?私は神威の協力者であって、
 奴の部下では無いのだ。私の知った事ではない。」 

 死神博士は素っ気無く身も蓋も無い返事を返す。

「し…しか…」

 身も蓋も無い返事に、
 更に反論しかける部下に死神博士は……

「黙れ。天才のこの私に意見しようというのか?身を弁えろ。」

 冷たく傲岸に言い放つ。
 如何やらこの狂人にとっては
 自分に直接関係無い事は
 一切関知しない主義らしい。

「は……(くそ…調子に乗るなよ、人間野郎が……)」


<−過去〜護国院領の山中−>
 (ORIGINAL SONG19.Evil Frame)
 学聖暦1x年、カーツウェル、即ち、
 当時ホーリーフレイムに所属していた破国院邪炎は
 一隊を率いて対護国院の工作の為に
 旧護国院領(現狼牙軍団領)に潜入していた。

 工作には成功したのはいいものの、
 工作成功の合図である花火が打ち上げられたにも関わらず、
 迎えに来る筈のジョドー率いる送迎部隊の援軍が来ずに
 護国院所属・葵我門率いる部隊の
 『何と!人間砲弾』の反撃にあってしまい、
 副隊長として従軍していた妻を含めた一隊全員が死亡。

 カーツウェルも重傷を負い、飛影山の山中に逃げ込んでいた。

 
『何と!人間砲弾』とは?
 大砲で人間を飛ばす事により、上空からの攻めを可能にした奥義。
 気球に乗って上空から正確な方角・距離を導きだし、
 確実、そして正確に相手に向かって落下する。
 創設者は瓦礫{がれっきい}家という家の頭首の男らしい。

 あわやそのまま人間砲弾でカーツウェルも戦死、という時に、
 何故か人間砲弾の攻撃が停止し、その隙に山中に逃げ込む。

  何故『何と!人間砲弾』の攻撃が止まったのかと云うと、
  我門曰く「我が葵家では食事の時間は守るのが定め。」とか
  言う理由らしい。

「おのれ……護国院の奴等…この傷が治ったら必ず……」

 カーツウェルは捲土重来復讐を誓うが、
 満身創痍の状態では
 それは到底適わぬ事であり、
 そもそもここから生きて帰れる確率は
 限りなく低いのである。

(ORISINAL SONG27.Crawling Chaos〜Kamui@)
「必ず?如何するというのだ?」

「?…何者…だ!?」

 カーツウェルが『それ』の言葉と気配を察知し、
 前を向くと、そこにはまぎれもない神威本人が立っていた。

「……さては護国院の回し者か!!?」

「に見えるか?」

 神威の事を知らないカーツウェルは
 神威を護国院の者と勘違いし、
 敵意を向けようとする。

 その疑いに対して神威は
 護国院の手のものではないと主張する。

 もっともその主張を
 素直に受け止めるカーツウェルではないが、
 疑いを向けたところで
 目の前の神威と名乗る男に勝てる術など
 今の自分に有る筈が無く、
 止む無くその主張を受けざるを得なかった。

「では何者だ……?」

「私の名は神威、と言っておこう。」

 神威と名乗った男は慇懃に礼をすると、
 手を組んで早速用件を伝え始める。

「実は、君に伝えておかなければならない事が有ってな。」

「伝えたい事…だと?」

 伝えたい事、と言われ、カーツウェルは何事かと顔をこわばらせる。

「実は君の の     がホーリーフレイムに処刑された、
 という事を伝えに来たのだよ。」

「処刑?……それは如何いう事だ!!!?」

 一瞬豆が鳩鉄砲を食らったかの様な顔をしていた
 カーツウェルだったが、すぐに神威の発言の意味を察し、
 真意を糾す。

 その問いに対し、神威は残念そうに額に手を当てながら……

「ああ。何でも穢れた力に染まった、という理由だそうだ。」

 と答える。

「そ……そんな…嘘だ!嘘を言うな!!!!
 ジャンヌ様がそんな事をなさる筈が無い!」

 しかし、カーツウェルは直ちにそれを否定する。

 それも当然である。
 ホーリーフレイムは教義に対する忠誠よりも、
 寧ろ総長であるジャンヌ個人に対する忠誠によって
 保たれている組織であり、
 カーツウェルもそのうちの一人であるので、
 ジャンヌに対する疑いは禁忌に属するものと言える。

 その否定に対して神威は動かぬ証拠として
 懐から血糊のついたカチューシャを取り出し、
 カーツウェルに見せる。

「これを見るがいい。
 奴等は穢れた力に染まったといって処刑したのは間違いない。」

「まさか……ジャンヌ様が……」

 カーツウェルは信じていた者に裏切られた、といった感じだ。

 カーツウェル達にとってはジャンヌという存在は
 教義以上の絶対的存在である。
 その絶対的存在がその様な事をしていた事に対し、
 カーツウェルは衝撃を隠せないでいる。

「ああ、そうだ。ついでに言うと……
 ジャンヌは君ら潜入部隊も見殺しにする、と言っていたな。
 ……反逆者の一族は生かしておけぬ、とね。」

「嘘だ!ジャンヌ様がそんな事をなさる訳が……」

 尚もそのジャンヌをカーツウェルは擁護しようとする。
 だがその声に前までの絶対的な信用を
 置いていた時の力強さは無かった。

「嘘なものか。
 実際、君の合図の花火に対して
 何の音沙汰も無かったではないか。」

 更に自分達をも見捨てたという事実に対し、
 ジャンヌに対する信頼は砂上の城の如く崩れ去っていく。

 信じれば信じる程、裏切られた時の衝撃は大きい、
 とはよく言ったもので、
 カーツウェルジャンヌとホーリーフレイムに対する忠誠は
 一瞬にして深い憎悪に変貌する。

「残念だが、君らは裏切られた、という事になるな。
 そこで如何だ、復讐に手と力を貸す代わりに、
 私の友達にならないか?
 カーツウェル君 恐れることはないんだよ。
 友達になろう。」

 と神威はカーツウェルに自分のところに来る様に
 寅場鮎{とらばあゆ}を持ちかける。

「ああ……なるさ…その代わり……
 力を……力をくれ……!!復讐を遂げられる力を!!!!」

 普段のならこの様な怪しい申し出は
 即刻断っていたであろうが、
 何もかも失ったカーツウェルにとって、
 その申し出は地獄から差し出された
 一睡の蜘蛛の糸にも等しかった。

「おのれ……おのれジャンヌ!おのれホーリーフレイム!
 護国院と共に
地獄に堕ちるといい!
 いや……堕ちてしまえ!!!!」

『堕ちたな……所詮は人の親…か。』

 その様を見て、神威はドヤ顔でほくそ笑む。

「滅すべしホーリーフレイム、殺{さっ}すべし、護国院……
 我が名は炎滅殺国の破国院邪炎也!!」

<神威軍団の邪炎の個室>
(ORIGINAL SONG19.Evil Frame)
うおっ!!!

「ゆ……夢か……」

 ところは神威軍団の破国院邪炎の個室に移る。
 如何やらその主である破国院邪炎は
 仮眠を取っていたらしい。
 過去の忌まわしい過去の夢を見、
 全身に冷や汗が噴き出しており、嘔吐感さえ感じている。

「だ、誰だ!?」

 突如、後ろから鋭い気を感じ、
 破国院は後ろを向く。
 その気の持ち主はクランク・ロック。
 神威軍団の魔導衆・
 死人使いのロックによって蘇らされた、
 元は闘神と呼ばれた男である。

「如何した?魘{うな}されていた様だが、何か悪い夢でも見たのか?」

「クランクか……いや、昔の…夢をな……。」

 クランクの問いに対し、破国院は自虐的な笑みで返す。

「そうか。明日は早いぞ。」

「ああ……」


<−何処かの海岸−>
(23 silence..)
 魔界孔での神威との決戦の敗北から
 数日後の夜の事だった。
 その夜、全学連副総長・斬真豪は外に出歩いていた。
 海面が鏡の如くに空を映し、彼の姿を映し出す。
 夜風が吹き荒れ、整った髪をなびかせる。

 不意に後ろから鋭い気配がするのを豪は感じた。
 その気配の持ち主……
 細身ながら、精悍な体付きと眼光を持つ青年、
 久我匡一郎がそこにいた。

「……豪さん。」

「何だ、匡君か……。」

「ところで、俺に何の用だ?」

「ムラタという男を……ご存知ですか?」

「もしかして……元PPGのムラタか?」

 ムラタという名前を聞いて、
 かつてのPPGの副総長の名を
 豪はふと頭に浮かべる。
 もっとも、余りいい記憶は浮かばない様だが。
 正直しょーもない小悪党だ。

「というより、今更何故ムラタの事を?」

 豪の顔は今更何故ムラタの事を、
 と訝{いぶか}しがってもいる顔である。

「暁からそのムラタが神威四天王に就任したとの情報が……」

「暁?ああ……世界を股にかける諜報組織の事だな。」

 暁という組織はかなり有名な組織らしく、
 その手の情報に疎い狼牙でさえ
 その存在を知っていると云う。

 二年前にその組織によって、
 裏世界では非人道的なツアーで
 有名な「人間狩り」の主催者が
 成敗された事は豪ならずとも周知の事実だ。
 蛇足にはなるが、
 あのスパーンも人間狩りに
 参加する予定だったらしいが、
 当日に風邪で寝込んでしまった為に
 参加出来なかったらしい。

「ええ。暁のエージェント、
 矢矧大和という男から仕入れた情報です。」

「大した情報網だ。で、今回の用件は?」

「人を一人始末したい。手伝ってくれますか?」

(SEドォォン)
 その瞬間、雷が落ち、
 轟音を響かせて辺りを震撼させる。
 雷の直撃を受けた大木は無惨に燃え、
 辺りを朱に染める。

「ほう……それは物騒じゃあないか。
 それで、どこのどいつを殺るんだ?」

「そのムラタです。」

 そう言うと、古ぼけた新聞を豪に放り投げる。

「こ、これは……!!」

(35 Kamui @)
  新聞の見出しには『都市壊滅!』の文字が大きく載っている。

「それは奴の仕業です。零式の情報によれば、
 あの男は今、バイオウェポンを開発中だとか……。」

「バイオウェポン……!!?」

 バイオウェポンと言う聞き慣れない言葉を耳にして、
 豪は一瞬怪訝な顔をする。

 個人としては世界屈指の情報網を有する豪を以ってしても、
 このバイオウェポンなる情報は何も知らないらしい。

「この事件も大方ペットとして持ち込んだ愛玩動物に
 爆薬の類を背負わせて突っ込ませたんでしょう。」

「………!!」

「俺も悪人とは言え多くの命を奪ってきたから
 大きな口は叩けないが、
 奴は人の命を弄ぶ……。
 しかも、何も知らない動物を使う事で……、
 無差別テロをやろうとしている……!!
 奴だけは許してはおけない……
 俺の手で始末するつもりです……!!」

 そう呟く匡一郎の眼は、
 冷徹な態度ながら、
 普段の穏健な彼とは思えない様な
 並々ならぬ殺気に満ちていた。

「そうか……まあ……いいだろう。」

「一応……その極秘プロジェクトは掴んであります。」

「極秘プロジェクト?」

「ええ。組織内では 『プロジェクト ラルフ』
 『プロジェクト ジェスト』と呼ばれているらしいですが……。」

「ラルフ?ジェスト?」

「豪さん、まずはこれを見て下さい。」

  懐からプロジェクトの内容が書かれた資料を差し出す。
  その資料はかなり古びており、プロジェクトがごく最近
  立ち上げられたのではない、という事を示唆していた。

『プロジェクト「ラルフ」』
*通常の伝染ウイルスの数十倍の感染力を持ち、
  宿主細胞をあっという間に喰い潰し、
  ありとあらゆる抗ウイルス剤を無効化、
  熱湯による消毒さえ効かない
  遺伝子操作による新病原性ウイルス.ラルフ。
  これらをあらゆる手段で世界中にばら撒く。


『プロジェクト「ジェスト」』
*生物兵器とは生物を訓練あるいは脳そのものを
  操作する事によって動きを制御し、
  その生態に爆薬等を括り付け、
  攻撃を加える事を目的とした生きた兵器。
  そこで使用されるバイオロイドは
  生態と同じ蛋白質で出来ている為、
  あらゆる生態の脳の
  錐体路系統運動野に直接埋め込む事が可能であり、
  集積度は従来のコンピューターの数億倍にもなり、
  更に学習によって増殖も可能。
  全ての動物を兵器化出来、思い通りに攻撃や防衛が可能となる。
  海では魚族や水族や海竜族が生きた潜水艦や魚雷となり、
  空では鳥獣族や昆虫族が戦闘機になる。
  ドラゴン族や幻竜族に小型の核爆弾を積めば
  正に大陸間弾道弾になる。
  陸においては獣族が超小型の高性能戦車であり、
  低コストで最大の軍事的効果を生む。

「むゥ……考えようによってはかなり厄介な相手になるな…。」

 予想以上の内容に、深刻な面持ちで豪は低く唸る。

「これからは神威軍団の動向を探りますので、
 組織の運営の方はよろしくお願いします。」

「当ては有るのか?」

「某国で落ち合った元死神博士所属の科学者から、
 色々と聞き出してあります。」

「それと既にプロジェクトに携わる人物を
 リストアップしていますので。」

 そう言って、匡一郎はメモを手渡す。
 そのメモには、どれも見知った名前ばかり連なっていた。
 要するに、有名どころの名前ばかり書かれてあったのである。

「そうか。……ああ、それとだな、例の件だが……。」

「神威軍団の四天王・特S級特殊工作員『イデア』……の例ですか?」

「そうだ。今までその詳細は掴めていなかったが、
 先月、半蔵が姿を捉える事に成功した。」

 豪が懐から一枚の写真を取り出すと、
 そこには死体の山で埋め尽くされた戦場が写っており、
 中央に神威軍団の特殊部隊の服装を纏った、
 エクレールに酷似した少女がいる。

「こ……これは……!?」

 写真に映った少女があまりにも
 エクレールに酷似しているのを見て、
 匡一郎は一瞬おどれの目を疑った。

「……見ての通りだ。」

「何かの間違いでは……。」

  別の可能性を模索する匡一郎に、
  冷静に豪が言う。

「我々もそう思いたい。
 だが…・・・この少女が
 エクレールでは無いとは言い切れない。
 偶然の産物によるそっくりさんか、クローンか、
 姉妹などの血縁者か、アミバ偽者か、それとも……
 最悪の場合……エクレール本人か……」

  そして豪が考え付く限りの可能性を口にする。

「イデアの足取りはこれっきり掴めていない。
 イデア……おそらくは偽名か何かだろうが、
 ここ数日の間に来日したという情報がある。」

「そうですか……。」

「しかし……工作員を特殊傭兵かテロリストとしてしか
 扱わない様な奴らが四天王とはいえ、
 何故ただの工作員に特Sの扱いをするのか……」

  顎に手を当て、匡一郎は深く沈思黙考する。

「まだまだ分からん事は山程有る……。
 何か分かったなら俺に連絡をくれ。幸運を祈る。」

「判りました。」

アイキャッチ
三条火呵留{ヒカル}
 「私は三条イルカではない!三条火呵留だ!!」


アイキャッチ
久我匡一郎
 「俺とムラタの関係は……
 いや…ネタバレになるので止めておこう……。」

<−神威軍団〜ムラタの個室−>
(ORISINAL SONG20.Revenger)

 ところはその神威軍団のムラタ専用の個室に移る。
 ところどころに軍関係の書物や書類が散乱しているところから、
 ムラタの専門分野が一目で読み取れる。
 あ、Amuzonから届いたエロゲがある。

 ムラタはこの散らかった部屋で
 疲れた体を癒しながらひと時の思いに耽っていた。

「アホオヤジがくたばって数年か……
 長ぇ様で……短いものだ……。」

<−過去〜ムラタ病院の庭にて−>
(ORISINAL SONG27.Dash! To Future〜unpluged〜)


 過去の回想ではここはムラタ病院の庭……
 いや、正確にはムラタ病院の庭だったところに移る。
 ムラタの父は善良を絵に描いた様な名医であり、
 若くして博士号を初めとする各資格を取った程の名医である。

 そして、その人の良すぎる性格ゆえ、
 来る者は拒まず、貧しき者からは受け取らず、
 という方針から診療所は繁盛していたにも関わらず、
 いつも一家は質素な暮らしをしていた。

 だが、そんな人の良い父は、
 友人に無認可の薬を
 使用していた事を官憲に密告され、
 投獄された挙句に毒殺される事となる。

 その数日後、
 ムラタと久我匡一郎はムラタの父の葬儀に出た後、
 診療所址に足を運ぶ事となる。

「匡一郎……何故オヤジはくたばったと思う?」

「何を言っている、【ネタバレ禁止】……?」

 不意に父が殺された理由をムラタが聞く。
 その真意を汲み取る事が出来ない匡一郎は
 ムラタにその意を宿した視線を向ける。

「オヤジは弱かった。
 だから力に殺された…。
 要するに力に負けた負け組だ。
 お人好しで、マヌケで、
 如何し様も無いクソアホだ。」

 ムラタの口からは、
 父親の死に対する哀悼は全く感じられず、
 逆にその人の良さに
 呆れ返る様な台詞が飛び出る。
 余りにも明け透けな台詞に、
 さすたに匡一郎の顔は険しくなる。
 しかしムラタはそん
 な匡一郎の表情には一向に目もくれず、
 更に話を続ける。

「だがな…だがな、俺は断じて違う…!
 絶対ぇオヤジみたいな屑にはならねぇ!
 俺は力の有る者になってやる!
 ……どんな汚い手段でも……
 後ろ指差され組される手段でも構わない。
 どんな事をしてでも強大な力を手に入れてやる。
 そして世の中の屑共に見返してやるんだ!!
 …オヤジは弱者の味方面して結局力に潰された。
 とどのつまり……
 オヤジは世の中に排斥された屑なのさ!
 だったら俺は潰す者になってやる!!
 生きる価値の無ぇ負け組共を
 片っ端から容赦なくぶっ潰してやるよ!!」

 とムラタはそう言い捨てるや否や、
 手に持っていたガラス球を叩きつけ、粉々に砕く。
 そして、そう言ったきり、その場から立ち去り、
 その時からムラタと匡一郎は袂を分かつ事となる。

<−神威軍団〜ムラタの個室−>
(ORISINAL SONG20.Revenger)


「そう言えば……匡一郎の野郎……
 今頃一体何をやってやがるんだ。」

「入ります。」

 と、物思いに耽っていたムラタに魔族の部下が報告に訪れる。

「何用だ?」

「ムラタ大佐……斬真狼牙が××に現れました。
 付け加えますに、大陸で魔界孔が開いたとの情報が……。」

「何?あの糞忌々しい斬真狼牙か!!?」

「はっ……。」

 狼牙のせいでPGGの副総長の座から
 追い出された過去を思い出し、
 ムラタは怒りの感情を隠せずにもろ表に出す。

「よし。ならば引き続き調査を続行しろ。」

「御意。」


<−エクレールの夢の中−>
(ORISINAL SONG21.Ombre de Eclair)


 ゆっくりとエクレールに近付いてくる少女の輪郭。
 その少女……イデア。

 エクレールからは、シルエットの様な輪郭だけで
 詳しい姿は見えない。

「こんにちは、エクレ。」

「誰……?一体誰なんです?」

「あたしはイデア……。エクレの為に生まれてきたの。」

 イデアは口に手を当てて、クスッと笑う。

「私の為……?」

「そう、あたしはエクレの為だけに生まれてきたンだよ。」

 エクレールの夢の中で、光は徐々に強まる。
 その眩しさに、思わず手をかざし、目を閉じる。

「エクレ……エクレ……。」

「目を閉じちゃ駄目。エクレール、もうすぐ逢える。」

「だ……れ……。」

「あたしはエクレの為に生まれた、エクレと同じ存在。」

「私と……同じ……?」

「あたしはエクレの為だけに生まれた。
 エクレだけの為に……。だってエクレは…エクレは………。」

  う言うと、光に包まれる様に消えるイデア。

<−神威軍団のイデアの個室−>
真っ暗で閑散とした部屋の中、たた一人イデアがいる。

  部屋の中にはほとんど何も無く、
  無機質な壁に覆われた部屋には灯りすら無く、
 暗闇に包まれている。

「クス…早くエクレと遊びたいな……。
 エクレの好きなものはみんな嫌い!!」

 そう言うと、イデアは部屋の隅に有った
 水銀の球を人差し指の先に乗せ、
 狂々{くるくる}と回す

「エクレの大好きなマリーシアを、
 真っ赤な血で染めて上げる。」

「綺麗に引き裂いてあげる……。
 クスクス……楽しみだなァ。あたしのエクレ……。」

 その直後、人差し指に乗っていた水銀の球は粉々に砕け散る。

 そして暗闇の中、イデアの笑い声だけが不気味に響き渡っていた。

<−NAGASAKI・とある山の頂上−>
(ORISINAL SONG21.Le Pucelle)

 NAGASAKIのとある山の山頂に、一つの教会が立っている。

 そこでは在日外国人の信者達が
 戦神・シードに祈りを捧げる教会でもあった。
 だが、今は誰も礼拝に来る者もおらず、
 管理人も存在せず、酷く朽ち果てていた。

 そこでジャン神父は神威四天王の一人、
 ラ・ピュセルと邂逅していた。
 いや…邂逅というにしては、
 二人の間には余りにも凄まじい緊張が走っていた。

「久しぶりだな。ジャ……いや…
 今のお前にはジャンヌと呼ぶべきか。」

「その必要は無い。今の私はその名すら棄てた……。
 今は神威四天王の一人……ラ・ピュセルだ。」

 容易に予測出来ていた事だが、
 四天王の一人、ラ・ピュセルは
 如何やら旧ホーリーフレイムの総……
 否、『元』総長・ジャンヌらしい。

「そうか……。」

「エクレールがお前に会いたがっているぞ。」

 と、挨拶もそこそこにジャン神父は
 エクレールを初めとする同志が
 ジャンヌを気遣っている事を話す。
 だが……

「穢れた民に心を許し、あまつさえ、
 穢れた力に染まった者などに会う積もりは無い。」

 と、即座に帰還を拒否する。

「お前は知っているのか?
 NAGASAKIでは今エクレールが
 お前の代わりに総長を名乗っている事を……。
 この国と人類の未来を守る為にお前に代わり、
 懸命に総長の大役を務めようとしているんだぞ。」

 と、更に説得を試みるが……

「言った筈だ……。会う積もり等は毛頭無い、とな。」

  と取り付くしまも無い答えが返ってくるのみ。

「そうか……で、用件は一体何だ?」

 と、説得を諦めたジャン神父は、
 険しい顔でラ・ピュセルが自分を呼んだ理由を問う。

「この地に巣食う穢れた民を滅ぼし、
 この穢れた大地を浄化する為にお前の力が欲しい。
 ……ジャンよ、私に力を貸すのだ。」

 と、自分の目的・日本人殲滅及び日本浄化を説明し、
 逆に自分の目的に加担する様に要求してくる。
 無論、その様な事を言われて「はい」と承諾する訳も無く……

「いい加減に目を覚ませ。
 今更日本人を皆殺しにしたところで
 殺されたお前の夫や同胞達は生き返りはせんぞ。」

 ジャン神父が苦々しい顔で苦言を呈す。だが……

「もう一度言う。穢れた者達を滅ぼし、
 この地を浄化する為に力を貸すのだ。」

 と、全く聞く耳を持たず、
 更にジャン神父に目的への加担を求める。

「甞めるなよ、
小娘{クソガキ}……
 いくら老いさらばえたとはいえ、このジャン=レオン…
 復讐等という愚行で魔族に同胞を売る貴様とは……
 
断じて違う……!!

 それに対してジャン神父は感情を抑えながらも
 何処かドスの聞いた口調で返答する。
 その表情からは、いつもの温厚な神父の面は見られず、
 まさに鬼人、というべき表情を浮かべている。

「復讐ではない……正義の裁きだ。」

(ORISINAL SONG12.Confort the enemyB)
(
SEシャラン……)

 最早交渉決裂と判断したラ・ピュセルはそう言い捨てると、
 おもむろに席から立ち上がり、
 愛剣のヴァルシオンを抜き、上段に構える。

 ジャン神父もまた、
 それに応ずる様な形で拳を握り締め、
 ボクシングの源流となる
 西洋拳法の構えを見せる。
 そして二人の間ニは達人同士の対峙特有の
 緊迫した空気が流れる。

  だが、達人同士の闘いでは、
  対峙だけでも凄まじいエネルギーを必要とする。
  そして、その緊張が途切れた瞬間……

(SEダッッ)
 そのふたつの戦鬼は瞬時に駆け寄り、間合いをつめていく。

  二人の剣と拳が互いの頬を掠め、
  ヴァルシオンの数度に渡る斬撃をかわした後、
  掌底を腹に叩き込み、一旦間合いが離れたものの……

「ラ・ピュセル!」

 と、とある小男が割ってはいる。

「ロックか……何の用だ?」

 と、ラ・ピュセルはその小男をロックと呼ぶ。
 このロックという男は
 神威軍団・魔導衆の一人であり、
 神威から不老不死の生を約束され、
 協力を申し出てきた男である。

 無論、神威に対する忠誠心など微塵も無く、
 有るのは不老不死に対する執着のみである。
 もっとも神威軍団では生粋の魔族以外に
 神威に忠誠心を持っている連中などはほぼ皆無に等しいが。

「神威からの伝言でしゅ。
 急用が有るから至急戻れ、との事でしゅ。」

「神威が、だと?」

 神威の帰還命令に
 ラ・ピュセル一瞬戸惑いの色を隠せない。
 だが、一応主命である事には違いないので、
 苦々しい表情をしながらも
 その指示に従わざるを得ず、
 踵{きびす}を返して振り返る。

「命拾いしたな……ジャン。」

 だが、捨て台詞を残して去っていくラ・ピュセルの表情には、
 何処かしか納得出来ない色が濃く出ていた。

「最後にお前に一言言っておく……。
 お前がもし魂{こころ}と誇りを捨て去り、
 真に魔族に魂を売るならば……
 この手で決着リをつけねばならん……。
 そして次にあった時は……
 全身全霊を込めて容赦なく
 丹念にお前を叩き潰すぞ……!」

 と険しい表情でその場を去るラ・ピュセルに対し、
 ジャン神父は死刑宣告の様にそう宣告する。


<−神父の回想−>
(21 dash to trush 〜unpluged〜)

 10年前……
 エクレールはあの日も玩具の模造剣で
 剣の稽古をしていた。

 父のセイルと母のジャネットの稽古を
 見ているうちに見様見真似で始めた稽古だったが、
 『門前の小僧習わぬ経を読む』の諺通り、
 めきめきと腕を上げていった。

 もっとも、エクレールの性別を鑑{かんが}みるに、
 小僧という表現は正しくは無いが。

 近所の子供達とちゃんばらごっこをして過ごし、
 家に帰ったら擦り傷だらけ、
 と云ういわゆる一つのヤンチャ坊主だった。

 前々からエクレールはジャネットやセイルから
 剣を教わりたい、教わりたいとせびり続けてきたが、
 ジャネットやセイルは巧みにそれを交わしていた。

 だが、その天与の才を見てジャネットはこう呟いた。

「やはり……血は争えないわね……。」

「今度戻ったら……本格的に剣を教えてあげなくちゃ……。」

  その言葉を聞いて、エクレールはとても喜んでいた。

「どうせなら……私よりも、パパよりも強くなりなさい……。」

「あなたになら出来るわ。」

「うン!!」

 満面の微笑みで、エクレールは力強く頷く。

「ボク……強くなる!!」

「ママよりも、パパよりも……誰よりも強くなる!!」

 そうジャネットに約束するエクレールの目は、
 他のいかなる宝石の類いよりも輝いていた。

「じゃあ…約束よ。途中で挫折したり、泣いたりしないで……。」

「私よりも、パパよりも、誰よりも……強くなりなさい!!」

「うン!!!!約束するよ!!」

 しかし、ジャネットとセイルはNAGASAKIから戻ってこなかった。
 ジャン神父は、その事実を知り、エクレールにこう話した。

「エクレール……実はな……。」

「ジャネットとセイルが帰ってこれなくなった。」

「とても……とても遠いところに行ってしまったんだ。」

「いつ……いつ帰ってくるの?」

 ジャネットやセイルの帰りを……
 ずっと憧れた『父や母から剣術を教わる』
 その日を心の底から待ち望んでいたエクレールは、
 寂しそうにそう聞いた。

「帰ってはこれないんだよ。」

「ずっと遠い…お空の国に……行ってしまったから……。」

「やだよ……」

「ボク、パパとママに電話する!!パパとママが帰ってくる様に!!」

「エクレール……パパとママの行き先には……電話が…無いんだ……」

 涙を浮かべて裾に縋るエクレールを見て、
 ジャン神父は悲哀しげにそう諭す。
 
「やだ……そンなのやだよぉ!!」

「だって、帰ったらボクに剣術を教えてくれるって……
 約束してくれたもン!!約束してくれたもン……」

 ジャン神父は泣きじゃくるエクレールに答えられずに、
 ただただエクレールを抱きしめた。

「すまない……すまない……。」


<−オルレアンの本部−>
(ORISINAL SONG2.make me funkyA)

「ん?ジャン神父じゃねえか?どうしたんだ、そんなところで?」

「ああ、まりも君か。いや……何でもない。
 ただ……ただ、昔の事を思い出していただけさ。」

「そうか。」

予告
蛇王院空也「九州に風雲吹き荒れる!
        次々と九州に現れる特体生達…
        そして彼らの目的は一体!!」?
シャイラ&河野美潮「次回大番長AA『序章その五 「九州同盟・成立す」』」
狼牙軍団全員「立てよ人類!!

今週の特体生
三条火呵留(ぷろすちゅーでんとG)
体力 経験 距離 信頼 気力 攻撃 命中 回避 治安 収益 給料
90 40 反抗 74 110 20 40 60 70
スキル 属性 対属性
剣の舞 黒魔 機械・魔族
剣の舞(気力2)〜一回で二人相手に出来る

後書き
今回は神威四天王がメインです。
神威四天王+αを紹介がてらに
書いてみました。
ちょっとネタバレ的な部分も含んであります。

ラ・ピュセル(以下L)
「何か私の設定が色々滅茶苦茶に弄くられている様な気がするのだが?」

管理人(以下K)
「いいのいいの。どうせ公式設定とは矛盾しないんだから。」

L「い…いい加減な男だ……!」



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