真・闇の会夢幻格闘化計画{Dream Duel Project}大番長After.Age表紙
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序章その二  「御旗の下に・第三章 銘刀」

序章その二・新規登場人物
山鉄
オリジナルキャラ。
前は闘神都市Uのトーナメント表に載っている出場選手・山鉄から取った。
暴力飯店の亭主。

キース=ゴールド
ランスシリーズから登場。
当作においては富田町の町長を務めている。

ケチャック=バンゴー
ランス9から登場。
当作においては市長のステッセルの縁故人事で
市の重要な職を務めているが、無論無能である。

ステッセル=ロマノフ
ランスクエストから登場。
当作においては山賊ライオンマインドの首領。

アルカネーゼ=ライズ
パステルチャイム3に出場。
当作においては京御庭番衆御頭を勤めている。

エレナ=フラワー
ランス9から登場。
当作においては山賊ライオンマインドの副首領。

セキワケ
ランスクエストから登場。
当作においては山賊ライオンマインドの幹部。

真田完柳斎
ぱすてるチャイムコンティニューから登場。
当作においては元新撰組所属という設定。

沖田のぞみ
戦国ランスから登場。
当作においては元新撰組所属という設定。

茸山正義
人間狩りから登場。
当作においても悪徳企業の社長と言う設定。

ヤラセ
イブニクルから登場。
当作においてはフリーの特待生という設定。

バード=リスフィ
ランスシリーズから登場。
当作においてはフリーの特待生という設定。

ミーナ=トリント
パステルチャイム3に出場。
当作においては京御庭番衆御頭を勤めている。

鉄仮面
ぱすてるチャイムコンティニューから登場。
当作においては富田町の
雑貨店スタインハートの店長という設定。

闘将バステト
ランス9から登場。
当作においては市長ステッセルの護衛という設定。
5秒CM
三輪坂真言美「lalalala〜……♪センパイセンパイ、
          この後は、大番長AAなんですよ!」

<月山富田町>
(BGM:08 Make me funky)

某月某日の死魔根の町の一つ・月山富田町は、
いつも通り何の異変も無い通常運転をしていた。

その町は一見
何処もでも在りそうな極一般的な町で、
取り立ててハイソな高層ビルや
ナウなヤングにバカウケな店舗等の
近代的な建築物こそ見られないものの、
そこに住む人々は老若男女人種問わず、
活気に溢れた魅力的な町だ。

更に町を守護るかの如く国宝指定の月山富田城、
そして遠く昔の戦国時代に死魔根を治めてきた
尼子家の家臣である悲運の名将・山中子鹿の銅像が
自己主張とばかりにででーんと立っており、
無い胸をキリッとふんぞり返らせて
右手を挙げて人差し指を空にさしている。

ちょっとばかし十数センチ程背丈が
史実の子鹿本人の背丈よりも
水増しされているのは御愛嬌だが。

その町を彩る人混みの中で、
京お庭番衆お頭・四王宮蒼生は
一人てくてくと目的地に向けて
一心不乱に歩いている。

「え〜と…町役場は……」

蒼生の言葉によれば目的地は町役場らしく、
丹念に注意深く町を散策している。
何せこの町の象徴である富田城は近くにも
それらしき建物は一向に見あたらないからだ。

蒼生が道行く通行人に対して
根気よく町役場の場所を聞き、
そして肝心の町役場に着いてみれば、
そこだけは町の賑やかかつ和やかな雰囲気とは
一線を画した雰囲気を醸し出している。

<町役場前>
(BGM:27 All The Time)
門には槍持ちの屈強そうな門兵が二人、
何ら注意を怠る事なく警備に就いており、
そして中からは非常にムサ暑苦しい熱気が
プンプン臭ってくる。

明らかに只事ではない雰囲気を醸し出している。
だが蒼生は最初からそれを承知の上で門の中に入り、
そして門兵もさしてそれを咎めようともしない。

蒼生が中に入ったそこには、
実に町役場には似つかわしくない、
完全武装の兵士がそこら中にいるではないか。

それらの兵士達は皆一様に
一目見ただけで判る程のBパワーを持っており、
只ならぬ特体生である事が見て伺える。
少なくとも只の町役場にいて
可笑しくない連中ではないのは確かだ。

手持ちの得物を手入れしている者、
物騒な話を種に談笑を楽しむ者、
力を持て余して腕相撲にしゃれ込む者、
その勝敗を種に博打をしている者、
独りで腕組みをして沈思黙考をしている者、
それらに共通しているのは
皆一様に屈強な特体生だという事だ。

それら気の弱い者ならビビって
腰を抜かして失禁するであろう
強烈に殺風景な空間の中を
蒼生は何ら臆する事無く入っていき、
目の前に存在る町長室に入ると……

<町長室>
(大帝国BGM:御前会議)
「遠路はるばる御足労感謝する。
 町長のキース=ゴールドだ。」

町長のキースが鷹揚な態度で蒼生を迎える。

「京御庭番衆お頭・四王宮蒼生です。」

「着いて早々お疲れで申し訳ないが、
 早速本題の方に入りたいと思う。」

単刀直入に言うとキースは側に置いてある
大量の資料を蒼生に見せる。

「確か今回の依頼は町外れの月山に割拠する
 山賊集団・ライオンマインドとその首領、
 アルカネーゼの討伐と伺いましたが。」

ここで説明しておくと、
京御庭番衆という特体生組織は、
一応特体生組織の一つに定義されているものの、
京の料理屋・蒼生屋の収入以外には
これと言って纏まった手当も収入もなければ、
ある程度以上の特体生構成員がいる訳でも無いので、
不定期的にこうして御頭である蒼生を含めた構成員が
こうして他の特体生・行政組織の依頼{オファー}に応じて
参上して出稼ぎに行っているという、
いわば傭兵団とでも言うべき組織だ。

そして組織や構成員の数や規模が
他の組織に比べて極端に少ないにも関わらず、
所属特体生は一騎当千の強者揃いであり、
制圧したところで被害の大きさに比べて
実入りや利益が極端に少なすぎる
ハイリスクローリターンという理由で
護国院や狼牙軍団が
「敵対組織に協力しない」
という条件付きで
存在を容認してきたに過ぎないからだ。

「まずはこれをご覧いただきたい。」

そういうとキースはおもむろに
資料の中から月山の地図を取り出す。
その月山は複雑な川の流れと入り組んだ獣道、
生い茂る森林に山肌を露出した絶壁の崖に
山を湖に囲まれた水塞とでもいうべき
天然の要塞という事が素人目でも見て取れる。

「今までは町に被害もなく特に暴れ回ったりせず、
 一応大人しかったから別に討伐もせずに
 放置プレイをしてきたんだが……」

「それが最近になって凶暴化して
 町に被害が出る様になった……ですか。」

「いや…連中に代わりは無いが、
 ヘルマン市の市長の
 ステッセル=ロマノフがいきなり
 討伐しろと発破をかけてきたんでな。
 恐らくは次期市長選に向けての
 イメージ向上を狙っての事だろうな。
 この町は他の町に比べて多少豊かで、
 税収も安定してはいるものの、
 かと言って山賊討伐をする程豊かではないから
 今まで実害が無いという理由で
 長らく放置してきたんだが、
 いかんせん町長の身では市長である
 ステッセルには逆らえんのが実状でな。」

そして次にキースが資料から出してきたのは……
町の財政事情の情報を詳細に記した帳簿だ。
それによれば……

「中堅特体生二人にそこら辺の
 特体生を約二十人雇っただけで
 町の財政はぎりぎり精一杯だ。
 しかしこれでは足りないからもっと増やせと
 ステッセルが発破をかけてきた。そこでだ。」
 
キースの話は更に続く。
資料の山から更に出してきたものは……

(大帝国BGM:諸国跳梁)
「これを見て欲しい。」

ライオンマインドの首領・アルカネーゼ=ライズと
副首領・エレナ=フラワーの資料だ。

「この大女がライオンマインド首領・アルカネーゼ、
 そしてとなりのが副首領のエレナ。
 情報によればアンタ達は現在
 これといった人材を捜していると聞く。
 もし討伐が成功したら町長権限で
 この二人の身柄を引き渡させて貰う。
 それと山賊共の所持している金銀財宝のうち
 一割を二人の身柄と共に引き渡すとしよう。」

「成程……完全な成功報酬という訳ですか。」

「すまんがこちらの事情も
 さっき話した通り火の車でな。」

「判りました。不肖四王宮蒼生、
 僭越ながら月山討伐に参加させて貰います。」

「感謝する。この町長キース=ゴールド、
 心から礼を言わせて貰おう。、
 話は変わるが今回の討伐に参加する特体生のうちで
 重きをなす二人を紹介しておきたいと思う。」

(ランス9BGM14:今しかない!)
そう言うや否やキースが
勢いよくパァンパァンと手を叩くと
奥から二人の剣客が現れる。
一人は老齢でかつ飄々とした態度ながらも
全身から沸き立つ剣気は非常に侮りがたきものあり、
そしてもう一人はメガネ&オドオド系の
病弱美少女剣士だ。

「紹介しよう。こちらが真田完柳斎。
 そしてこちらが沖田のぞみだ。」

「ヒョヒョヒョ、これはこれはべっぴんさんじゃな。
 ワシは真田完柳斎と申す。」

「その……あの……沖田…のぞみです。」

「京御庭番衆の四王宮蒼生です。
 よろしくお願いしますね。」

<月山 ライオンマインドの本拠地>
(大帝国BGM:諸国跳梁)
夕焼けの朱の色に彩られし月山には、
山を飾る森の中に色々多彩なベトコン顔負けの
ブービーとラップの数々が仕掛けられており、
整頓された山道には下峰・中峰とそれぞれ
賊のいる山には似つかわしからざる
宿屋・飯店・武器屋・雑貨店が立っている。

言うまでも無くそれらの一連の店は、
ライオンマインドの活動を支える
経済活動目的だけではなく、
そこに逗留する旅人の噂話を初めとする
外界からの情報収集の目的を兼ねている。

その月山の頂上のいかつい建物の中には
ライオンマインドの中核たる
真首領女{マドンナ}アルカネーゼと
副首領女{ドロンジョ}のエレナが威風堂々座っている。

何故二人がここにいるのかと言えば
無論富田町よりキースによって派遣されてくる
討伐部隊の対策である事は言うまでも無い。

しかし今二人は正直困惑していた。
先述の通り富田町は討伐する余裕が無いという理由で
ライオンマインドの討伐を見送っており、
ライオンマインド側も一般人には手を出さずに
徒に刺激を与えないと言う態度で
暗黙のうちに共存が成立していたからだ。

だが今回は何故か何の脈絡もクソも無く、
富田町側からの討伐が本気で行われると知り、
その事について二人は困惑をしているのである。

「しかしなァ……まさか連中が
 仕掛けてくるとは思わなかったぜ。」

「まぁな……しかし理由はどうあれ、
 おれ達に喧嘩をふっかけてきたんだ。
 大人しくハイやられますって訳にもいかねぇし、
 不本意だがこちらとしても
 迎撃の用意や対策をしなきゃなるめぇ。」

「長期戦に備えて食料や武器の調達や補給、
 子分の練成までやる事が山程有る。」

「その件については心配はないよ。」

ライオンマインド市の巨躯を誇る漢女が
二人の話の間に入ってきた。
その名はセキワケ。
ライオンマインドの主力の一角として
ライオンマインドの武力の要を担ってきた女だ。

間を入れる事無くセキワケは
懐から一人の怪しさ大爆発の商人の写真と履歴、
そして扱っている商品のカタログを出す。

「このマンモス怪しい男は一体誰だい?」

「この男の名は茸山正義。
 きな臭く怪しい噂が絶えない胡散臭い商人さ。
 本来ならこんな怪しさ大爆発の男には
 頼りたくなかったんだけど、
 生憎山賊の身分では大手のまともな商人は
 一切相手してくれなくて
 こういうアングラ系の曰くつきの商人を
 頼らなきゃならないのさ。」

セキワケの言う通り、
ライオンマインドは山賊アウトロー集団、
商人にとっては取引相手としてはいつ裏切られたり
料金を踏み倒されたり略奪されたりするか判らない。
しかも世間様に追われている犯罪者なんぞには
誰も取り引きしたくないのは当然だ。

「背に腹は代えられないって訳か。しょうがないねぇ。
 じゃあその茸なんとかって奴を呼んできなよ。」

「あいよ。」

セキワケが去って数刻程経つ。
するとセキワケの紹介でアルカネーゼとエレナの前に
悪徳商人茸山が姿を現した。

(大帝国BGM:陰謀の気配)
「グヒョヒョヒョ、初めまして。
 私茸山商会の会長を務めております茸山と申します。
 此度はこちらの姐さんの紹介により参上しました。
 揺り籠から極太バイブまで
 何でも取りそろえてご覧に入れますぞ。」

と一通り紹介を終えて茸山は
懐からカタログを取り出し、
アルカネーゼに欲しいんか欲しいのんか?
何がほしいんや?とばかりに見せつける。

そして商談の戦場と化した場は、
一種独特の雰囲気を醸し出している。
ぶっちゃけ商談とは買い手にとっては
『如何に安値で大量かつ良質の商品を即入手出来るか』
売り手にとっては
『如何に高額で少量かつ商品を自分の都合のいい
 タイミングで価値のあるものとして売りさばけるか』
という本来ならば並び立つ筈の無い
二つの我欲が談合によって互いに譲歩すべきところと
譲歩すべきでは無い部分を話し合いで決定するという、
一種の儀式や戦争に近しいものであると言えるからだ。

いきおい一種独特の殺伐とした雰囲気を
表向きはにこやかな態度でくるみ隠す、
という事になるのは自明の理というもの。

「さて、おふた方におかれましては、
 当商会の提供したカタログを
 全て目を通されたかと伺いましたが。」

「ああ、あらかた目を通してある。
 とりあえずは今後の事も考えて
 約100名が数ヶ月戦えるだけの
 長期保存用食料にこちらの量産型の防具一式、
 そしてポン刀も用意してほしい、」

「成程、そうですか。」

茸山は悪徳商人らしく、
先方の関係者に賂{まいない}を送る等して、
相手の無知に付け込んで粗悪品を
高値で売り飛ばす等する事もあると言う。

無論それを知らぬ二人では無いし、
茸山にしても流石に粗悪品を見せる等の
愚を犯す事も無い。

「ならばこれはどうですかな?」

まずはメジャーな特待生組織が
採用していると言う長州式の刀を見せ、
斬れ味が良いと主張。
そして奥州刀に甲州刀、
薩摩刀に青竜刀までも見せる。
それに対してエレナは……

「長岡刀が安い筈だ。」

「長岡刀は……安価なものではありませんな。」

「だが最近狼牙軍団と護国院との戦いが
 収束した事で用意された長岡刀が過剰になっている。
 それでも高いと言うのか?」

更にエレナの交渉は続く。

「そもそもおれは奥州刀は繊細で好まねえ。
 奥州ではどうかは知らねえが、
 こっちの連中は腕力自慢が多いから
 繊細な刀身よりも肉厚な刀身の方が好ましい。」

「これにて商談成立という訳ですな……gfff」

<富田町>
(BGM:08 Make me funky)

アルカネーゼと茸山の商談が成立した夜が明け、
町は再び目覚め、そして常時の活気を取り戻す。
町の外れに視線を移してみれば、
そこには狼牙軍団の切り札の一角・京堂扇奈が。
その扇奈は一人後生大事そうに
Bストーンの切れ端をぼーっと眺めていた。

(SEサシャサシャサシャ)
魔界孔での敗戦の余波で吹っ飛ばされてきた扇奈は
これまでの旅路を手持ちの
食料やBストーンで暫く食いつないできたものの、
それももう限界だ。扇奈の胃袋は我慢でけない。

腹の虫は遠慮諍いなくサシャサシャと
大音量で自己主張をし続け、
喉はサハラ砂漠より枯渇していた。

言うまでも無いがこの状況を何とかするにゃあ
飲み物と食い物の早期による摂取が最適な訳だが、
その両者を確保する為の先立つ手段としての
Bストーンが無いのでにっちもさっちもいかない。

「今持っている懐具合と言えば……
 このBストーンのかけら一個、
 こんなのを後生大事に持ってたって
 3億Bストーンに化けっこありませんよねぇ。」

そりゃあ当然といっちゃあ当然だ。
にっちもさっちもいかなくなった扇奈が
ボヤきながら歩いていると……クンクン
空腹で都議すまされた扇奈の鼻がある臭いを感じる。

(BGM:18 comical)
嗚呼……これはいい臭いだ。
今の扇奈の嗅覚特に食べ物関連の嗅覚は
常人の一京倍にまで膨れ上がっており、
その異常なまでに優れた嗅覚力は遠くに存在る
美味そうな香りが漂ってくる飯屋を見逃さない。

「ふぅ……お腹も空いたし……堪らない臭いです。」

だが少し待って欲しい。
確かに目の前の美味しそうな飯屋に行けば
望みのものである食事にありつけるだろう。
だがその前にありつく為の手段、銭が無い。

故に今扇奈の脳内では必死に理性が
食欲という巨大な煩悩と……戦っていない。
ボクサーのジャブより速い速度で
煩悩が瞬殺勝利しているじゃあんか。
巨大な煩悩の前では理性は鴻毛よりも軽い様だ。

判っちゃいるけどやめられない、
腹の虫が鳴らす空腹感に負け、
扇奈はついふらふらと無意識の内に
飯屋にハイってしまう。

<飯屋>
(大帝国BGM:海軍長官の日常)
扇奈が空腹を満たすという欲求の誘惑に負けて
ホイホイと入っていった飯屋の中は……
一見ごく普通の中華系飯店アルよ。ないアルよ。

ごくごく普通のメニューにごくごく普通の厨房、
そしてごくごく普通のテーブルに
これまたごくごく普通の客層。
ごくごく普通の何処にでもアル飯屋アルよ。

だが一つだけ普通じゃないものがある。
一目見ただけで扇奈の目はそれを見抜いた。
店主は妙に怪しい…いや、見るからに怪しさ大爆発だ。

「見た目だけで人を決めつけてはいけません
 人は中身ですよよい子のみんな」
という建前の教育口上はこの男の前では
呂布の口約束の如く意味も無いものになってしまう。
だが扇奈の空腹はそんな事をまるで
意に介さぬ様にまで悪化していた。

(大帝国BGM:陰謀の気配)
「おう、久々に上タマの姉ちゃんがやってきたぜ。」

うん、そうだね。
期待……もとい予想を1コンマも裏切る事の無い、
正統派{クラシカル}なヒャッハー系だ。

「ここをヒャッハー系と知らねえカモが
 ホイホイやってきたぜ。
 騙して石鹸ランドにでも叩き込んで……
 ていうかそれよりもあの刀、
 売ればかなりのBストーンになるんじゃね?」

どうやら扇奈の肉体と刀に目を付けたらしい。
だがここで問題だ。
どうやって扇奈のボディと刀をゲットするか?

「ヘイ、お待ち。」

扇奈が席に着くやいなや、
店主は注文も何も無いのに
手前勝手に高価な飯を持ってきた。
いわゆる送り付け商法という奴であり、
Meミー詐欺に劣らぬ位の
単純ながら効果のある詐欺商法だ。

「すいません、ていうか……
 私何も注文してませんけど。
 ていうかBストーンが
 1欠片しかないんですけど。」

それに現在のひとかけらしかない
Bストーンでは到底持ってきた
料理の代金を支払えないので
当然ながら扇奈は断りを入れる。
 
以外、理性が食欲を上回る。
ところがどっこいそこで引き下がる訳ねえべ。

「しめたぜナウゲッタチャーンス。」

お前はどこのインチキ司祭だ。
相手の持ち金を上回るだけの
飯を食べさせた後に
インネンをつける手はずの店主は、
相手が文無しである事を知り、
自分の思惑を遙かに越えて
事が巧く運ぶ事に対し、
思わず不用意に本音が漏れる。

「え?何でしょうか?」

「いやいや、こっちのこってすよい。
 どうも姐さんは美人で気に入った。
 勘定の事何ざ気になさらずに
 バァンバァン食って下さいや。」

扇奈の問いに対し、言葉巧みにごまかし、
店主はどんどん飯を食う様にホイホイ進める。
奢る様な言い方と素振りを装うが、
無論そんなつもりは毛頭ねえっしょ。
後で代金を要求してその代金の代わりに
ナイスバデーと刀をせしめる為さ。

「バァンバァンですか?
 気前のいい豪勢な事を
 言ってくれるじゃないですか。」

「お嬢さん、切れ味良さそうな銘刀を持ってるねぇ。
 それ何てーの?」

扇奈の愛刀を誉める振りをして、
しかし店主は巧みな話術で
刀の由来と出所を問う。

何故なら三文の値打ちしかない凡刀ならば、
騙し取る価値なんぞ無い。
そしてもしヤバい出所ならば
騙し取るのを断念せざるを得ない。
代わりにソープに沈めてやればいい。
その質問に対して扇奈は気前よく

「これですか?これは先祖伝来の宝刀火星救急丸です。
 抜けば刀根から露を発生させて寒気を呼び起こし
 使い手の殺が高ぶれば水気を纏い、
 人を斬っても流れ刃には鮮血を残さず、
 あたかも葉先を洗う驟雨の如く。
 河に突き立てると流れてきた葉っぱが
 真っ二つに切れるという銘刀なんですよ。」

話半分に聞いてもかなりの銘刀らしい。
無論扇奈の言葉をホイホイ鵜呑みにする店主ではない。

「そりゃあすげえや。でも本当なんだろうね?」

確認の質問も忘れない。
それに対して扇奈は備え付けの紙を取り出し、
それを抜き身の刀身の上から無造作に落とす。
するとどうであろうか。
紙はまるで刀身に吸い込まれるかの如く
音すら立てずあっさり真っ二つになる。

「マジすげえ!マジ益々欲しくなった!」

その切れ味を目の当たりにして
店主の口からは思わず
本音が出てしまう程の切れ味だ。

「え?」

だが当の扇奈は目の前の飯に
舌鼓を打つ事で夢中になっており、
店主がぽろりと口走った本音を
あまり気にしていない。

「いやいや、こっちのこってさぁ。
 それよりももっと食いねぇ。
 その火星救急丸を天地を喰らうみてえにさ。」

「火星救急丸を喰う?
 クスクス……面白い事を言う人ですね。」

そうこう談笑しているうち、
いつの間にやら目の前の料理は
ブラックホールに吸い込まれるが如く
扇奈の胃袋に納められる事となる。
この勢いならば香姫のゲゲボ殺人団子も
軽く平らげてしまいそうだ。

「ふぅ、流石に満腹になりました。
 そろそろ帰りますので……ごちそう様でした。」

扇奈は礼を言うと懐からなけなしの
Bストーンの欠片をテーブルに置き、
また旅路に出ようとするが……
そうは問屋がおろさない。

(BGM:32 terrible beat @)
「毎度ありー。代金は締めてこれだけになりやす。」

ここでナウゲッタチャンスとばかりに
店主が本性を現してこれまでに食べた
料理の代金のメモを出して
飯代払わんかいと要求を突きつけてくる。

無論扇奈がそんな大金を持っている訳も無く、

「そこに置いたじゃないですか。」

とBストーンの欠片を指さす。
言うまでも無いが、料理の代金より、
扇奈の体と刀が目当ての店主が
ハイソーデスカと言う訳が無く…

「で?何ですきこのハシたBストーンは?
 あれだけ飲み食いしておいて
 これで済むわきゃねえっしょ。
 残りの代金払ってちょんまげ!!
 びた一文残らず!!さあ!!」

飽くまで代金払わんかい!!
との要求の体勢を崩さない。

「私はおけらだと断りましたよ!」

「ん〜何の事かな?
 これだけ食っておいてそりゃないっしょ!
 ねえお客さんよぉ!!」

と執拗に代金を支払う様に要求する。
無論扇奈が素直に代金を支払うとは
店主自身も寸毫も思ってはいない。
というより無い袖は振れない。

何故ならば先述の通り店主狙いは
扇奈の体と火星救急丸の接収であり、
代金の代わりにそれらを要求するのが
本当の目的だからだ。

「成程、ここがいわゆる暴力系飯店という奴ですね。
 だけど本当に私は一文無しなんですよ。
 私からぼったくろうとしても無駄です!」

扇奈は自分に支払い能力が
皆無である事をアピールし、

「何なら下働きでもウェイトレスでも
 何でもして支払いましょうか?」

と交渉を持ちかけるが……

「Bストーン目のものならあるじゃねえですかい。
 アンタとアンタの腰に差している逸品が。」

扇奈の体と刀が目的の店主は
その交渉を一顧だにせず、
隠蔽する必要が無くなった
自分の目的をストレートに口走る。

「成程、最初からそれが目的という訳ですか。
 今考えてみればどうも態度が
 胡散臭いとは思っていましたが……
 断ると言ったらどうします?」

「言うまでもねえ!力尽くで奪うまでよ!!」

店主は威勢良く啖呵を切り、
勢いよく中華包丁を構えて
力任せに扇奈に切りかかる。

その攻撃は多少の武術の心得こそ有るものの、
只のトーシローに毛が生えた力持ちが
特体生の中でも屈指の実力を誇る実力者である
扇奈にかなう訳もなくとっととあしらって
逃げる事が目的の動きに呆気なくかわされ……
と思いきや足下には今のやりとりによって
テーブルからこぼれ落ちたラー油が
地面一面に広がっていた。

どうやらさっき店主と揉めている際に
テーブルからこぼれ落ちたものらしい、
それに足を取られて転びそうになった扇奈は……
とっさに条件反射で刀を抜いてしまい、
気づいた時には既に時お寿司。

(SEスパーン)
気付いた時には包丁を持った
店主の利き腕を切り落としてしまった。
余りに斬り口が鋭かったのか、
店主は呆然としばし斬り落とされた腕を
他人の如く見ていたが……

いてえええええええ!!!らぎゃああああ!!

腕を切断されたという現実を
理解した痛覚が自己主張を初め、
激痛に襲われた店主は恥も外見もなく
穴という穴から水分を垂れ流して泣き喚く。
その様子は周りに飛び散った流血と相まって
目を背ける様な惨劇の場と化していた。

「何だ何だ?」

店主の絶叫はあまねく辺りに木霊し、
それを耳にして時を置かずしてギャラリーが
何事かと興味を持って
黒山の如く周りに集まっていた。

これではその場から逃げる事はかなわない。
それに店主をこのままにしていれば
出血多量でおっ死ぬのは火を見るよりも確実。
こいつはマジでヤバい状況と言える。

扇奈も苦しむ店主を捨ておく事は出来ず、
護国院式の止血術を施した後、

「すぐに病院にいきますからしっかりして下さい!」

と町医者に駆け込む。

<町医者>
(BGM:08 Make me funky)
扇奈が駆け込んだ病院には、というより、
町医者と言った方がやや正しい病院には
一見して凄腕とわかる医者が患者を診察していた。

その病院は一軒家に多少毛が生えた程度の規模の
年代の経た木造建築物であり、
窓ガラスはところどころひび割れており、
床もギシギシと不安げな音を立て、
薬などの医薬品なども年代の入った代物、
そして医療設備もお世辞にも整っているとは思えない、
儲けとは無縁の場末の診療所とさえ言える。

それとは裏腹に診療所には大勢の患者で
ごった返しになるほど賑わっており、
しかし医者は大量の患者を適切な診察と腕前で
流れる河の如く患者の診察や手当をこなしていき、
その診療所が正しく
富田町の医の要である事を伺わせる。

そこに扇奈は腕を斬り落とされた
店主を抱えてやってきたのである。

「おやおや……誰かと思えば山鉄ではないか。
 全く日頃からあくどい商売をしておるから
 いつかしっぺ返しがくると思ってはいたが、
 言わんこっちゃ無い。
 それでお嬢さん、何故こんな事に?」

「実は……」

扇奈はここで名前が山鉄と呼ばれた店主との間で
起こったイザコザを一切合切包み隠さず説明する。
医者の態度から察するに、
この山鉄という男は名うてのワルらしい。
それを聞いた医者はため息をつきながら……

「そうか、相分かった。心配は要らん。
 私にかかれば片腕を失ったくらいでは
 どうって事は無いわい。
 それにこやつにとってはいい薬になるだろうに。」

<町役場の労座敷>
(BGM:23 silence)

飯屋での騒動から
数日経った町役場の牢座敷では、
ある重大な目的を持って
蒼生とのぞみと完柳斎が足を運んでいた。

地下の牢座敷とだけあって
雰囲気は果てしなく薄暗く、
埃や塵などの汚れと
地下の水分による湿気、
更には地面を走る溝ネズミや昆虫など
アウトローを収監する空間と言うべき
非日常を包括した空間だ。

そんなところに一体何の目的が?
その目的は目の前の囚人連中に在った。
只でさえ少ない討伐の為の人員の頭数を、
何とかして水増そうと藁をも掴む思いで
収監された犯罪者に対して
恩赦と引き替えにして協力をして貰おう、
という一石二鳥の目的だ。

だが、この目論見はすっかり当てが外れた。
期待虚しくこれと言った逸材どころか
まともに使える者さえ見つける事は叶わない。

何故ならば町役場の牢座敷程度に
パクられている様な連中と言えば、
一般人である警官に
高が知れた微罪で捕まる様な
仕様も無い雑魚の、
平たく言えば小悪党であり、
大悪党や腕の立つ連中は皆
本格的な刑務所にブチこまれているからだ。

今日も何の成果も挙げられない事に
完柳斎は落胆の色を隠せないでいる。

「やれやれ、少しは骨のある奴がいると思いきや、
 ハシの役にも立たん連中ばかりではないか。」

「ええ、そうですね。
 となれば我々だけで賊の討伐を
 行わなければならないという事ですが、
 こうなったら致し方有りません。」

牢座敷に使える者がいるという期待を抱き、
そしてその期待を裏切られた三人は
残念そうに牢座敷をしようとするが、
いや待て、完柳斎の勘がティーンと囁いた。
完柳斎の勘が騒ぎだした原因は……
目の前にあった。

(BGM:27 All The Time)
そこには何と扇奈が収監されて
正座で座っていたのである。
恐らくは傷害の件によるものであろう。

「そこの牢番の人、この女性は?」

「何でも悪徳飯屋の山鉄に絡まれ、
 中華包丁で襲われたという事で
 つい山鉄の腕を斬り落としてしまった、
 という事による傷害罪と伺っておりますが。
 しかし絡まれたにも関わらず、
 山鉄の看病が終わるまでは
 タイーホは待ってほしいと言われまして
 ついさっきここにこられました。」

「看病とな?」

「ええ……絡んで来たのは山鉄なんですが、
 なのに重傷を負わせたのは自分だからと……」

「完柳斎さん、この女性は私の見立てでは、
 かなり腕が立つと見えます。」

「蒼生さんもそう見えるか?
 腕が立つ上に性格も悪くはナイン。」

完柳斎の目はにわかに色めき立っていた。
何故なら美少女が前に……じゃなかった。
牢座敷での人材の発掘とスカウトという目的が
この土壇場に来て達成出来るかも知れない、
と考えたからだ。
しかも相手は超一流の剣士。
これで色めき立たない方がおかしい。

「不躾で失礼する。
 ワシの名は真田完柳斎。
 こちらは沖田のぞみ、
 そしてこちらは京御庭番衆お頭
 四王宮蒼生と申す。」

「京堂扇奈です。こちらこそよろしく。」

「いやいやこちらこそ。
 何でも聞いた限りでは絡んできた
 ヤクザ者の治療をされたとか。」

「とんでもありません。
 自分で負わせてしまった怪我ですから
 当然の事をしたまでです。」

「そうか、ところでどうじゃろうか。
 我々がこの町に呼ばれたのは、
 町や民の平穏を脅かす山賊一味を討伐する為じゃ。
 見たところかなり腕が立つとお見受けする。
 当方の味方は人数が少なく、
 このまま討伐を敢行すれば
 失敗に終わる可能性が非常に高い。
 という訳でどうじゃろうか。
 今度の討伐に是非力をお貸しいただきたい。
 無論ロハとは言わぬ。
 討伐に成功した暁にはそれ相応の対価及び
 今回の事件の不問を約束致そう。」

「山賊…という事は町の人達に
 ご迷惑をかけているという事ですか。
 判りました。不肖ながら私も同行させて貰います。」

そして期せずして討伐軍に強力な味方が加わる。

「討伐の日は明後日じゃ。
 各々それまで心身共に討伐に向けて調整されよ。」

<市庁の市長室>
(大帝国BGM:陰謀の気配)
天辺に位置する市長室を擁する市庁。
それは見た目から中身まで税金を
ふんだんに使われたと思わしきものだった。

見た目の巨大さのみならず、
壁からナニまで材質が並のものではない。
無論実用性にも富んでおり、
いざとなれば要塞としても流量が可能だ。

そして市長室では部屋の主である
ステッセル=ロマノフがどどーんと
悪役のテンプレと言わんばかりに
市長の椅子に偉そうにふんぞり返っている。

そのステッセルは今とある
重要な密談をしている最中だ。
そしてその密談の相手こそが
目の前で胡麻すりポーズをとっている
悪徳商人・茸山。

ライオンマインドと商談をしている筈の
茸山が何故ライオンマインドを
討伐しようとしているステッセルとも
通じて密談をしているのかについては、
悪徳商人の二枚舌或いはスパイという事で
十二分に説明は付くだろう。

そして金になれば誰にでもつくというのも有る。
元々悪徳商人というのは主義主張よりも
銭になるかならないかが判断基準なのである。

「という訳でございまして。
 ライオンマインドの注文してきたのは
 約100名が数ヶ月戦えるだけの
 長期保存用食料に量産型の防具一式、
 そして武器ででございます。」

「ふむ、成程な。御苦労だった。」

「ところで町長が揃えた討伐軍に
 これらの情報を提供しなくても宜しいので?」

「一向に構わんよ。
 私の目的はキースを
 町長から失脚させる事だからな。
 討伐軍とライオンマインドを
 噛み合わせて失敗をさせ、
 それを口実に町長一味を失脚させた上で、
 今度は私が弱り果てたライオンマインドを
 完膚無き迄に討伐して手柄にする。」
 
「しかしもし万が一討伐軍が
 ライオンマインドを退治した場合は
 いかがなさいますので?」

「その場合は討伐軍に何でもいいから罪を着せて
 討伐をすればよかろうなのだ。」

「成程、市長も中々抜け目の無いお方で。」

「事が成った暁には茸山には
 次期町長の座をくれてやろう。」

「ははー!ありがたき幸せ!」

こうして悪企みの夜は過ぎていくのであった。
銀幕の時代劇の悪役になればさぞや成功しただろうに。
全くもって惜しいものだ。

<討伐軍陣営>
(大帝国BGM:諸国跳梁)
一方討伐軍の陣営に視点を移してみれば、
蒼生ら四人及び約二十数人の特体生から成る
討伐軍が本営のテントで軍議を開いていた。
普通こういう軍議は対して意味がないものであるが、
こういうのは開く事に意義があるのであろう。

そして皆が持っている斥候によってもたらされた
ライオンマインドの情報によれば
首領アルカネーゼ=ライズ
副首領エレナ=フラワー
主力 セキワケ
構成員 100名

そして月山の地図を見てみれば……
周りには河川や沼地に覆われ、
中峰は獣道や森林で覆われ、
そして頂上には堅牢な館がそびえ立つ
難攻不落の様相を呈している。

元来城攻めは寄せ手は守り手の数倍から
十倍の兵力を兵力を必要とする作戦であり、
月山の如き堅牢な要塞を相手取るともなれば
なおさらだ。

「ともなれば兵糧攻めしか無いのでは?」

「いや、相手が籠もっているは城塞と言っても山だ。
 自給自足くらいは出来るし持久戦は意味は無い。」

「それに長引けば市長のステッセルが
 どんな無理難題言いがかりをつけてくるか
 皆目見当がつかん。」

「かと言って内通者を出すにしてもつては皆無だ。」

「ともなればやはり短期決戦か。」

小一時間の小田原評定を経ても
なお妙案は欠片も浮かんでこない。
それもその筈。

ステッセルは最初からキースの失脚目当てで
ライオンマインド討伐を要求してきたのであるから。
最初から無理ゲーなのであるから
妙案もクソもある筈がない。

「……ここは陽動作戦による
 各個撃破しか無いと思います。」

実り無き軍議の最中。
ふと思い出すかの如く蒼生の一言が。
皆が藁を掴む思いで蒼生を見ると、
その表情には確たる自信が見て取れる。

「陽動……作戦……ですか?」

「まずは四人くらいの少数で交戦して
 敵の一隊をおびき寄せてからそれを
 残りの約二十名で叩く作戦です。
 これらの作戦で敵を各個撃破していけば
 数の問題は解決出来ると思いますが。」

「成程。難易度は高いがハマれば効果的だ。」

「だがそれを誰にする?
 たった四人で囮役を務めるとなれば
 かなりの危険を伴う事になる。
 この大役を務める者は……」

「まずは俺が行こう。」

「ならばこのバードも。」

約二十人のうちからまず
流れ者の特体生ヤラセと
隻腕の剣士バード=リスフィが名乗りを上げる。
本編の汚名挽回ではなく返上になればいいのであるが。

「ならばワシもいかねばなるまい。」

「あ……あの、ケホ、ケホ…私も…行きます……」

そして完柳斎とのぞみも自ら志願して
囮となるべく別動隊に名前をつららららぁ。

「別動隊は決まりましたね。
 では私が率いる本体は
 隠れるのに容易な場所に
 身を潜めておきます。」

「それから出撃する際には各々
 数日分の食料を携帯して下さい。
 恐らくは数日間のうちに
 決着が付くでしょうから。」

そう言うと扇奈は横に置かれてある
頑丈そうな木箱を馬鹿力で無理矢理こじ開ける。
するとどうであろうか。
木箱の中身には全員分の携帯食料が
くまなく積まれているではないか。

討伐軍がそれぞれ携帯する携帯食料、
それを提供するのはこの男・茸山だ。

ご存じの通り茸山は討伐軍にライオンマインド、
そして市長革と三者を渡り歩いている二股……
いや…三股膏薬の男だが、
読者の神の視点からものを
見る事が出来ない扇奈達は、
それらの事情は一切合切知らない。

「ながらくお待たせしました。
 私茸山商会の会長茸山ともうします。」

「討伐軍の暫定指揮者四王宮蒼生です。」

「キース町長kらお聞きとは思いますが、
 今度の討伐におきましては各々方が
 それぞれ数日間の携帯食料を携帯された上で
 出陣されるとの事。
 そこで当社の携帯食料をご指名されましたので、
 ただ今口座に入金を確認して
 持参して参った次第でございます。」

「それはそれは社長ご自身のご足労、感謝しますぞ。」

「ちょっっといいかな、社長さん?」

まった。ここで物言いin。
その物言いをつけてきたのは、
フリーの女冒険家ミーナ=トリントだ。

「ななななななななんですか?
 べべべべべつに消費期限切れの不良品を
 偽って売っている訳ではありませんよ。」

「いや、そうじゃないんだけどね……
 別に貴方を疑う訳ではないけど、
 少しだけ毒味をさせてほしいだけよ。」

「ほっ…何だ、そうですか。」

想定外のミーナの物言い、
それに茸山は心底ビビっていた。
もしかして自分の三股膏薬が
バレてしまったのではないかと。

そしてそれが杞憂に過ぎなかった事、
そしてもう一つの事について安堵を得ていた。

そのもう一つの事とは……
実は当初茸山は独断で
遅効性の毒を携帯食料にマジェマジェし、
討伐軍の弱体化をも図っていた。

しかしもし当初の計画通りに毒を仕込んでいた場合、
ミーナの毒味で全てが台無しになるところか
自分の裏切りも露呈してしまう事になるからだ。

「何も異常はなさそうね。」

茸山が、心の底からホッとした。

<月山のふもと>
(BGM:23 silence)
明星の月山のふもとはまさしく
嵐の前の静けさとでも言うべき
静寂さに支配されていた。

辺りを包む霧からは鳥類や蛙などの
鳴き声などは一切流れてこず、
討伐軍にとって奇襲をかけるには
またと無い好機が訪れている。

だが完柳斎達はそれでも油断はしない。
あくまで自分達の目的は敵をおびき寄せ、
それを本体で各個撃破していく作戦、
相手が慌てふためいて自分達だけで
やれそうな時でも断じて深追いはせず、
相手をおびき寄せる事こそが任務。
そう深く認識している。

情報によればライオンマインドの見張りが
駐屯している櫓はもうすぐだ。
逸る気持ちを抑えつつ一行は
櫓に近づき近づきそろりと近づく。

だが変だ。妙に変だ。完柳斎の勘がざわめく。
明朝で敵はまだ戦闘態勢を取ってないとは言え、
余りにも静かでかつ人の気配がしない。

「ふむ……これは確かにおかしい。」

長年培ってきた完柳斎の霊感山勘第六感が
最大限の音量で完柳斎に対してしつこいまでに
警報を鳴らしまくっていた。

「もし他の20人の中に内通者がいるとすれば、
 この作戦はものの見事に失敗する事となる。
 となればこの事を本体に……ゲーッ、セキワケ!!」

(BGM:07 confront the enemy)
しかし完柳斎の勘も時既にお寿司。
セキワケ率いる山賊特体生十数人が
周りからわんさと姿を現した。

「落ち着け、落ち着くだ……。
 まずは側のヤラセとバードの様子を……
 見た限りでは現在の状況に対して
 想定外という表情で慌てふためいておる。
 まずはヤラセとバードではなかろうから
 内通者候補から外しても問題はあるまい。」

この圧倒的窮地に立たされても
完柳斎の冷静な状況判断は寸毫も狂わない。

「残る人数は18名……しかしあの時、
 怪しい言動をした者もいなければ
 怪しげな履歴の者はいない……
 となれば一体何者が……待てよ…」

完柳斎はありったけの思考力を巡らせ、
陣営内に対して24人の他にも
この作戦を知り得た人物の事を網羅する。

厩番……?いや、違う。
厩は陣営から遠く離れており、
そして門番は更に遠くに離れており、
陣営内の話を耳に入れる機会は皆無。

夜食の業者?
いや…夜食の業者は軍議の直前に
夜食を届けてからすぐに帰った筈。
ならば携帯食料を用立てした茸山か!!

ならば話は早い。
その疑惑の人たる茸山を
問いつめて真意を正し、
今後の対策を立てるのみだが……
その前に目の前ならぬ周りの敵を
どうにかして退けるのが当面の問題だ。

のぞみとヤラセとバードは
何とか態勢を立て直そうとするものの、
数倍の敵を相手にしては攻撃は無論、
まともに防御する事すら叶わない。

要するに文字通り一人で数人を相手取るので、
自然と袋叩き状態になる訳だ。

現状ではこいつらを全滅させるは無論、
現場からの撤退すら不可能となると、
後続の本体が異変に気づいて
突撃してくるまで持たせなければならぬ。

「のぞみ!ヤラセ!バード!
 ここは一端一カ所に集まって
 互いの後方と左右を固めた上で
 本体が来るまで持たせるのじゃ!!」

「は……はい!」

「おうよ!」

「判った!!」

四人で互いの広報と左右を固め、
そしてヤラセは懐の硝煙弾を上空に放ち。
後方に位置する本体に異変を知らせる。

<討伐軍本隊>
その頃扇奈と蒼生率いる本隊は別行動が
ライオンマインドをおびき寄せてくるのに備えて
待機していた……と思いきや、
ここでも予期せぬ戦闘が始まっていた。
敵はライオンマインド……ではなく、
所属不明のアウトロー連中だ。

ジャンキー・ビーメ的なヘアースタイルに
トゲトゲ肩パットにバイクにこん棒に……
世紀末から出てきたヒャッハー揃いだ。
ライオンマインドの構成員は
首領を始め全て女性という事なので、
こいつらはライオンマインドとは違う所属の
敵である事が見て取れる。

もっとも扇奈と蒼生を含めた本隊だけあり、
ポッと出の有象無象の
アウトローなぞに負ける筈もなく、
多少は手こずったもののものの
見事に撃退に成功する。

だが扇奈と蒼生の表情は一向に暗い。
何故ならばいきなり出てきた
アウトロー連中との戦闘は
本来ならば存在すらしていない
全くの想定外の戦闘であり、
その上別動隊の異変を知らせる硝煙弾を
今し方確認したばかりだからだ。

「蒼生さん……あの硝煙弾は?」

「恐らくは別動隊に何がしかの異変が
 起こったという事でしょう。
 こちらにも所属や正体不明の敵が
 何の前触れも無く襲ってきましたし、
 これは何か裏があると見て間違いありません。」

「となるとキースさん…はおそらく
 こういう小細工はしない人でしょうし、
 キースさんっと険悪な仲の市長ならば……」

「なるほど……」

「事の真相を調べる事は無論だけど、
 早く別動隊の応援に行かなくてもいいの?」

味方の一人、ミーナの助言が入る。
確かにミーナの言う通り今は陰謀の確証を掴んだり
市長一味の暗躍を調査する事よりも、
別動隊を救出する事や態勢を立て直す事が先決だ。

「確かに今の状況ではそれが先決の様ですね。
 では皆さん、行きますよ。」

「判ったわ。」

(BGM:32 terrible beat @)
そうと決まれた決断は早い。
別動隊を救わんものと蒼生と扇奈率いる本隊は
疾風の如き行動力にて準備を整え行軍を開始する。
後に残るは無人の陣営……否、
無人の筈の陣営で怪しく蠢く人影が一つ。
その人影の正体は……悪徳商人茸山だ。
やはり完柳斎の直感山勘第六感は当たっていた。

茸山の慣れた手つきが無人の陣営の中を
くまなく家捜しする事十数分……
途端に茸山の顔が気色に満ちあふれる。

そこには茸山の捜し求めていた
作戦の一切合切を示したメモが
無造作に置かれていたからだ。

「何々……もし各個撃破の作戦が失敗した場合は、
 全力を、追ってライオンマインドに当たるべし、と。
 成程……この情報をライオンマインドに持っていって
 アルカネーゼとエレナに本営を急襲させれば
 帰投するところがなくなる討伐軍は全滅、
 ライオンマインドも討伐軍と当たって満身創痍。
 後は市長の手勢でライオンマインド討伐の手柄は
 労せずして我々のものに……」

<別動隊>
(BGM:05 Dash! To BattleA)
一方別動隊の四人は衆寡衆寡敵せず、
善戦こそすれかなりの手傷を負っていた。
いかに手練とは言え四人で十数人を相手取る事は、
無理ゲーにも程がある。

だがそこに窮地に追い込まれし四人に救いの手が。
朱鷺の音と共に霞掛かった空間から
つい先程出陣した討伐軍の本隊が
ようやくやって来たのである。

<ライオンマインドの城塞>
一方ライオンマインドの本拠地、
そこにいるアルカネーゼとエレナは
討伐軍の襲来の一報を聞き、
自分達も一隊を率いて討伐軍に当たらんものと
準備を整えていた。

しかしそこに現れたのは……
茸山の使いの者だ。
どこから侵入してきたのかという
疑念を持たせる暇もなく使いは話す。

「茸山の旦那からの使いです。
 只今討伐軍は全軍こちらに向かっているとの事。
 そこにアンタ方が少数の一隊を率いて
 奇襲をかけて本陣を乗っ取れば
 戦わずして討伐軍に勝てますぞ。」

そして茸山の言づてを二人に伝えた後、
使者はとっとと霞の如く去っていく。

「どう思うよエレナ?」

「どう思うって?またとねえチャンスじゃねえか。
 情報通りならば奴らの本陣に殴り込んでしまえば
 戦わずして勝利はこっちのもんだ。」

「じゃねえってんだよ。
 何つーか、怪しくねえかってんだよ。」

「確かに出来杉とい言っちゃあ出来杉だ。
 じゃあ陣営を強襲するのはおれ達二人だけにして
 残りの面々は用心の為に城塞に残しておけば
 いいんじゃねえか?」

「成程…単に空の陣営を乗っ取る為だけに
 これだけの手勢はいらないからね。」

<別動隊>
別動隊に目線を移してみると、
悪戦苦闘の四人に対してやっと
本隊がやってきて目の前の敵を蹴散らし、
完柳斎ら四人が人心地ついている。

だが流石にまだ油断はしていない。
何故ならば退けた敵はまだ見張りにすぎず、
その敗退を聞きつけた敵がそろそろ
やってくる可能性は非常に高いからだ。

「何やら手違いがあって当初の作戦と
 異なる行動を取らせてしまった。
 すまんのう、ヤラセにバード。」

「いや、その事はどうでもいいんだ。
 ところで完柳斎さん、のぞみさん、
 今回の作戦は何かおかしいとは思わないか?」

「おかしいとは?」

「いかに敵が油断していなかったとは言え、
 今回の作戦は不自然なまでに敵に行動を
 予測されている様な気がしてならないんだよ。」

「ふむ、確かにな。
 そう思ってワシは今回の作戦に
 関与している者のうち、
 何者かがライオンマインドに
 通じていると見ている。そやつは……」

「茸山!!」

期せずして全員がハモる。

「確かに茸オヤジならば動機は腐る程有る。
 しかも内通先……というよりは
 真の所属先は恐らくは市長側かと。」

「ふむ……市長側か。
 確かに異常なまでの討伐の催促といい、
 町長側との確執といい、
 疑うべき点は無数に存在る。
 ならば今回の作戦は皆
 向こうに読まれていると見て
 間違いはないであろうな。」

「心配は無用。
 既に本陣に偽りの計画のメモを置いてきた。
 恐らく内通者はそれをライオンマインド側に
 知らせている頃だろうし。」

「偽りの……計画書……ですか?」

「我々が一丸となりて総攻撃で
 月山を責め立てる作戦だ。
 そうすればライオンマインドは
 全力を持って我々を叩きに来るだろう。」

「ならば蒼生さんと扇奈さんが密かに単独行動で
 がら空きの敵の砦に対して奇襲をかけ、
 乗っ取ってしまえばよいという事だ。」

「成程な……その間に我々は敵の視線と矛先を
 お二人からこちらに向けさせると。」

「この役目は非常に困難なものになるけど、
 引き受けてくれるか?」

「ああ、構わぬよ。どうせ老い先短い身じゃ。」

「こっちもいいぜ。」

「そ……その、気をつけて下さい……。」

「ただ早く帰って来いよ。」

ヤラセの提案に対して完柳斎達は快く引き受ける。

「では参ります故、皆さんご自愛を……!!」

こと闘争においては格下が
格上の周りを回る様に動く。
何故ならば格上は用意に格下に隙を見せ……
いやこれは……違う!!

これは統率された狼の如く敵を狙い食らいつき、
そして屠り去る形象剣の一種・壬生群狼剣!!
殺陣{タテ}のリズムが踊り狂い、
確実に敵をしとめる集団殺法だ。

一人一人の戦闘力では完柳斎達には及ばないが、
こうして連携をとる事により、
自分よりも格上の相手に対しても
互角以上に渡り合えるのである。
そしてこういう群れ相手に無双が許されるのは
一部のトップクラスの強者くらいのものだ。

(Sシャキーン)
まず一人目が切りかかる。

(SEキンッ)
その斬撃はトーシローと比べればかなり鋭いが、
完柳斎の息には到底及ばない。

だがその攻撃をいなして
反撃の一撃を加えんとした瞬間、

甘い!

(SE斬)
二人目が切りかかる。
そして三人目が「貰った!!」
と更に切りかかる。

一部の隙も見当たらない
完璧なコンビネーショントリオだ。
だがこのまま手をこまねいている訳にはいかない。

もう一度完柳斎は今度は今さっき
二回目の攻撃を仕掛けてきた相手に
攻撃を仕掛けるも……
(SEシャキーン)

今度はさっきの攻撃の三人目が
それを庇う様に反撃を加え、
(SE斬)
残りの二人が更に切りかかる。

完柳斎は考えた。
こいつらは本来三人一組で行動していると。
よくよく考えてみると敵の頭数は
ちょうど三人で割り切れる数だ。

そして三人はそれぞれ役割を分担する様に
特化されているのではなく、
それぞれがどんな役割でもこなせる様に
非常に訓練されている。

つまり攻撃対象を変えただけでは
このコンビネーションは崩せない。
ならば話は簡単だ。

目には目を歯には歯を。
そしてコンビネーションには
コンビネーションを……
と思ったらすでにのぞみ達も
ほかの三人組に苦戦していて
とてもコンビネーションを
組むどころではない。

ならばどうするか。それは……逃げる!!
まさかトンコするとはと呆気にとられた敵は、
だがさすがに訓練されているせいか
すぐに我を取り戻して完柳斎を追撃する。

だあいかに訓練されているとは言え、
三人の脚力はそれぞれ差があり、
徐々に三人は離ればなれになってゆく。
それを見逃す完柳斎ではない。
というより最初からそれが目当てとでもいうべきか。

(SEザシュッ)
渾身の一撃で相手を叩き伏せる。
これはいわゆる各個撃破だ。
そう悟った時には既に遅い。
残りの二人も抵抗むなしくやられる事になる。

だがこれでもまだ相手は三人減っただけであり、
今の奇策による戦果も焼け石に水に等しい。

一方ヤラセの方に視点を移して見る。
ヤラセの眼前にいるはライオンマインドの
幹部の一人セキワケだ。

ヤラセの姿を認めるとすぐ、
間髪を置かず得物を構える。
ヤラセの得物の剣に対し、
セキワケの得物と言えば
ある意味厄介な得物の一つに
数えられる釘バットだ。

只でさえ棒状の打撃武器は
使い方次第ではひどく厄介なものであり、
更に追加オプションで釘がついている故に、
当たり所が悪ければ釘に肉を引き裂かれる事に。

こいつぁ厄介だ。しかもセキワケは幹部。
他の連中よりも強いのは確かだ。
ならばなるたけ皮膚や布を
相手にさらさぬ様に戦うのみ。

そう判断したヤラセは
低い姿勢でセキワケに近づき、
下方から切りつける。

だがセキワケは釘バットを巧みに操って迎撃、
ヤラセの刃は巧みに釘の部分で
梃子の原理の如く止められている。

フン!!

釘に絡まった剣を取るタイムラグを逃す事なく
セキワケのごっつぁん張り手がヤラセに炸裂。
この女、強い。
釘バットによる攻撃だけでなく徒手空拳でも。

そして体勢を整える為にヤラセが生んだ隙。
それすらセキワケは逃さない。
釘バットでホムーラン!!

いや、それは辛うじてかわした。
というべきか偶然の産物か。
ヤラセが姿勢を整えるのが
数コンマ遅れたが故のエスケープだ。

それを逃さずヤラセのキックが炸裂。
セキワケとの間に間合いを設ける。
そして剣と釘バットの鍔競り合いと続き、
やがて火花散らすチャンチャンバラバラの
チャンバラに発展する。

ここまでの展開はほぼ互角、
だが完柳斎達は3on1の戦術に苦戦しており、
他の名無しさん@特体生の面々も言うまでもない。
と思った時だ。
いきなり討伐軍とライオンマインドの激闘の前、
予期せぬ招かれざる客が……

<月山の裏の獣道>
その頃月山の裏の獣道では密かに
アルカネーゼとエレナが討伐軍の本陣を奪取せんと
密かに進軍を開始していた。

アルカネーゼとエレナの行く道は
普段は地元の猟師でも忌避するかの如き
危険がデンジャラスな裏路地の中の裏路地だ。
夜は獰猛な野獣達や野党達が森の中を蠢き、
更には危険な地形や植物が牙を剥いている。

そして山の中腹まで来た時だ。
二人の目の前には招かれざる客が二人。
それは敵の中核をなす強豪二人、
京堂扇奈に四王宮蒼生だ。

(BGM:32 terrible beat A)
この予想だにしていなかった珍客に対し、
アルカネーゼとエレナの
二人の強者は一瞬慌てるものの、
至極冷静に今の状況について分析を開始する。

今の自分達は茸山の提供した
情報に従って行動している。
討伐軍の本陣まで無人の野を行くが如く進撃して
無人の本陣を戦闘無しで乗っ取る手筈だ。

なのに今自分達の目の前にいるのは
本来ならば存在しない筈の扇奈と蒼生だ。
この状況は何故にWhy?
その原因をエレナは考える。

一つ目の可能性は茸山が心変わり等の理由で
偽りのガセ情報を掴ませてきたという事だ。

二つ目の可能性は茸山の情報とは無関係に
目の前の二人が予想外の行動を取ってきたという事。

そしてもう一つの情報は茸山のアホタレが
ガセの情報を掴まされたという事だ。

だがそんな事は目の前の二人を
どうにか退けてから考えればいい。
そしてその思いは目の前の扇奈と蒼生も同様だ。

今は余計な事を考える事無く
目の前の二人の障害を排除する事。
これが今の両者に共通して所持している目的意識だ。

「お聞きする必要は無いと存じますが、
 貴女方がライオンマインドの首領格、
 アルカネーゼさんとエレナさんですね?」

「だったらどうするよ?」

「どうするか……ですか。
 とりあえずは速やかなる投降を求めます。」

もちろんハイJudそーですかと
気の荒い二人が素直に応じるわきゃー無い。

「そんなに投降してほしけりゃ力尽くでやって見な!!」

二人はあくまで抗戦を続行する意志を示す。
言うまでも無いが素直に投降するという選択肢を
ハナッから想定外にしていた二人は

「ならば致し方有りません。
 力尽くでも我々に同行して頂きます!!」

と二人は同時にハモって刃を抜く。
対戦方式は2on2の決闘だ。

<扇奈&蒼生VSアルカネーゼ&エレナ>
(大帝国BGM:一斉射撃−伊)

激闘の火蓋を切った先陣はエレナの轟鎚だ。
小賢しい戦術や技術などそれごと
一纏めに粉砕してしまうが如き勢い。
その勢いに任せて振り返って
力任せに降ろしてきた巨大な鉄槌に
蒼生は寸での紙一重で見切ってかわす。

(SE斬ッ)
だがここで忘れてはならない。
この対戦の方式は2on2である事を。
乾坤一擲の初撃が交わされて隙だらけのエレナを、
扇奈の容赦の無い斬撃が鋭く襲う。

だが蒼生に扇奈がいれば、
エレナ側にもアルカネーゼがいる。
同じ条件だという事も忘れてはならない。
隙だらけのエレナを襲った扇奈の斬撃は
アルカネーゼの鎚の柄の部分に
しっかりと防御されている。

梃子の要領で切り返すと
反撃の鎚を喰らわそうとするが、
そこは流石は手練れの扇奈、
残心の構えを忘れてはいない。

「二対二だという事を忘れて貰っちゃあ困るね。」

そしてその勢いを以てアルカネーゼは扇奈に対して
鉄槌のスタンプ攻撃を連続して繰り出す。
しかし鎚というものは高威力と広い攻撃範囲を誇るが、
一方でそれと引き替えに重量と鎚の形態故に叩き落とす、
或いは横に薙ぐといった攻撃手段しか持たないのも事実。
しかしアルカネーゼに限ってはそうではなかった。

アルカネーゼの膂力によって
為し得る攻撃手段が鎚の対空打ち上げ及び
鎚の連続撃ち降ろしという攻撃形態が存在する。
これらの攻撃手段の豊富さこそが
アルカネーゼの強靱さを支えていると癒えよう。
それに加えて超重量の鎚を持ったまま
常人を超越た跳躍による立体攻撃も
二人の強さを支えているのである。

それら鎚に対する刀のアドバンテージは、
小回りが利く事及び素早さや攻撃手段の多彩さ、
それらにあるが、
これらの要素はそれらのアドバンテージを
半ば意味のないものとしてしまっている。
おまけにこの二人は結構
いいコンビネーションを為していると来た。

「どりゃー!!」

そういう手こずっている内に
アルカネーゼ必殺の必殺の二連撃、
アルカスラップが容赦なく扇奈を襲ってきた。
それは渾身の力で振り降ろして来た鎚で
間髪を入れずして打ち上げ攻撃を繰り出す、
怪力アルカネーゼのみが為し得る
二段構えのコンボだ。

アルカスラップ
渾身の力で鎚を振り下ろした後、
間髪を入れず弧月斬の要領で打ち上げる。
空中で22+P 追加で623+P

一撃目は何とかかわせたとしても
撃ち上げの二撃目をどう対処するか……
それは己の身軽さを活かす事だ。
扇奈は打ち上げられる鎚に乗って
その勢いを利用して跳躍し、
打ち上げた体制のまま無防備な
アルカネーゼの背後を取り、
一太刀浴びせる……と思いきや、
アルカネーゼも只者ではなく、
とっさに体をひねって
背中の一番丈夫なところで太刀を受けた後、
何と鎚を手放して扇奈の腕を掴んで
一本背負いをかましたのである。

「くぅっ……!!」

受け身を取ったものの扇奈は地面という凶器により、
少なからざるダメージを追ってしまう。
倒れた扇奈の顔に訪れたはエレナの叩き潰しの鎚攻撃だ。

「トマトジュースになっちいまい……!?」

(SEブワッ)
しかしそのエレナに飛んできて攻撃を防いだのは……
御庭番衆に伝わりし外套だ。

「私を忘れて貰っては困りますね。」

そう言うや蒼生は構えるエレナに
流水の動きで対抗する。
だが流石にエレナも戦い方は心得ている様であり、
無闇やたらと攻撃をする事はせず、
的確に蒼生を狙い鎚を叩き込み、
容易に近寄らせはしない。

エレナはアルカネーゼより膂力が無い分、
素早さや身のこなしや小手先の技に長けており、
蒼生と言えども容易に攻撃を当てる事はかなわない。

そして期せずして鎚と太刀による
激しい撃ち合いが始まる。
鎚は威力こそ高いものの、
棒の部分を狙って撃てば太刀でも
受け止める事は出来るからだ。

しかしただ無策で撃ち合っているだけでは無い。
受け損ねた攻撃等を避ける等して張り合っている。

一方扇奈とアルカネーゼの場面に視線を移すと、
アルカネーゼの攻撃に対して
扇奈が身の軽さを利用してかわしつつ、
執拗に油断無く攻撃の機会を伺う。

だがふと何の前触れも無く
アルカネーゼの攻撃が止まる。
恐らくは肉を切らせて骨を断つ戦法であり、
自分と相手との耐久力の差を考慮した結果の戦法だ。

それを察知した扇奈は
まるで隼の如き素速さと身のこなしで
アルカネーゼを翻弄してその隙をつい……
いや、違う。

まるで散歩でもするかの如き軽やかさだ。
その散歩の如き足取りで
何の警戒も無くアルカネーゼに近づいてくる、

(SEギュウウウウン)
その散歩に対し、アルカネーゼの渾身の一撃が。
アルカネーゼは思った。
この一撃は恐らくかわされると。
そしてアルカネーゼはこうも思った。
その隙を狙って渾身のカウンターが叩き込まれると。
だがそれに耐えきればこちらの勝利ちだ、と。

……だが以外!!
アルカネーゼの初弾は扇奈を捉えていた。
いや性格には柄に近い棒の部分が
脳天に当たっている訳だが。
遠心力の付いた鎚の部分に当たったのであれば、
幾ら扇奈でも即死は免れない。
それを知らぬ扇奈ではなく、
逆に踏み込む事により、
遠心力の小さい棒の部分に
人体の中でも屈指の高度を持つ頭に
当たる様にしたのである。

(SEシャキーン)
そして無防備のアルカネーゼに渾身の一撃を。

「させるかー!!」

だがアルカネーゼも首領だけあって大したタマだ。
気合いと根性で渾身の一撃を耐えきったのである。

今の攻防で互いに致命傷を外したとは言え、
今の攻防で両者共に大ダメージを受けた事は確かだ。
そして撃ち合っていた蒼生やエレナにも
暫く疲労の色を見せ始めざるを得ない。

(BGM:05 Dash! To BattleA)
これは体力と根性の勝負に持ち込まれるか……と
思われた時だ。
いきなりセキワケ及び、
完柳斎らが率いる両軍がやって来た。

「…ていうかおまいら何でここに?」

「変態……じゃなくて大変だよ!!
 ボコスカやり合って疲弊していたところに
 いきなり市長所属の軍・ヘルマン軍が
 アタイらだけじゃなく討伐軍まで
 十把一絡げに攻撃してきゃーがってさ。
 仕方がなく一時休戦して
 ココニトンコして来たのはいいんだけどさ。
 両方疲弊していたから
 大半は奴らにパクられちまって
 両方併せても二十人行くかどうかなんだよ!」
アイキャッチ
キース=ゴールド
貴様は何者だ!?


アイキャッチ
ミーナ=トリント
ぶ…豚小屋出身家畜以下です!!

今まで戦闘の熱気に包まれていた戦場、
その熱気がセキワケによる報告により
瞬時に凍り付いてしまう。
ぶっちゃけ今の状況はヤバいなんてものではない。

現在の戦力は両軍併せて
アルカネーゼ・エレナ・扇奈・蒼生・
のぞみ・完柳斎・ヤラセ・バード・ミーナ
+20数名と戦力としては非常に申し分無いものの、
激戦を経て両方多数の重軽傷者を出しており、
とてもではないがヘルマン軍と
真っ向からやり合って勝てる訳が無い。

「まァなんだ、ここんところは不本意だけども……」

待った、今エレナが立案しよとしている。皆静粛に。

「どうせ砦に立て籠もってもやられる事ァ明白だ。
 ここは敢えて砦の扉を大っぴらに
 開けっ放しにした方がいいんじゃねえの?」

……まるで意味が分からんぞ。

「つまりだな……わざと攻め易い様にして
 敵に場内に罠が仕掛けられてんじゃねえかっていう
 疑心暗鬼を起こさせんだよ。」

「成程……空城の計というやつじゃな。」

「じゃあ善は急げだ。
 セキワケ、早速城門を開けてきな。」

「あいよ。」

<砦の門前>
砦の門を開けてから数刻した頃。
両軍を撃破したヘルマン軍が
勢いよくときの声と共に押し寄せてきた。
士気は高く……というよりむしろ
ヒャッハーモードに突入しており、
それらを率いる将の名は……
ケチャック=バンゴー。

少々……いやかなり疑問がつく、
いや疑問以外の何物でも無い人選だ。
ケチャックは市長の甥という七光り人事で
市長補佐に抜擢されたいわば縁故人事だ。

もっとも縁故人事と入っても、
中帝国の前漢の時代の
衛青や霍去病という例外中の例外も有ったが、
縁故人事は得てして能力に比べて
不相応な人事がなされておるもので、
故に部下から「小便首のケチャック」なる
陰口を叩かれる程の無能な人物だ。

「くそ…部下共め。
 相も変わらず俺っちの事を陰口してやがんな。
 だが今日の戦いで手柄を立てて
 一気に名誉返上しちゃる!!」

それは汚名返上あるいは名誉挽回だ。
汚名返上を汚名挽回を誤用する者は多いが、
名誉返上と誤用する者は
ケチャック位のものであろう。
もっともケチャックなら
名誉返上でも間違い無いだろうし、
そもそもお前に名誉なんてものがあったのか?

そのケチャック率いるヘルマン軍が砦に攻め寄せ、
砦の前にどどーんと開かれた門を目の前にした。

空城の計
兵法三十六計の第三十二計にあたる、
自軍が圧倒的に戦力が少ない場合に使われる戦術。
敢えて自軍の城の扉を開けっぱなしにして
敵を招き入れることで敵の警戒心を誘う計略である。

おそらくはエレナの目論見通りケチャックは
罠が仕掛けられているとの疑心暗鬼にかられ、
トンコをしていくであろう。
体勢を立て直すのはその後ゆっくり行えばいい。

(BGM:18 comical)
「あの〜ケチャックの旦那?」

「あんだよ!?」

「砦の門がすっげえわざとらしく
 ババーンと大っぴらに開いているんですが。」

「見りゃわかんだろんなもんよぉ。
 多分閉め忘れかなんかだろ。
 ナウゲッタチャーンスじゃねえか。
 わざわざ面倒な砦の門が開かれてんだ。
 一気に攻め込んで陥落させりゃあいいじゃねえか。」

ああ、すっかり忘れていたよ。
ケチャックは多少のバカだとは思っていた。
これは真正のバカだ。バカの世界王者だ。
この男の今の台詞は芝居でも何でもない。本音だ。
斎香……もとい蔡和並のオツムを持つケチャックだ。
エレナは計略に掛ける対象を明らかに間違ってしまった。

このまま無策で一気に攻めいられたら
この計略は完全に裏目に出てしまう。

「いやそりゃあ流石に
 あからさま過ぎますぜケチャックさんよぉ。」

「何がジャラホイ?」

「こーまであからさまに攻めてちゃぶ台って感じで
 大っぴらに門を開いているってこたぁ
 中に何か永続罠を仕掛けているに違いありやせんぜ。」

相手に頭のいい手下がいたおかげで
目の前のピンチから逃れ……

「んなもん怖がってどうするバカ!!
 目の前に大手柄がぶら下がっているってぇのに
 手を出さねぇバカがどこにいる!!
 ヤロー共行くぞ!!やっておしまい」

ちりょくいちのしょうへ゛んくひ゛のケチャック
目の前の大手柄という人参に
居ても立ってもいられなくなり、
全軍に突撃を命ずる。
そしてその事により状況は
最悪の方向に向かう事となる。

<砦の中>
(大帝国BGM::一斉射撃−呂)

その頃砦の中では休戦中の両軍が
負傷者の治療や食事で一心地ついていた。
無論ヘルマン軍が空城の計に引っかかって
撤退するという前提での行為だ。

そこに不意に聞こえてきたのは
ヘルマン軍のときの声だ。
聞こえてくる筈の無い敵側の声と姿。

まさかと思い半信半疑のまま
エレナがその声の聞こえる方向を見ると……
ケチャック……この男の姿を確認し、
エレナは全てを悟る。

「大将はまさかあの小便首だったのかよ。
 そりゃあバカ正直に攻めてくる訳だ。」

だがこの最悪の状況でエレナは考える。
策が破れた事よりも目の前の敵をいかんすべきか……
あれ程の軍勢を少なからざる重軽傷者含む20数人で
地の利無く真っ向からやり合うのは
はっきり言って余りにも無謀すぎる。
全員殺られるか犯られるかパクられるのがオチだ。

だがエレナにはとっておきの秘策が存在る。
それは戦略的後方移動、平たくいえば敵前大逆走。

「撤退するのはいいんですが、
 どこに撤退するかとかその後に
 どうすればいいのかの考えはあるんですか?」

無い!!

扇奈の正鵠を射た問いに対する
エレナの忌憚無きストレートな返答が
返ってきた。

「ランアンドシンキング、
 トンコしながら考えるんだよ!!」

無策だ。限りなく無策だ。
一応一組織のブレインとしては如何なものか。
だが扇奈も蒼生も反論はでけない。

何故ならば目の前にはヘルマン軍という
現実の脅威が迫っているという事実が有るのである。

「ならば皆で富田町の中の
 スタインハートという店で落ち合おう。
 そこの店主の鉄仮面は幼馴染みでね。
 しかも数十人かくまえる地下の倉庫がある。」

「ええ。」

「わかりました。」

「では……そこで……」

「落ち合おう。」

<砦の中>
(BGM:23 silence)
「……ものの見事にもぬけの殻じゃねえか。」

ケチャックは空しい勝利に
ブサメンでふてくされていた。
取りあえずは砦の制圧という
一つの目的は達成出来たものの、
肝心のライオンマインドの首領及び
討伐隊の中核を取り逃がしてしまったからだ。

「どうやってオジキに報告すりゃあいいんだ……」

ケチャックは今非常に焦っていた。
あの自分にだけはサッカリンの如く甘く
自分以外には百倍カレーの如く厳しい叔父の事だ。
全ての落ち度を自分に押しつけてくるに違いない。
そしてその焦りは更なる悪循環を生み出す事となる。

「こうなったらオジキに何か言われる前に
 徹底して周りを家捜しするしかねえ。
 おいお前ら!!全員出回りをガサ入れすっぞ!!」

「ちょっと待って下さいよケチャックの旦那。
 全員でガサったら誰がこの砦を守護るんですかい?」

「あ、ああそうだったな……。
 じゃあ手勢の半分を残して半分でガサ入れすっぞ。」

ここでケチャックは戦力の分散という、
あまりにも重大な問題を犯してしまう。
だが叔父の責任転嫁による処罰を恐れるあまり、
それを考慮に入れる事すら無く
ケチャックはガサ入れを強行する。

<富田町・スタインハート>
(BGM:08 Make me funky)
一夜開けた富田町・スタインハート、
そこでは店主の鉄仮面が開店の準備を行っている。
それはいつもの光景。
だがそのいつもの光景に招かれざる客が。
店に逃亡を図ってきたエレナだ。

「あらま、エレナじゃない。
 ていうか何ボロンボロンになってんの?
 もしかして……」

「ああ、そのもしかしてさ。」

「キース町長が討伐隊を
 編成していたとは聞いてたけど、
 もしかしてそれにやられた訳?」

「いや、違う違う。話すと長くなるけど……
 確かに討伐隊の連中はやってきたんだけどさ、
 連中とやり合っていると市の軍勢のヘルマン軍が
 漁夫の利とばかりに押し寄せてきやがって
 討伐隊共々消し去ろうとしやがったんで
 一時休戦してトンコしてきたってところさ。
 そろそろおれの仲間や討伐隊の生き残りも
 ぞろぞろやって来る頃だろうぜ。」

その言葉通りに、
エレナの来訪から数刻もせぬ内に
アルカネーゼと愉快な仲間達や
蒼生ら討伐隊の面々がやってきた。

と思ったら蒼生が思わぬ土産まで
持ってきたではないか。
その土産とは……ヘルマン軍の指揮者、
小便首のケチャックその人だ。

ケチャックを見れば目隠しに耳栓、
そして猿ぐつわをかましており、
秘密保持の点についても
万全の処理を施しているところは
流石の手練と言わざるを得ない。

「で……これがヘルマン軍のボスな訳?」

「砦の近くで私達を捜索しているところを
 見つけましたので、
 逃走ついで交渉に使えると思って
 さっさととっ捕まえました。」

<スタインハートの地下>
スタインハートの地下の
数十人押し寄せても大丈夫な倉庫、
そこではスタインハートで取り扱っている
色々な品物が処狭しと積み上げられており、
その中にはかなり物騒な代物も取り扱っており、
エレナらと親交が有る事を如実に物語っていた。

「で、どうすんのこの小便首?」

「俺は小便首じゃねえええ!!」

鉄仮面の言葉に対して
耳栓と猿ぐつわを外されたケチャックが、
小便首という蔑称にひどく抗議をかます。
どうやら小便首という蔑称は
ヘアースタイルを貶されるのと
同じ位の屈辱の様だ。

「取りあえずは市長のステッセルに対する
 交渉の切り札にはなるんじゃないのか?」

ケチャックの処遇についてアルカネーゼが提案を出す。
その提案とは身内であるケチャックを人質にして
ヘルマン軍を引き上げさせたり逮捕された面々を
釈放させる事と引き替えにケチャックを解放する、
つまり人質交換とでも言うべき交渉だ。

「確かに今こちらが持ち得る
 交渉カードを使う機会は
 今しか無いと存じます。」

人質を交渉カードとした
捕虜交換の要求の提案は
扇奈達もあっさりと賛成し、
ひとまずアルカネーゼが電話で
ステッセルとの折衝をする事となる。

(大帝国BGM:諸国跳梁)
「もしもし。市長のステッセルだな?
 アタシが誰だかという事は言わなくてm」

「新聞や共有主義の勧誘は間に合っているよ。」

「ちょっちょっちょっと待てよこの市長野郎!
 話も聞かねえでハイサヨナラよは無えだろ!!」

「では何だ?とっとと用件を言え。
 こちらは朝食前で空腹モードだからな。」

アルカネーゼの交渉相手たるステッセルは
相手に取り付く島も与えない。
甥が行方不明だというのにも関わらず、
その事について一切気にする素振りすら見せず、
一方的に交渉を断ち切ろうとする。

だがアルカネーゼにしても
ここで交渉を打ち切る訳にはいかない。
何とか高尚に持ち込むべく説得する。

「わかっているとは思うがアンタの甥、
 アホタレ小便首のケチャックが
 行方不明になっているというのは知っているな。
 単刀直入に言えばその小便首を
 こっちで丁重に保護している訳さ。」

「つまりケチャックを返してほしければ
 捕縛したお前らの仲間を釈放しろ…と?」

「理解が早くて助かるよ。
 もう一つの要求は砦から退去……」

「そんな事は私が知った事では無い。
 ケチャックなら煮るなり焼くなり
 お前らの好きにするがいい。
 所詮は縁故人事の役立たずだ。
 死んだところで惜しくはない。
 むしろお前らにまた役人殺しという
 新しい罪を着せれるいい機会だ。」

「え…!?」

アルカネーゼは一瞬耳を疑った。
流石の冷血漢ステッセルと言えども
無碍に断りはしないだろう、
という希望的観測を踏んだ上でのまさかの拒否。

「血の繋がりなどこの乱世では
 何の意味も持たぬわ。」

そして次の瞬間、
無情にも電話は一方的に断ち切られる。
余りにも冷酷非情な対応、
そのあんまりな返答に一同、
何の声も出せない。

そして当の本人たるケチャック、
ショッキングな事実を前にして
その表情をみれば天国から地獄に落とされ、
正にアイアムショックと言った面持ちだ

「ふむ…これは困った事じゃな。
 じゃがこのままこ奴を捨ておいたところで
 何の役にも立ちはすまい。
 ならばいっその事……」

「殺っちまうってのかい?」

「こここ殺すって……じょじょじょ冗談だろ!?
 おおお俺を殺っても何にもならねえよ!
 ……死にたくねええええええええ!!!!」

(SEじょばー)
じょばー、ケチャックが死の恐怖から漏らした。
正に命乞い、正に小便首とはこの事だ。

「いや、そんな野蛮な事はせんよ。
 ただ解放するだけじゃ。」

「解放…!?」

予想外の完柳斎の提案、
それに対してエレナは疑問を投げかける。

「捕虜になったケチャックが無事に帰れば、
 ケチャックは必ずや捕虜交換を断られた腹いせに、
 十中八九その事を周りに喧伝するであろう。
 やがてステッセルの部下も
 次は自分の番ではなかろうかと
 不信を抱く者も出て来るであろう。
 やがてそこにつけ込む好きが出てくるもの。
 ここから遠く離れた場所で目隠しと耳栓を取って
 放逐すればこの場所もバレる事は無い。」

そのエレナに対して
ケチャックに聞こえない様に真意を語る。

<市庁>
そして数刻後……取るものも取りあえずという風体で
逃げてきたケチャックが市庁に駆け込んできた。

「ああ、帰ってきゃーがったよアイツ。」

「ホント悪運だけは強いんだからなぁ。」

聞こえぬ様にボリュームを下げた職員の陰口の中、
帰還したケチャックを迎えるべく
市長室からステッセルが現れる。

しかしその表情は一目見ただけでも
不快かつ険しい表情に彩られてた。
少なくとも甥が無事に戻ってきて
よかったハッピーという表情ではない、
という事だけははっきり言える。

「ケェチャックゥ…確かお前は
 ライオンマインドの残党に
 捕まっていたはずだよなぁ。オイ。」

「オ…オジキ……」

「なのに何故捕虜にされた筈のお前が
 ここに帰ってこれたんだ?
 しかもライオンマインドの首領二人と
 討伐軍の中核まで逃がすという失態まで犯して
 よくもオメオメ私の前にホイホイと
 その馬鹿面を出してこれたものだ。
 この小便首めが……!!」

「ちちち違うんだオジキ!!俺の話も聞いてくれ!!
 俺もよく判らねえんだけどあいつらは
 何故か俺を解放しやがったんだよ!!」

「解放?解放する理由も無いのに何故だ?」

「そんな事俺にも判らねえや。」

「それはお前が箸にも棒にもならん
 使えん奴だからではないのか?」

ステッセルの血も涙もない冷酷な態度に、
その態度に不満を漏らしつつも
ケチャックのちりょく1のオツムは
まともに反論も出来ないでいる。

「クッ…じゃあ俺からも聞くけどよぉ、
 何でライオンマインドが
 俺の解放交渉を持ちかけてきた時に
 何故アサーリ交渉を打ち切りしたんだよ!!?」

「お前如きの為に折角大量に捕らえた捕虜を
 何故みすみす釈放なんぞせねばならんのだ?」

「……!!」

ステッセルの悪意すらない一言で、
これにより周りの体感空気が数度下がった。
もし自分が何らかの事情で
自分達が人質になってしまった時だ。

そうなったとしても恐らく
悪人のステッセルは助けてくれない。
それどころか罪を擦り付けられるかも知れない。
それを知った周りの面々の心境が
周りの空気を心理的に下げたのである。

「ケチャックのバカは一応市長の為に
 戦って捕らえられたのに交換に応じないのかよ。」

「懸命に戦って捕らえられた時に
 助けて貰えなかった部下の気持ちを
 全然理解っちゃいねえし。」

「俺…やる気をなくしそう。」

叔父と甥の見苦しい言い合いは更に続く。

「ケチャック、もしかしてお前。」

「あんだお!?」

「ライオンマインドの残党に何か含まされて
 スパイ目的でやって来たんじゃないのか?」

「そそそそんな事ぁねえよ!!
 流石にそりゃあ酷ぇぜオジキ!!」

「いいや……怪しい。怪しいぞ。
 第一お前が拷問どころか詰問すらされずに
 何事も無く帰ってきたのがおかしい。
 お前スパイだろ!そうに違いない!!
 いや!そうに決まった!!誰ぞある!!
 この小便首を牢獄に閉じこめておけ!!
 後で捕虜共と共々に処刑してやるわ!!」

「し、しかし…」

あんまりなステッセルの無体な命令だ。
その命令に対して日頃無能なケチャックを
軽蔑していた連中でさえも流石に
命令に従うのを躊躇していたものの……

「しかしもかかしもあるか!
 早くせんとお前らも同罪だぞ!
 とっととこいつを牢に叩き込んでおけ!」

その躊躇に対して何の遠慮仮借無く
ステッセルは怒鳴りつける。
その容貌、いつものクールなステッセルではない。
おそらくは本性の一端を表したというべきか。

そしてそのステッセルの背後にいる
巨大な人型のそれは闘将と呼ばれる兵器、
その名を闘将バステト。

闘将は都市のBパワーを動力としているが故、
都市から離れる事は出来ないものの、
並の特体生ならば無双出来る戦闘力を所持しており、
ステッセルには地位の関係は無論、
実力的にも反論出来ないのが実状なのである。

<スタインハート>
(BGM:08 Make me funky)
一方その頃のスタインハートは
通常営業を開始していた。
鉄仮面は努めて日常の営業に努め、
客の誰もがエレナ一行が
潜伏している事には気付いてはいない。

そしてその顧客の中には扇奈によって
片腕を切り落とされた山鉄が鉄仮面と
商売交渉を続けている。

「久しぶりね。またボッタくってるの?」

「へっ相変わらず口の悪さは減らねえな。」

「ていうかその手はどうしたのよ?
 やけに身軽になっちゃってからに。」

「いや……これはだな……」

目があざとい鉄仮面は……いや、
別に鉄仮面だけではなく
誰でも気付くだろうが、
山鉄の隻腕の事を問う。

それに対して山鉄は事細やかに
今までの詳細を鉄仮面に説明する。

「そういう事ね。
 まあアンタにはいいクスリに
 なったんじゃないの?」

「まあそう言われりゃそうだわな。
 悪いのは騙くらかして
 刀を取ろうとした俺なのに
 付きっきりで手当をして
 排泄物の世話までなっちまってさ……あ」

「あ……」

その時山鉄の視線が合った。
その視線の主は店の手伝いで
作業をしている扇奈その人だ。

「扇奈さん…だっけ。
 名乗る機会は無かったけど、
 おいらぁ山鉄ってんだ。
 この町じゃあ鼻つまみ者のワルでさ。
 マジですまねえ。」

腕を斬り落とされる前までとは別人28号の様な
憑き物が落ちたかの様な態度と表情で山鉄は謝罪する。

「手が一本無くなっちまって
 目が覚めた様な気がするんだ。
 ありがとうよ扇奈さん。」

「気にしないで下さい。貴方らしくありませんよ。」

「それはそうと気をつけておくんなさい。
 今日から町中に市から派遣されてきた官憲が
 至る所で警邏をしくさっておりやすぜ。
 それとこれを張りまくってやがります。」

山鉄が懐から出したもの、
それはアルカネーゼ達の手配書のみならず、
扇奈達の手配書まで勢揃い、
手配書のロイヤルストレートフラッシュだ。

そこには扇奈達討伐軍がライオンマインドと
通じてつるんだ末に寝返ったという内容の、
でっち上げの無実の罪が詳細に書き記されており、
キースの任命責任についても言及されていた。
内容についてはよくここまで考えつくものだ、
と感心する程に詳しく書き込まれている、
と誰もが思う程の酷い内容だった。

ステッセルは政治的な才能は
ぶっちゃけ皆無だ。
だが政敵を蹴落とすという
政争に対する才能は人一倍旺盛。
しかしこれは為政者としては
最低最悪の部類に位置する人種と言える。

優れた者はステッセルの陰謀で貶められ、
その結果ステッセルとその取り巻き共のみが
政治の中枢に居座る事となる。

実際ステッセルが市長となってからは、
ヘルマンの市政は乱れに乱れた上に
その原因としてライオンマインドが
やり玉に挙げられている状況だ。

そして富田町がヘルマン市に
吸収合併されるという事になれば、
町も市と同じ運命を辿る事は必須。
これだけは何としても避けなければならない、
というのが町の衆の一致した考えだ。

「けどどうやって今の状況を覆すのよ?」

だがどうにかしなければならぬ、
という危機感と想いこそあれど、
その為に何をすべきなのか、
ステッセル失脚の為の手段とその後のビジョン、
その為の人材や人脈や物資……
つまりは計画から明確な目的や人材やビジョン迄、
何から何まで枯渇しているのである。

「取りあえず素破に聞かれちゃ
 まずいから地下に行こっか。」

<スタインハート地下室>
(大帝国BGM:御前会議)

鉄仮面に導かれてやって来た
スタインハートの地下には、
既に本格的な指令室らしきものが備わっていた。
どうやら鉄仮面は既にこの様な状況になるのを
想定してライオンマインドとも水面下で繋がる等、
色々と精力的に活動を行っていたのである。

そして指令室にはライオンマインドと
討伐軍の残存組のみならず、
表向きは町の名士として
知られている者が約十数人、
そして何と現町長のキースまでもがいる。

そのメンツの豪華さに一瞬山鉄は目眩すら覚え、
「自分なんかが来ていいところではない
 場違いなところに来てしまった」
とまで感じている。

「ちょちょちょちょっと待って下せぇよ。
 何で町長までこんなところに!?」

「こまけぇこたぁいいんだよ。
 まずは我々が置かれている状況について
 新参の皆に把握をして貰うぜ。
 今現在ライオンマインドと
 ライオンマインドに通じているという罪で
 討伐軍を粉砕したステッセルの人気は
 鰻登りのストップ高だ。
 次の市長選挙迄の期間も短く、
 今や正攻法で奴を失脚させるのは無理難題だ。」

「じゃあどうすればいいんだよ?」

「そうじゃな……正攻法で駄目ならば、
 相手の懐に飛び込めば良いではないか。」

完柳斎の提案が入る。

「懐?」

「あれ程のワルならば恐らくは市庁に
 腐る程悪事の証拠がある可能性は非常に高い。」

「だけど市庁は言うまでもなく
 頑丈な警備で固められていて
 とてもじゃねえけど突破でけねえよ。」

だがキースの反論に完柳斎の提案も
一種の机上の空論として片づけられようとしている。
ところがどっこいその時だ。
そこにヤラセとバードとミーナが立ち上がった。

「じゃあその警備の軍勢をおびき寄せればいい。」

「我々残存組をおとりとしてアルカネーゼら
 寄りすぐりの少数精鋭で隙だらけの本庁に
 忍び込んで悪事の動かぬ証拠を分捕ってくんだよ。」

「という訳でここは私達に任せて下さい。」

「かなり無理が有りそうなプランだが、
 他に手がないんじゃあ仕方がねえ。:

キースの鶴の一声、
それでステッセルの失脚までのプランが
一応は適当ながら組まれる事となる。

だが肝心なのはここからだ。
その強奪プランの詳細はどうするのか、
その担当者の人選はどうするのか、
という問題がすぐ様訪れる。

「まずは市庁に殴り込みをかけるのは
 出来るだけ少数の方がよかろう。
 その方が隠密行動に適している。」


(ぱすてるチャイムBGM:心に秘めた固い決意 )
「では私が。」

「私も参りましょう。」

最初に名乗り出たのは扇奈と蒼生だ。

「けほ……けほ、私も……いきます……。」

「ではこの老骨も同行させて貰おう。」

「アタシ達も参加させて貰うよ。」

「やられっぱなしじゃあワリに合わねぇしな。」

のぞみと完柳斎、そしてそれを皮切りに、
アルカネーゼとエレナも次々に名乗りでる。
こうして市庁に乗り込む
チームの編成はつつがなく行われ……

「いいやここは俺も同行させて貰いやすぜ。」

驚き桃の木山椒の木。
そこにもう一人名乗り出てくるとは
誰も思ってはいなかった。

何故ならその声の主は山鉄。
そのコンディションは片腕を斬り落とされて
数日しか経ってない上に、
両腕が健在だとしても戦力にはならない。

それは山鉄本人が一番理解っている筈。
ならば何故立候補をしたのか。

「おいらぁ前にステッセルが市長になる以前の市庁に
 業者として何度か呼ばれた事があるんでね。
 内部の構造は俺に任せておくんなせぇ。」

どうやら戦闘人員以外としての立候補らしい。
よく考えてみれば市庁の中身は誰も知らず、
そのまま突っ込んでいっても
無駄に時間を費やすのがオチだ。

「よろしくお願いしますね、山鉄さん。」

そしてステッセル失脚作戦よりもある意味困難なのが
失脚後のポストステッセルを巡る市長選挙や市政の混乱、
そして選挙後の新体制における市政を担う人材など、
その他細かい事まで含めるととてもではないが
一気呵成という訳には行かない問題だ。

古来より理想はあれど何の計画性も無く
武力のみで膨れ上がろうとする組織は
目的を履き違えたり見失ったりする
乱賊に終わる可能性が高く、
例え目的が成功されたにしても、
内部抗争含む粛清に次ぐ粛清で
後生に前の時の方が良かったと
言われる事は良くある話だ。

「ステッセル失脚後の
 ステッセル派の処遇についてだが、
 我々に降参するならば
 基本的に罪は問わんものとする。
 今は一致団結の念を持って
 市政の再建に当たる時だ。
 市政の混乱の防止については問題は無かろう。
 市庁の収容所にはステッセルによって
 失脚させられた大勢の優秀な者がいる。
 それに新体制下には問題がなければ今回
 雇用した皆に是非とも参加して貰いたい。」

「町長さんの御厚意はありがたく存じます。
 しかし私には戻るところがありますので、
 今回の件につきましては申し訳ありませんが……」

「私にも御庭番衆を束ねる身、
 今回の件は遠慮させて頂きます。」

キースの青田刈りに対し、
まず扇奈と蒼生が各々の理由で
拒否権を行使する。

「いやはやこの老骨が役に立つならば、
 幾らでも力をお貸しいたそう。」

「けほ……けほ……お薬代を頂けますなら……」

完柳斎とのぞみはキースの青田刈りに対して
快く承諾の返事を出す。

「まあここいらが山賊稼業の
 潮時だと考えていたところだけど……」

「一応蒼生にスカウトされている身なんでね。」

続いてアルカネーゼとエレナは
蒼生についていく意志を示す。
そして他の面々は基本的に承諾の意志を示す。

<市庁の前>
(BGM:23 silence)

市庁の目には既にヤラセとバードとミーナら率いる
囮部隊が既に準備を終えて任務を遂行せんとしていた。

だが肝心の問題は次だ。
いかに真意を悟られずにヘルマン軍を
自分達の方におびき寄せるか……

「そうだなぁ……まずはあっちにとっ捕まっている
 捕虜を返してくれる様に交渉してみよう。」

「は?」

突然何を言い出すのか?と言いたそうな顔で、
ミーナはヤラセの発言に反応する。
もっともミーナでなくても怪訝な表情をするだろう。

それもその筈。
市長側は今現在圧倒的に優位な立場だ。
時期市長選にはほぼ当選が確定とまで言われ、
更に言うならライオンマインド及び
賊認定された討伐軍の大多数は捕虜として
自分のたなごろに在るのである。

とてもではないが相手に譲歩しなければならない
理由などはどこを探しても存在しない。
そもそも今回の作戦の目的は
ヘルマン軍に対する囮であって捕虜奪還ではない。

「今更返せって言っても相手が
 はいそーですか返してくれる訳もないし、
 そもそも私達の目的は捕虜奪還じゃないんだけど。」

「勿論そんな事は言われなくても百も承知の上だ。
 そこでわざと勘違いの上から目線の態度を取り、
 相手にこっちがあたかも余裕が皆無で
 切羽詰まった末にダメ元でやって来たかの如く
 思わせようってぇ訳だ。
 そしてヘルマン軍を調子づかせて
 捕縛の為に我々を追撃させるのが狙いだ。」

ミーナの問いに対してヤラセは真の狙いは
ヘルマン軍に自分対を侮らせた上で
誘い込むという出る事を説明する。

<市庁前>
(大帝国BGM:陰謀の気配)
市庁前ではヤラセが味方を後ろに控えさせ、
自分は単身白旗を揚げて交渉目的で来た事を
示す意志を相手側に伝えている。

果たしてこの策が成功するか否か……
第一の目論見であるステッセルを
交渉の場に誘い出す事には……
何とかひとまず成功した様だ。

だがステッセルは流石に用心深く、
市庁の中程の部屋の中から
窓を開けて交渉を開始しようとしている。
こういう成り上がり者は得てして用心深い。
窓の内でのステッセルの姿勢は
いつ何が起こってもいい様な姿勢を取っている。

「おやおや何者かと思えば私の市を荒らす
 不届きなドブネズミ共の一匹ではないか。
 私は多忙なのだ、早く用件をお言い!」

「用件と言う程の事でも無いんだが、
 単刀直入に言うと先日とっ捕まった
 我々の仲間を返して欲しい。」

「それで?素直にはいそーですかと言うとでも?」

ヤラセの交渉内容を聞き終わる前に、
呆れた顔でステッセルは一向に耳を貸そうとせず、
音速で交渉を打ち切って部屋に戻ろうとする。

第二の目論見の交渉に耳を傾かせる、
それはあっさりと頓挫しようとしている。
だがヤラセも引き下がる訳にはいかない。

「ただで返して欲しいとは一言も言ってねえ。
 アンタだって町長のキースの事は
 非常に疎ましく思っている筈だ。
 仲間を帰してくれればキースを裏切って
 その身柄をあんたに渡そうじゃないか。
 な、それでいいだろ!?」

「それを信じる私だとでも思っているのか?
 そもそも私は今現在の状況に於いて
 キースの存在如き歯牙にもかけておらぬ、
 というのを知らんのかお前は?」

第三の目論見、それは必死に取り入る振りをし、
ステッセルに足下を察知させる事においてまで
どうやらまんまと成功に持ち込めた様で、
見事なまでに自然体で交渉決裂に持ち込んでいる。

「こここ、後悔すんなよクソメガネ!!
 いつかギャフンと言わせてやるからな、覚えてろ!!」

「誰が誰をギャフンといわす……だって?」

(ランス9BGM15:絶体絶命)
気がつくと市庁の門からはヘルマン軍が
ぞろぞろと沸き立つが如く出てくる出てくる。

「迂闊だったなドブネズミ共。
 ここで貴様等がわざわざ自分から
 捕まりに出てくるのだからな。」

「え…どういう意味だ!?」

「まだ理解らんのか間抜けぇなドブネズミめ。
 大人しく砦に引き籠もっていれば
 まだ寿命が数日間は延びたかも知れんのに、
 わざわざ自分から敵の前に現れるから
 大間抜けだと言っておるのだ。」

第四の目論見及び目的である囮作戦は
間もなく成功の時を迎えようとしている。

「お前達!やーっておしまい!!
 間抜けなドブネズミ共の残党共を
 一匹残らず根絶やしにしてやるのだ!!」

夜空に響くのはステッセルの号令一喝、
それと同時にヘルマン軍が囮部隊めがけて
ヒャッハーと進軍をしてくる。

「あわわ……ににに逃げろおおおおお!!!
 藪蛇になっちまっただにげろおおおお!!!」

銀幕のスタアにでもなれそうな見事な迄の演技力だ。
ヤラセに100点。

<市庁裏の下水道>
(BGM:23 silence)
「臭いぜ臭いぜ臭くて死ぬぜ。」

市庁裏の下水道には蒼生を筆頭に
6人の強者+1名が下水道から
市庁に忍び込もうとしていた。

だが臭い。エレナのボヤき通り果てしなく臭い。
いや、下水道というのは当然ではあるが、
多かれ少なかれその性質から悪臭がしたり
ネズミやGの住処になっているのは極当たり前だが、
それを差し引いても悪臭が酷すぎる。

「おそらくはステッセルの失政じゃろうな。
 私腹を肥やしたりする為には市政、
 しかも目に見えずに地味な存在である
 下水道の整備にまで税金を使う事なぞ
 ハナッから眼中にすらないんじゃろう。」

完柳斎の言葉通り下水道の状態は凄惨を極めており、
悪臭は無論、色とりどりの下水の色、
ボロボロに崩れ落ちたコンクリートの壁の数々、
そしてそこに住み着いているのは……
ネズミやGだけではなく日が暮れて寝る男の
部屋にいそうな奇っ怪な昆虫や植物の群れは、
ステッセルが市長になって以来、
一度も点検どころか担当職員が入った事さえ
無かった事を如実に物語っている。

「という事は市のインフラも押して知るべし、
 という事ですか。」

「自前で金尽くで何でも出来る
 金持ちならば話は別だろうけどね。」

「グルルルルルル!!!」

扇奈!上から鰐が!!
だが扇奈も屈指の強豪特体生だ。
(SE ドギャ)
刀を使うまでもなく中国拳法の
二起脚に似た足技で軽くあしらう。
パンツー丸見え。

そうこうしている内に、
これらの魔境の下水道との悪戦苦闘の末、
市庁の中に潜入する事に成功する。
市庁の中は囮部隊の働きにより、
ヘルマン軍は討伐の為に粗方出陣しており、
今現在市庁内には閉庁時間という事もあり、
ほぼ無人くんと言える状況だ。

「ワシとのぞみとアルカネーゼは
 山鉄と共に証拠物件を探しに行く。
 扇奈と蒼生とエレナは市庁に捕らえられている
 捕虜を捜索して救出に行って欲しい。」

「ああ。」

「こっちはいいぜ。」

「……は、はい……。」

「こちらも」

「大丈夫ですよ。」

<市庁の地下牢>
市庁の地下に存在する薄暗くて汚い地下牢。
そこにはやたら立派な看守の部屋と
それと対をなすが如き不衛生な囚人の牢獄と拷問部屋、
そしてそれらの部屋の機能の正常運行の為に
用意された拷問器などの数々の物騒な品々が
見事なまでにコントラストを作り上げていた。

牢獄をみるとライオンマインドや討伐軍の面々、
そして無実の罪で叩き込まれた政治犯等、
色々な種類の囚人がところ狭しと押し込められている。
数日前に入れられて体力を失っていない
ライオンマインドや討伐軍の面々と異なり、
長年暗くて狭くて臭くて汚い、
つまり不衛生なところに押し込められていたせいか、
皆一様に覇気も精気もクソも無いに等しい。

「ちぐじょーこんな所で死刑にされてたまるかー!!」

いや、一人口やかましいバカがいた。
ああ、小便首のケチャックだ。

「しかしどうすれバインダー!
 イヤだイヤだイヤだイヤだ死にたくねー!」

この土壇場にきて全くブレないところはさすがだ。

(BGM:18 comical)
「小物臭ぇーところは全く変わってねえじゃねえか。
 この小便首のケチャックが。」

「ゲーッ!!エレナ=フラワー!!」

そのブー垂れていたケチャックに対して
かけられた声の主は……エレナだ。
扇奈と蒼生と山鉄もいるぞ。

エレナら四人を目の当たりにし、
ケチャックは明らかに狼狽しておる。
それも至極当然だろう。
今ここに決して存在しない筈の、
いや……それ以前の問題か。
とにかく存在る筈の無い四人がいるからだ。

「テテメエらななななな何しにきゃーがった!!
 まさかとは思うが脱獄幇助じゃねえだろうな!!」

そのまさかだよ。脱獄幇助。
というか一目見て判らんのかこの小便首は。

「畜生!!こんなとこで脱獄されてたまるか!!
 集団脱獄を見て見ぬ振りをしたら
 俺はオジキに確実に死刑にされ……」

コーフン気味で言いかけたところ、
ふとケチャックは我に返る。

自分が如何にフンボルトところで
屈強の特体生三人に勝てる訳が……
いや勝敗以前の問題だ。

そもそも自分はステッセルに
死刑を言い渡されてその死刑を待つ身だ。
今の状況でその死刑判決を覆す方法は
手柄を立てて汚名返上を果たす事、
即ち目の前で現在進行形で起こりつつある
集団脱獄を阻止する事以外に方法は皆無。
だがどう考えても無理ゲー以外の何者でもない。

『落ち着け……冷静に沈着に考えろケチャック。
 今ここでお前が生き延びる方法を考えろ。
 お前は賢い!ジニアスだ!
 断じて小便首なんかじゃあねえ!!
 この状況を打破するグッドアイデアは……
 どうせこのままでは死刑になるだけだ。
 ここは一つこいつらに寝返って
 安全を保つ以外に生きる方法はねえ。
 だが何の土産も無く寝返れるわきゃあねえ。
 土産に相応しいもの……相応しいもの……
 そうだ!!』

この押しても引いても絶望以外の状況の中、
なけなしの知恵を絞りきってケチャックは考える。
どうすれば自分は死刑を待つ状況からトンコ出来るか。
その方法とは……

「オジキの強みの一つは自分が
 闘将バステトに守護られているという事だ。
 そのバステトが身辺を365日警護しているからこそ
 オジキは誰のお礼参りも気にする事無く
 好き勝手ヒャッハーしていられる。
 そしてバステトの動力源はこの市の市民の
 Bパワーによって賄われている。
 市庁の中のメインコンピューターを通じて
 バステト本体にBパワーを供給する……
 オジキの事だからいざとなれば
 市民のBパワーを残さず吸い取る事もいとわねえ。
 つまり俺も干物にされるって事だ。
 逆に言えばバステトはそれ故に市から出られねえ。
 となればこの俺がこいつらに取り入って
 メインコンピューターを壊させるしかねえ。」

ナイスアイデアが浮かぶ……のは良かったが、
言わずともわかるがメインコンピューターは
いわばステッセルにとては心臓部だ。
その心臓部に誰でもホイホイ入れる訳がない。

実際コンピューターまでの道のりは
警護の為の量産闘将がが複数いる上、
魔鉄匠の血を引くステッセルにしか
開けない扉までもが存在る。

量産型闘将は三人の力をもってすれば何とかなる。
問題の扉ももしステッセルの甥である自分が
魔鉄匠の血を引いているのであれば開ける筈。

だがもし魔鉄匠の血を引いていなかった場合は……
いや、そもそも小便首に残された道はそれしか無い。
その道を拒めば死刑への道標しか無いからだ、

「……という訳でバステトをいてコマして
 オジキを丸裸にしなけりゃならねえ。
 そこで取引をしねえか?
 お前らがメインコンピューターまでの道を開き、
 そこで俺がオープンザドアして
 コンピューターを見事に停止させる。
 なぁ損な取引じゃねえだろ。な?な?」

「何か怪しさ大爆発ですねぇ?」

「そうだな。胡散臭い臭いがプンプンするぜ。」

「それで本当の事はどうなんです?
 本当の事を言わないと捻り切りますよ。」

「すり潰しますよ。」

蒼生と扇奈が小便首に対して
嘘偽り無き真実を語る様に脅しにかかる。
いつものケチャックならば、
ここでびびっていただろう。
だがケチャックも自分の身体、
即ち物理的な意味での首が掛かっている上、
マジ本当の事を語っているので
ここで引き下がれる訳がなかろう。

「てか俺が嘘をつくわきゃねえだろ!!
 大体俺ァこのままだとなぁ、
 オジキに死刑にされちまうんだぞ!
 嘘をつく理由も
 オジキを庇いだてする理由もねえよ!」

小便首のごもっともな言い分だ。
それに対して四人はその話に乗るという意志を
視線で確認すると囚人を全員解放し、
それらの逃走の誘導を山鉄に任せた後、
戦闘準備を整えてその話に乗る事となる。

<市長室>
(大帝国BGM:陰謀の気配)

市長ステッセルの欲望の牙城である市長室。
そこには己を誇示する為の自画像やら
トロフィーやら感謝状やら有名人のツーショットが
ところ狭しと飾られており、
まるで新興宗教の教祖の部屋を思わせる
悪趣味極まりない部屋と化している。

そんな悪趣味極まり無い部屋の中を
観柳斎とアルカネーゼとのぞみのトリオが
不正の証拠をガサ入れ家捜ししている。

どこから捜していいのか
さぱーり見当がつかないので、
手当たり次第にガサ入れしてみると、
まああるわあるわ、
机の引き出しから肖像画の裏まで
ありとあらゆる処に
茸山ら悪徳商人との癒着に
不正な税金収入に不正使用に
ありとあらゆる不正という不正、
汚職という汚職の証拠がそれこそボロボロに、
配管工男のボーナスステージかと見間違う程に
イヤという程出てくる出てくる。

そして本命中の本命も忘れてはならない。
もっとも欲していた市長の座を利用して
資金を荒稼ぎしまくった後、
最高に高めた軍資金でさらなる高見の地位と
Bパワーを手に入れようとしている
動かぬ証拠がのぞみの手によって発見される。

これを赤日の元に公表すれば失脚はほぼ確実、
これでミッションコンプリー……

(ランス9BGM15:絶体絶命)
「そう上手く行くと思ったかドブネズミ共。」

という訳には勿論いかなかった。
流石に相手は政争にや保身にかけては超一流、
バステトを後ろに従えたステッセルが
何かを察知して戻ってきたではないか。

「全く晴れのち胸騒ぎがすると思って
 戻ってたら案の定キースのイヌ共がいたか。
 だが小賢しい工作もこれまでた。」

観柳斎達の作戦には何一つ抜かりは無かった。
計画性・実行力・人数 等々、
どれをとっても今現在の状況に於いて
取れる事が出来る最高最良の作戦だ。

ただ一つ抜かりがあったとするならば、
それは無能市長ステッセルの持つ
唯一の才能と言うべきスキルである、
政争や生存に関する直感とでも言うべき
才能であろうか。

今までステッセルが数々の政争を切り抜け、
政敵を蹴落としてこれたのは
これらの政争や生存にのみ特化した才能によるもの。
そして古今東西政争にしか才能のない
政治家程厄介な存在はいない。

政争にだけは長けているが故に
他の政治的才能に満ちあふれた
有能な政敵を蹴落として
政治的な才能の無い者が
重職に就くのであるからして、
ロクでもない結果にしか
ならないのは目に見えている。

「おそらく大方はキースのハゲの考えついた
 良からぬ陰謀だろう。バステト、やっておしまい!」

(ランス9BGM33:Helman Battle1)
ステッセルの命令一鳴、
護衛の闘将はバステトは
メタルアイを紅玉の如く光らせ、
轟音を立てながら戦闘態勢をとる。

だがそこに招かれざる者がもう一人。
悪徳商人の茸山だ。

「市長、そこはしばしお待ちを。」

ステッセルの抹殺命令に異議を唱えるは、
他の者ならばいざ知らず、
以外にもステッセルとつるんで
甘い汁をすすっておる
悪徳商人の茸山だ。

勿論他の者ならともかくこの男が
慈悲心などの美徳の心で
抹殺に異議を唱えている訳ではない、
というのは言うまでもなかろう。

「そこの三人に告ぐ。
 お前達は私の見立てでは殺すには
 惜しい能力を持つ逸材とみや。
 どうだ?金目は惜しみませんから
 我々の下で働かんかね?」

ああ、青田刈りのスカウトだ。

「忠誠の証としてキースの首を持ってくれば
 誰もが羨む高待遇で雇おうではないか。
 どうだ?悪い話ではないであろう。」

「だが断る。」

あっけなく失敗した。

「この私の優しい申し出を断るとは……
 地獄でゆっくり後悔するがいい!!」

茸山の最終通告を合図に、
バステトの悪夢の如き攻撃が開始まった。

(SEズガガガガガ)
銃は剣より強しとばかりに
両手に仕込んだバルカン砲で
三方から三人に対して先制攻撃の
乱れ撃ちを行う事で出鼻をくじき、
更にステッセルや茸山にバリアを張って
こちらに対する攻撃の対応も怠りはしない。

そしてバルカン砲の乱れ撃ちを潜り抜けても
待っているのはバルカン砲に劣らぬ程の
接近攻撃と鋼より遙かに堅牢なボディ及び、
抜け目の無いコンピューターの思考だ。

それに対して完柳斎が
熟考して出した対抗策はこうだ。
まずは自分が囮となりて
バステトのバルカン砲の的になり、
そしてその隙をついてのぞみとアルカネーゼが
コンビでバステトのボディの装甲部分の間の
関節部分等の部分を攻撃するというものだ。

「これならば行ける。二人共後は任せたぞ。」

「は……はい。」

「本当にいいのかい?まあいいけど。」

だが完柳斎の策を実行すべく
三人が各々のポジションに着いた時だ。
自分達のもくろみが
一生の不覚であった事に気づく。

遠距離攻撃であるバルカン砲のイメージが
余りに強すぎた為にバステトそのものの
機体の高い性能というものを考慮に入れる事を
すっかり忘れてしまったのである。

(SEズギャアアアアアン)
轟音と共に繰り出される
バステトの接近戦での直接攻撃、
それが完柳斎の策を
碁盤ごと力尽くでひっくり返す。

不意をつかれた完柳斎は
とっさに身を後ろに飛ぶ事で
致命傷を防ぐ事が出来たものの、
深刻なダメージを受けた事に代わりはない。

残りののぞみやアルカネーゼにしても
関節部分を攻撃するにしてもまずは
たった今目にした強力な直接戦闘能力を
かい潜って攻撃しなければならない。

そして駄目押しとばかりに完柳斎が
最悪のケースを想定する。
このバステトはおそらくは
市民のBパワーから動力を得ている、
という事はいざともなればステッセルは
なりふり構わず市民からBパワーを吸い尽くす
暴挙にでる事は火を見るよりも明らかだ。

戦力的にだけではなく人道的観点からも
それだけは断じて避けなければならない。
その想いを胸に完柳斎は再び
バルカン砲の前に己をさらけ出す。
だが傷ついた体で何をするというのか?

<メインコンピュータールームへと続く通路>
(大帝国BGM::一斉射撃−呂)
一方蒼生一行は
メインコンピュータールームに
続く通路を爆走していた。
途中ルームへの進入を阻むべく
量産闘将が何体か出てきたが、
三人の前に至極あっさりと
粉砕されるという結果に。

同じ闘将のバステトは
鬼の如き強さであるにも関わらず、
量産闘将がヘポーコなのは
勿論所詮は量産型であり、
カスタムタイプのバステトと比べて
レベルが明らかに劣るのは当然だ。

なおかつ屈強の特体生である三人を
同時に相手をしなければならない、
という事なので尚更の事だ。

だが弱さの秘訣はそれだけにあらず。
ステッセルはのし上がる為には
大量の資金を必要としているのは前述の通りだが、
それが故にバステトに大量の資金を投じたので
量産型なんぞに銭をかけていられるかこのタコ、
というのがその理由だ。

こうなればもう恐いものは無い。
一気呵成の勢いを持って
三人は部屋の前にたどり着く。

後は小便首がオープンザドアし、
中のメインコンピューターをちょちょいとイジって
バステトへのBパワー供給をストップすれば
もはやこっちの勝利は動かない。

(ランス9BGM15:絶体絶命)
だがそうは問屋が卸さないぃぃ。
目の前をよく見てみるがいい。
最後の量産型闘将が扉の前に陣取っている。
無論3人+αの姿を確認するや否や
問答無用で戦闘態勢に移る……筈だが、
戦闘態勢は戦闘態勢でも最終闘将は
一切の攻撃を考慮の外にした体勢を取る。

つまり防御特化型の闘将という訳だ。
これはこれで理に叶っている。
これら量産型闘将の存在目的とは、
バステトの動力源であるルームの警護に在る。

つまり侵入者を殺傷しなくても
永久に部屋に入らせなければ
警護という目的は達成される事になる。

「逆転の発想、というところですね。
 さて……どうしましょうか?」

「どうもこうもねえだろ。
 目の前にて気が立ち塞がった以上
 どうにかしてぶっつぶすしかねえよ。」

「じゃこうしませんか?
 私達が囮になって敵をおびき寄せますから
 その隙に小便首さんが中に入って
 コンピューターを止めて下さい。」

扇奈と蒼生による囮作戦だが……

「ちょいと待ちなよ。」

いつになくシリアスな表情で
小便首が待ったをかける。

「一言で部屋の中にはいると言っても
 扉を開けるだけでも数分時間がかかる。
 しかもコンピューターを止めるとなれば
 更に時間がかかるってもんだ。
 幾ら何でもあの闘将もパーデンネンじゃなし、
 俺が侵入しようとしたらまずは
 俺から優先的に潰そうとするだろうよ。
 つーか防御特化型でも
 戦闘力皆無の俺程度なら
 アサーリ瞬コロ出来るくれぇの
 攻撃力は持っているだろうし、
 そもそも俺が扉を開く魔鉄匠の血を
 引いているかどうかもわかんねえんだ。
 こりゃあまず目の前の敵をやるしかねぇ。」

いつになく小便首が冴えた意見を口走る。
実際その通りであり、ここで取れる道はただ一つ。
目の前の闘将を壊してじゃまを取り除いた後、
小便首に自分のやるべき仕事をさせる。

しかし現実というものは非情である。
目の前の防御に特化した闘将をどうやって、
しかも迅速に無力化するかだ。

三人が力を合わせれば時間をかけまるで
大根をすりおろす様に攻撃を仕掛けるなら
確実に壊せるだろう。だが……

「そんなに時間をかける訳にもいきませんよねぇ。」

今現在の事態、時は一刻を争うのである。

「攻撃して駄目なら……押して駄目なら……
 引いてみる……も意味が有りませんし……
 あ、今ピーンと来ました!」

(SEピカーン)
「え!?」×3

今蒼生の頭上にフィラメントの様なエフェクトが
イメージとして皆の目に見えた。
これはなにがし化のグッドアイデアが
浮かんだ事を象徴するエフェクトだ。

「そりゃあ一体どういう妙案が浮かんだのさ?」

「まずは一斉に全力で攻撃する振りをします。
 そうすれば敵は防御の為に
 Bパワーを機体に溜め込む筈です。
 Bパワーが満タンになったところで、
 更に私達がBパワーを相手に譲渡します。」

「Bパワーの飽和状態による自爆狙いですね。」

「……さっぱり意味がわかんねぇんだけど。」

「これだから脳筋女は……よく聞いとけよ。
 判り易く言えば喰いすぎて腹一杯のところに
 更にメシを喰わせて食道爆破させんだよ。」

「ああ。成程ね。」
 
(SEギュウウウウウウウ)
そうと決まれば話は早い。
三人は早速必殺技の為に
Bパワーを溜める振りをしてその実、
食道爆破の為のBパワーをグングン溜めている。

だが三人の策を看破する程の賢いオツムを
闘将は持ち合わせておらず、
まんまと防御の為にBパワーを
体内に溜め込んじまうんだ。

だが念には念を入れ、
三人は極力不自然な行動を慎み、
ごく自然にBパワーを溜める。

そして双方のBパワーが極限にまで高まった時だ!!

「行きますよ!」

「ええ!」

「のぞむところだ!」

(SEググググググググ)
三人は同時に闘将に自分の
ありったけのBパワーをすべて注入する。
どうだ!?イケそうか!?
……まさかの、まさかの失敗!!失敗!!!!

闘将は三人のBパワーを全て吸収して
更なる強敵と化して三人の前に立ち塞がる……
と思いきや作戦は成功を収めており、
闘将は運とも寸とも動かない。

(SEプシャアアアア)
よくよく見ると闘将は外見は無傷であるものの、
その内部は膨大なBパワーによる飽和状態で
既にどこもかしこもショートをきたしており、
既に手が着けられない状態になっていた。

(ランス9BGM14:今しかない!)
後に残る問題は……
小便首が魔鉄匠の血を引いているかどうかだ。
もし血を引いていなかった、つまり、
扉を開く手段を持ち合わせていなかった場合、
言うまでも無く詰み状態ガメオベアだ。

一縷の希望を乗せて小便首が
扉の取っ手を開くが……やはり駄目か?
ざんねん!わたしたちのさくせんは
ここでおわってしまうのであろうか!?


「いや、まだ終わっちゃああいねえ!
 どうやら俺の体の中には少しだが
 魔鉄匠の血が流れている様だ!!
 見ろ!扉が俺に呼応し始めている!!
 オジキよりは時間はかかるが時間さえかければ
 コンピューターは停止出来るってこった。
 ここは俺に任せておめぇらは
 さっさと味方んとこに行くんだよ!!」

「そう言って自分だけトンズラこく気か?」

「アホか!お前は何を言っとるんじゃ!
 俺にしてみりゃここでお前らが
 オジキを何とかしなけりゃあ
 俺は死刑という結末から逃れられねーだろ!」

「まあ……そりゃそうだな。」

エレナの疑問に対してまこともって
一部の隙も無いケチャックの反論が入る。
というよりケチャックの見張りを
やっている暇があるならばいの一番に
完柳斎達のところに加勢しに行くべきだ、
と蒼生一行は即判断を下し、
小便首をおいて疾風の如く市長室に向かう。

<市長室>
(ランス9BGM33:Helman Battle1)
市長室の中では一方的な戦闘が繰り広げられている。
完柳斎達はチート性能という言葉がかわいく見える
闘将バステト相手に大苦戦を強いられていた。

何しろ相手はハイスペックどころではない闘将であり、
機体は頑丈極まりない金属装甲で覆われており、
しかもエネルギー源は市民のBパワー、
すなわち半ば無限大と言ってもよく、
弱点らしき弱点は機体を繋ぐ関節部分位のものだ。

アルカネーゼの自慢の強力による鎚攻撃も
頑丈極まりない装甲には通じておらず、
のぞみの素早さと鋭い剣撃も通用しない。

だが完柳斎は何を思ったのか。
己の身を捨ててバステトの拳の一撃を受け止める。

「アルカネーゼ!!のぞみ!!今じゃ!!」

「はい……!」

「おぅよ!!」

(SE斬ッ)
完柳斎の己の身を賭けて作り出した隙、
ナウゲッタチャーンスとばかりに
アルカネーゼとのぞみが隙だらけの
バステトの間接をねらって渾身の一撃を放つ!!

二人の腕には関節を破砕したと思わせるに
相応しい確かな手応えが確実に伝わってくる。
脚という機動力と土台を無くしたバステトに対し、
後は何とか……い、否!!
二人が乾坤一擲の想いで放った一撃は、
バステトの両足の膝関節には対して効いていない!!

いよいよ、いよいよ三人は追いつめられる。
唯一の勝機と思わしき関節破砕による
攻撃も通じないとはいよいよもって
敗北の道が開かれようとしていたその時だ。

(SEギュシャアッ)
(SEズガガガガガガッ)

のぞみとアルカネーゼを攻撃しようとしていた
バステトのバルカン砲の標準は……逸れていた。
バステトの性格極まり無い攻撃を
外させしめたのは蒼生と扇奈とエレナの
三人による噴出放流攻撃だ。

扇奈が真っ先に切りかかり、
蒼生が更に扇奈の上から飛んで切りかかり、
エレナがバステトを攻撃圏外に吹き飛ばす。

本来ならばこの程度の攻撃は
バステトの能力を以てすれば迎撃は出来た筈。
だがのぞみとアルカネーゼの関節への攻撃が
バステトの関節の起動を一瞬遅らせた。

無論この攻撃はとっさに出した攻撃だ。
バステトに何らダメージを与えていないのは一目瞭然。
だが蒼生達には確たる勝算が存在った。
それはケチャックがコンピューターを止めて
バステトを制止させるまでバステトと戦う事だ。

だがバステトと戦うよりもここは一端退いて
バステトが停止してからでもいいのではないか?
そういう意見も有る事には有った。
だが小便首が言うにはそんな事をしたら
コンピューターを止めようとしている魂胆に
ステッセルが気づいて他の手を打たれかねない。

バステトが機能停止するまで交戦をして
ステッセルの注意を逸らすしか無いと。
こうなりゃあ背に腹は代えられない。

「完柳斎さん、ここは持久戦で行きましょう。
 バステトのエネルギーが無くなるまで我慢の子です。」

「そうは言うがな扇奈、
 バステトはいざとなればステッセルは
 市民の事などお構いなしに市民のBパワーを
 湯水の如く動力に使ってくるぞ。
 つまり半ば無限のエネルギーを持ってる、
 或いは市民を人質に取られているに等しい。」

「それでもじっと我慢の子です。
 私たちを信じて下さい。」

完柳斎の質問に対し、
扇奈は敢えて真意を語らず、
根性論で戦っているかの如く装う。
その真意がステッセルに
ばれる訳にはいかない。

「バカな奴らだ!!
 無限に等しいエネルギーを持ち、
 しかも強大極まり無い力を持つ
 バステトを相手に無謀なり!
 バステト、奴らを37564にしておしまい!!」
 
ステッセルの抹殺指令が下り、バステトが動く。
だが相手は疲労しまくっているとは言え六人。
この多人数を相手にバステトは如何に戦うのか?
それは一人ずつ確実にしとめてく各個撃破、
クラシックだが至極確実な戦法だ。

そしてその戦法の矛先の対象となったのは、
他ならぬのぞみだ。
対象をチョイスしたバステトの行動は
躊躇無くかつ素早い。
間髪を入れず全力でのぞみコロしにかかる。

(SEズバゴーーーーン)
だがそのバステトに対し、
アルカネーゼの轟鎚が横から唸りを上げて入る。
ダメージが目的ではない。
バステトを吹っ飛ばす、
つまり攻撃逸らしと時間稼ぎが目的の一撃。

吹っ飛ばされたバステトに次に襲い来るは
のぞみが懐から取り出したる彼の新撰組も
愛用していたと言われる捕縛用投網だ。

投網
上空あるいは横に捕縛用投網を投げつける技。
ヒットすると2秒動けなくなる。
(真横)236+K(上空)623+K

のぞみの腕から放たれる投網は
バステトの機体に容赦なく複雑に絡みつき、
バステトの機動力と動きを制限していく。

強力を誇るバステトとて柔軟な網に
自慢の強力を発揮する事も出来ずに
四苦八苦悪戦苦闘を強いられている。

剛は砕けても柔は砕けぬ。
……と思ったのもつかの間、
バステトから発せられた高熱により、
投網は至極呆気なく燃え尽きてしまう。

だが蒼生は次の手を打っている。
京お庭晩衆謹製の鉄製の縄だ。
バステトの僅かな隙をつき、
足首の関節と手首の関節に
それぞれ投げつけて巻き付かせる。

縄殺飛苦無
鉄製の縄を相手の足首の関節と手首の関節に巻き付かせ、
ヒットすると数秒動けなくする片目技。
214+K

これではいくら強力や高熱を発しても
逃れる事は非常に難しい状態となる。
それに呼応してエレナも鎚による攻撃を加える。

だが何故対して効かない鎚攻撃を仕掛けるのか?
今回の戦術はバステトの動力源たる
コンピューターを小便首が停止させるまで
時間稼ぎをするのが目的であり、
何も攻撃を加える必要等は無い。

だがこの攻撃には二つの意味があった。
一つは攻撃を加える事で縄から脱出せんとする
バステトの行動を制限する目的、
そして時間稼ぎという目論見を
ステッセルに察知させない様にするのが
もう一つの目的だ。

だがその時予想だにしていなかった事が起きる。
バステトの額からガトリングガンがはかばがと飛び出し、
エレナに対して激射してきたのである。

(SEズガガガガガアガガガガ)
とっさの野生の勘でエレナは体を捻って
奇襲攻撃を避けようとするものの、
予想外の攻撃は急所を外しただけで
少なからぬダメージをエレナに与える。

もしこれが高威力高速射のバルカン砲ならば
エレナはミンチ状態でお陀仏になっていただろう
事はほぼ間違いない。

そしてとどめとばかりにバルカン砲をエレナに加え、
ミンチ状態にせんものとする。

だが蒼生の鉄縄はあやとりの如き縄縛術の巧みさで
巻き付いた縄を巧みに操って体勢を崩させ、
容易にバステトに撃たせようとはしない。

右手のバルカン砲を撃とうとすれば
右手に括りつけてある縄を引っ張り、
左手のバルカン砲を撃とうとすれば
左手に括りつけている縄を引っ張る。

そして接近戦に持ち込むべく近寄ろうとすれば、
両足の縄を引っ張るので自然と
両足を踏ん張った状態を維持するしか無い。

「これで時間がくればこちらの勝利ちですね。」

だが失敗フラグの説明死が入る。
そしてそのフラグは即回収だ。
バステトは側の柱に縄を押しつけて
無理矢理引っ張る事により、
蒼生を自分の近くに手繰り寄せる事に成功。

蒼生の無防備きわまり無い体勢、
それに対して当たれば即お陀仏の
鉄拳がかまされようとしていた。

他の五人は離れた位置にいて
とてもではないが攻撃を
ショートカットする手段も余裕も無い。

死を告げる鉄の塊の一撃が蒼生を屠る……
事はしかし永遠に訪れる事は無かった。

(ランス9BGM14:今しかない!)
何故なら蒼生が閉じた眼を開けた時には、
既にバステトの巨体は動力である
Bパワーの供給が完全に停止して
只の金属の塊になっていたからだ。

「え〜と……」

「これは作戦が成功したという事でよろしいでしょうか?」

「まあその様じゃな。」

「さささ、作戦だとぉ!?
 キサマら何を訳の分からん事言っている!!?
 ていうかオイ!バステト何をしておる!
 とっととこいつらを皆殺しにせんか!!」

ステッセルが何をしようとうんとも寸とも動かない。
最早ただの金属の塊と化したバステトに対する
ステッセルの叱咤命令は只の大声の騒音以外の
何者にも機能はしていない。

「生憎ですが闘将バステトはもう起動はしませんよ。
 既に先手を打って地下で小便首さんが
 コンピューターをイジってバステトに供給される
 Bパワーをシャットして貰いました。
 最早これまでです。」

「な……んだと!?
 ケチャックの小便首野郎が裏切ったのか!?」

ステッセルと茸山の顔からは、
言うまでも無いが血の気が引きまくっている。
今まで調子こいてきたツケを支払わせるべく
目の前の六人が二人に一斉に視線を浴びせる。

だがそこで部屋の扉が勢い良く開けられる。
ステッセルと茸山の両名の表情は
血の気の引きまくった顔から瞬時に一転、
おおっというドヤ顔と化す。

「もしかそてヘルマン軍か!!
 今まで賊軍を追撃していた
 ヘルマン軍が帰投してきたのか!!」

ドヤ顔の根拠は二人の算段はヘルマン軍が
帰投して扉を開けてきたのではないかという事だ。
そして無傷のヘルマン軍に数の暴力で
六人を退治させようと言う目論見だ。

これで万事うまくいく。
後はこいつらを37564にして
キースを蹴落とせばいい。
そう思ったその時。

「扉を開けた者がヘルマン軍ではない」
そう知った瞬間二人の捕らぬ狸の皮算用は
瞬時にして崩れさっちまった。

「アテが」

「外れて」

「残念だったな」

二人が帰投したヘルマン軍だと思って
視線をやった先には期待していた光景は
一切合切見あたらない。
その代わりに自分達の立場を
更に悪化させるであろう事は
間違いない光景が広がっていた。

何故ならば今頃ヘルマン軍に纖滅されている筈の
ヤラセら囮部隊だったからだ。
つまりヘルマン軍は少なくともここにはいない、
という事がほぼ確実だからだ。
現実は非情なのである。

「はややややや……」

「ヘルマン軍はどうしたのだ!?
 お前らは確かヘルマン軍に追われている筈!!?」

確かに囮部隊は迎撃に向かった
ヘルマン軍と交戦をしている筈だ。
しかもヘルマン軍と戦っているからには
今頃全滅或いは最低でも
こんなところにいる筈がない、
という認識でステッセルは問う。

その問いに対してバードは

「今頃連中は山の中で迷子になっているだろうよ。」

「山の中ぁ?」

「今の我々の状態で奴らとまともに当たるのは
 無謀過ぎる上に囮部隊としての任務もあるからな。
 そこで地の利に詳しいライオンマインドの連中に
 山に誘い込ませて迷子にさせたって寸法さ。」

自分達の戦法を包み隠さずネタバレする。
まさにあれよあれよという間の逆転劇。
こうなっては二人に為す術はない。

「ひぃぃぃぃぃ〜」

「たたたたたしゅけ……」

小悪役のゴールデンルールとばかりに
ひたすら哀れでブザマな命乞いをするが……

「命乞いなら貴方達の……」

「好きなお金になさい!!」

(SEドギャッ)×2
扇奈と蒼生の両者の鉄剣(峰打ち)で成敗される。
そしてボスキャラが成敗された事により、
今迄の長かった展開とは裏腹に
呆気無く事態は収拾の結末へと向かう事に。

<市庁前
(BGM:25 Warm glow)

クーデターがものの見事に成功した市庁前、
そこではステッセルと茸山が
膨大な押収された証拠物件と共に
ゴヨウされている。
二人の小悪党の表情は一様に
無念さと逆恨みに満ちている。

一方ヤラセとバードとミーナのトリオは
山の中で迷子状態になっている
ヘルマン軍に対する投降の呼びかけを済ませ、
既にステッセルにつき従っていた事等の
罪を問わずに減退復帰を許す事を条件に
投降をさせる事に成功していた。

そして山鉄の方も地過労に閉じこめられていた
囚人を全て脱獄させる事に聖子押しており、
薄皮一枚とでもいうべき累卵の危うさ満載の
乾坤一擲の電撃作戦はここに一応の成功を収め、
ここに終止符を宣言する事となる。

「き……キサマはケチャック!!」

屈強な男に連行されているステッセルが、
ふと目の前にした一人の男の名前を口にする。
その男の名は二人にとってはにっくき裏切り者、
憎んでも憎みきれない小便首だ。

「キサマよくも私の恩を徒で返してくれたな!」

「何が恩だよこのオジキヤロウ!
 散々俺をこき使いやがっていざとなったら
 全ての罪を被せて死刑にしようとしゃーがって!
 まあいいや…俺ぁおまいらの裁判に
 今迄の事の証人として出廷する事となる。
 裁判所でお前らの悪事を司法取引で
 包み隠さずゲロすれば罪一等を減ぜられ、
 ヒラ落ちで済むって寸法よ。」

「くそっ……覚悟しておけよキース!!」

「何をだね?」

弁護士を呼ぶからな!

おあとが宜しい様で。

<町役場>
(大帝国BGM:穏やかな日常)
その頃町役場ではクーデターの後に
諸々のアフターケアーや
ステッセル一味によって食い物にされ、
ボロボロとなった市の建て直しの計画、
市長選の選挙のやり直し等々の仕事で
アストロコーギーの手も借りたい程の
多忙に追われており、
まさに蜂の巣をツツき返したかの如き
様相を呈していた。

そこでは正規の職員のみならず、
討伐軍として雇われた特体生や
元ライオンマインドの連中や
有志の一般市民も一致団結して
この多忙の状態に当たっている。

ヤラセとバードはこれからの町側のよる
悪政でにっちもさっちもいかなくなった
市政の自立支援の業務についており、
ミーナとのぞみは政変による市内及び、
市民に混乱が出ない様に尽力し、
キースや蒼生や扇奈達は革命後の
町の山積みになっている業務を徹夜でこなし、
そしてアルカネーゼとエレナは
町や市の周辺の鎮撫や警護に勤め、
それぞれが神懸かりのピッチで
自分の任務をこなしている。

そして数日程してひと段落着いた頃には
扇奈は狼牙軍団への帰投の旅を続ける事になり、
ヤラセにバードにミーナにのぞみに完柳斎に
他の討伐軍は町や市の復興及びこれからの
町の運営を担っていく者として、
蒼生は御庭番衆の総長に戻る事となり、
アルカネーゼにエレナは
蒼生につき従おう事になり、
そして山鉄は心を入れ替えて
真っ当に商売に精を出す事となる。

「本当に……私達なんかでいいんでしょうか?」

「ああ、ご覧の通り今この町は、
 人手が足りなくて非情に困っている。
 お前さん方の様な優秀な人材ならば
 大歓迎だってものさ。」

「そこまで言われては残らぬ訳にはいくまい。
 この老骨でよければいつでも手をお貸ししよう。」

「まー元々俺は一匹狼の冒険者、
 別に行く宛もねーしそろそろ落ち着くとするわ。」

「それもそうだな。
 いつまでも根無し草という訳にもいくまいし。」

「私もお二方に賛成です。」

次に町を去りゆくは扇奈と蒼生、
そして蒼生につき従って御庭番衆に就職する
アルカネーゼとエレナだ。
二人は蒼生への報酬として
大量のBストーン等を背負っている。

「このくだんもこれで
 ひとまずは終わりという事ですね。
 後の復興はキースさんとこの町の皆さんの
 頑張りにお任せいたします。」

「アンタとは腐れ縁だったけど、
 これでお別れって事さね。
 じゃあな町長。」

「おれ達は蒼生に着いていく事にするよ。」

「ああ、そうだな。
 散々手こずらせてくれたが、
 いざいなくなると寂しいものだ。」

「せは私もそろそろお暇させていただきますね。」

そして今回の計画において予想外の参戦者であり、
大きな役割を果たした扇奈だ。
名残は惜しいが狼牙軍団に帰るには
この町を去らなければならない。

「扇奈さん!!」

その旅立とうとする扇奈を呼び止める者が。
今回の計画において地下に閉じこめられていた
多くの囚人の逃亡を幇助した功績で
今迄の悪事が免除された山鉄だ。

「山鉄さんですか。貴方には本当にお世話になりました。」

「とんでもねえですよ。
 扇奈さんがいなけりゃおいらぁ、
 チンケな小悪党生活を続けていたところです。」

「ところで傷の具合はどうですか?」

「んなもんとっくによくなっ……ITEッ」

切断された腕の傷跡を心配する扇奈に対し、
山鉄はすっかり傷が治った事を
アピールしようとするが、
どうやらまだまだ完治とは程遠い様だ。

「早く元気になって下さいね。」

「へい。元気になったら今迄の
 ワルさをしていた分まで世の為人の為に
 全力を尽くして真っ当に生きやす。」

「そうですか。それはよかったですね。
 ついでと言ってはなんですが、
 これを受け取って下さい。」

別れの刻。扇奈は何故か腰の救急丸を山鉄に差し出す。

「え?」

「せめて腕の償いの意味で受け取って下さい。」

「ととととんでもねぇでがすよ!
 そんな大事なもの頂けやせんぜ!」

「あんなにも欲しがっていたじゃないですか。」

恐縮してどもりながらも山鉄は辞退するが、
扇奈は更に受け取る様に勧める。

「すいやせん、おいらみてぇなのに。
 しかしこれは預かるだけですぜ。」

「機会があったらまたお会いしましょうね。」

「また心が折れてダメ子ちゃんになりそうになったら、
 この刀を見て皆さん、特に扇奈さんを思いだしやす。」

別れを惜しむ山鉄は救急丸を大事に持ちながら、
扇奈に別れの言葉を述べる。

「それじゃあ、まだ。」

その言葉を皮切りにして各々はそれぞれ
自分の進むべき道に進んでいく。
それぞれの進むべき道が道がまた
交差していく可能性を示唆しながら。

予告
京堂扇奈「遂に新ホーリーフレイム・オルレアンの設立の時が来た。
       だが、最後の艱難がエクレールを待っていた。
       果たしてエクレールはオルレアンを設立する事が出来るのか!?」
エクレール「次回大番長AA『序章その二 「御旗の下に・最終章 終結」』」
狼牙軍団全員「立てよ人類!!

今週の特体生
三浦ゆか(Dr STOP!)
体力 経験 信頼 距離 気力 攻撃 命中 回避 治安 収益 給料
10 20 反抗 50 10 20 60 10
スキル 属性 対属性
憂鬱空間 通常 全て
憂鬱空間(気力3)〜戦闘終了まで選んだ敵の反撃率が0%/
              絶対回避

後書き
やっと本編のメインキャラがメインの話を書けました。
とりあえずは大幅にリニューアルも済ませました。
ミーナ達も再登場させたいと思います。(H29 7/02現在)
この調子では主役である狼牙がメインの話は
いつになる事やら……

次回の話で一応序章の半分辺りになると思います。
ストーリー上バトルが非常に多いSSですので、
序章の後半では2話くらいは戦闘メインの話を
入れていきたいと思います。


苦情などの感想はここへどうぞ。
また私の妄想に満ちたサイトは
http://shin-yaminokai.jp/
となっております。
よろしかったら是非遊びに来て下さいませ。


本陣へ撤退
本陣へ撤退
撤退
撤退