真・闇の会夢幻格闘化計画{Dream Duel Project}大番長After.Age表紙
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序章その二  「御旗の下に・第一章 邂逅」

序章その二・新規登場人物
嶌{シマ}美亜子
大番長本編で最初に仲間に出来る汎用キャラ。
本作ではメインキャラに昇格。
少年漫画におけるメガネくんポジションよろしく、
読者の分身みたいなポジションにいるキャラ。

ジャン=レオン
オリキャラ。
NAGASAKi孤児院を経営している神父。

昔は強盗稼業を営んでおり、
悪魔のジャンという異名で

 「犯す殺す奪う喰う飲む寝る遊ぶ」
の悪鬼の生活を送っていたが、

幼い頃のエクレールに出会い、善の資質に目覚める。
実力的にはジャンヌや死んだジャンヌの夫・セイル
匹敵する程の実力の持ち主。
フランスの某俳優に似ているとかいないとか。

阿寒湖まりも
ぷろすちゅーでんとGoodの主人公、
猿藤悟郎が
魔法で女性化して、
細胞レベルから女性化して

元に戻れなくなった魔法少女。
両界残高校を中退した事からも学歴は全く無いが、
かつては姫夜木研究所に属しており、
半年前に憂国機団の野望を挫き、
地球征服にやってきた
異星人の侵略を
退ける等の度派手な戦歴を有している。

今は食屍猿街{モンキーストリート}のワルを〆て君臨している。
5秒CM
阿寒湖まりも「この後は、ぷろすちゅーでんとGRエ……」
 エクレール「大番長AAですわ!!」

<−死魔根−>
(27 All The Time)
  この「御旗の下に」の話では、
 エクレールが老夫婦と分かれ、
 レジスタンス「新ホーリーフレイム・オルレアン」の
 旗揚げをするまでを描写する予定である。

 某月某日、
 死魔根のとある繁華街にいたエクレールは、
 そこで出会った狼牙軍団出身の
 嶌{シマ}美亜子と意気投合していた。

「私、嶌{シマ}美亜子。よろしくね。」
「私は……エクレールと申します。」

 屈託の無い飄々とした美亜子の自己紹介と、
 少々硬い感じがするエクレールの自己紹介で始まる。

「エクレールね…じゃあ……
 エクちゃんって呼んでもいい?」
「え、ええ……いいですわよ。」
「じゃあ、私は美{みっ}ちゃんでいいわ。」

 なぜエクちゃん、美ちゃんなのか判らないが、
 とにかくエクちゃん、美ちゃんらしい。

「ところで……エクちゃん、これからどうする?
 当てとかはあるの?」
「さあ……当てと言われましても……特に有りませんわ。」

 戸惑いながらエクレールは
 あてはないと答える。
 実際エクレールにしても
 当てとかそういったものは一切ないのであり、
 老夫婦から貰った金銭もそう多くは無く、
 戸惑いながら答えるのも無理は無い。

「だったら私と組まない?損はさせないわよ。」
「ええ、よろしいですわよ。」
「えっと……そうだ。先ずはご飯でも食べましょ。
 腹が減っては何とか、って言うしね。」

 何の脈絡もなくタッグが成立するや否や、
 美亜子はおもむろに明後日の方向を指差す。
 そこには一軒の中国系の飯屋が有った。


<−死魔根−とある飯屋>
(18 comical)
 その飯屋は何十年もの年月を経た
 古き良き飯屋の雰囲気を醸し出している。
 いや……飯屋というよりはむしろ屋台に近いと言える。

「さあ、どんどん作るアルよ!」
「へい、親方!!」

 厨房には所狭しと食材が吊り下げられており、
 一目で中国人とわかる店主が
 料理を作りながら若手の料理人を指導している。
 そしてエクレールと美亜子の座った隣には、
 みすぼらしい服装の老婆と二人の子供が
 具のまばらな鍋を突付いている。

「さあ、こっちぢゃよ。さあ食べよう。」
 子供達に食べさせる為、
 老婆はしわがれた手で具をよそう。
「わあ、おいしそう。」
「おいしいね。」

(23 silence..)
 嬉しそうに鍋を突付き、
 数少ない具を頬張る子供達をを横目に
 美亜子は苦々しげに愚痴を溢{こぼ}す。

「ふぅ、嫌な事を思い出すわね……。」
「嫌な事……ですか?」
「私も……元々はあの子達とと同じなのよ。」
「え?」

「私は家族の食い扶持を減らす為に
 奨学金制度で聖城学園に入学したの。
 あの時は1日にご飯は多い日で二食。
 しかも水増しした味噌汁が一杯。
 ……私……絶対に、このまま終わらないわ。
 絶対に故郷に錦を飾るんだ!」

 そう言うと美亜子は拳を握り締めながら、
 低く、しかし力強く呟{つぶや}く。

(32 terrible beat A)
 (SEワァァ……) 

 その時、突然店先が蜂の巣をつついた様に騒がしくなった。
 店先を見るといかにも凶悪そうな巨漢のチンピラが
 飯屋の店主の胸倉を掴んで脅している。
 どうやらただ飯を要求しているらしいアル。
 男はべん髪で体格は2m以上有り、
 男の腰にはこれまで凶器として使用されてきたであろう
 血糊のついた中華包丁が備え付けられており、
 その包丁はこのチンピラが恐喝の常習である事や
 恐喝に屈しなかった者の末路を雄弁に物語っている。

 「何するアルか!ワタシ、この店経営する店主アルよ!!」
  だが、その抗議も虚しく…… 

 「
アイヤー!!

 必至の抵抗も無意味と化し、
 
小柄な店主はチンピラの巨腕に
 首根っこ掴まれて投げ飛ばされ、

 老婆と子供二人の鍋の上に真上から落ちる形になる。

ひょんげ〜!うわぢゃ〜〜〜!!!!

 鍋の熱湯を背中に浴びた店主は、
 余りの熱さに悲鳴を上げ、
 くるいもだえるんだぞッ!

「わぁ!」

 無論、鍋も無事ではなく、
 鍋の中の具が呉服屋を開店したかの如く
 しっちゃかめっちゃかになる。
 勿論食べ物は地面に落ちる等して
 既に食べ物ではなくなっているが。

「これでもまだ俺様には只で食わせられねぇってか!?」
「あわわ……」
「てめぇのものは俺様のもの!
 俺様のものは俺様のものだ!
 さっさと言う事を聞けぇ!!」

 増長したチンピラは
 ガキ大将の様な自分勝手な理論を展開し、
 更に店主に恐喝行為を続行する。
 しかし無力な店主は
 その理不尽な暴力に脅えるしか出来ない。

「『うう……冗談じゃないわ。
  こんなところで怪我する訳にはいかないわ。』
  エ、エクちゃん……早く逃げよ。」

 チンピラの理不尽な暴力に
 美亜子は憤りを覚えるものの、
 自分が何も出来ない事を知っており、
 一刻も早くこの場を立ち去る事を
 エクレールに進言する。

「理不尽な暴力の為に目の前で人が困っているのに……
 何もしない訳には参りませんわ!」

 しかし元来良くも悪くも正義感が強いエクレールは
 その忠告を受け入れようとせず、
 その悪行を止めんとチンピラの前に立つ。

「ちょ、ちょっと…殺されるわよ!!」

 それに対して美亜子は
 必死で止めるが時既にお寿司、
 傍若無人に暴れていたチンピラは
 目の前のエクレールに気付き、
 ドヤ顔でインネンを吹っ掛ける。

「何だてめぇは?
 ぺしゃんこにされたくなかったらトトート引っ込んでな!」
「そうは行きません。
 貴方の悪行を黙って見過ごす訳には参りませんわ!」

 エクレールを一瞥したチンピラはゆーあーのっとまいまっち、
 即ち相手じゃねえぜとばかりに鼻であしらわんとするが、
 エクレールはチンピラのその言葉を却下する。

「何を〜!」
「この店はこの店の店主さんが必死に
 汗水垂らして築き上げた店です。
 それを壊していい権利など、どこの誰にも有りませんわ!」

 至極もっともな正論でエクレールは
 チンピラの悪行を咎めるが、
 訳の判らない小娘に咎められたくらいで
 悪行を思い留まるチンピラでは無い。
 むしろ火に油を注ぐ結果になったのは
 誰が観ても明らかでアルフォーヌ。

「それがどうした文句があるか!!?」

 その倣岸不遜な態度は、
 とても話を聞きそうに無い事を如実に示している。

「聞く耳無しですか……仕方が有りませんわね……
 では……しかと懲らしめて差し上げますわ!」

 その倣岸不遜な態度を見て
 説得が困難と判断したエクエールは、
 そう言うと腰のアリスソードを抜いた。
 ただ、鞘に納めたまま抜いたので、
 殺すつもりは毛頭無いらしい。

「へっ!!今の世の中この腕一本ありゃあ、
 Bストーンの方がついてくるのよ!
 てめぇなんざ一発で
なにをぱらだぁ!!

"SEドコオッ)

 エクレールに咎められた怒りを示すかの如く、
 チンピラの裏拳は後ろの柱を一瞬壊す。

 「はわわ……」

 その柱の惨状を見て、店主と美亜子は震え上がる。
 まあ、当のエクレールは全然動じていないので問題は無いが。

 「ねじり伏せてやるわ!
へやーっ!!

 目の前の敵であるエクレールを倒さんと
 轟音を立ててチンピラの拳が唸りを上げ、
 エクレールの顔めがけてまっしぐら!!

(27 All The Time)
"SEメキョッ)

 だがその拳はエクレールの
 正眼に構えた鞘付きアリスソードに
迎撃され、
 チンピラの指が複雑骨折してしまう。


 「あはら!!
  
あいとわあうぎゃへ〜〜〜〜!!

 エクレールに拳を破壊された……
 というより自分のパンチを剣に叩きつけて
 半ば自滅したと言うべきか。
 チンピラは複雑骨折した指の痛さに
 外見もクソも無く絶叫する。

「うえふが〜!!ふがもがけだぁ〜あ!!」

「これに懲りたら……
 二度とこんな真似はしないで下さいまし……!!」


おいへげえ……ひぎ、はげ、ほげ、おご、へげ、ぶっ……。

 目を瞑りながらエクレールは時代劇の侍の様に
 鞘に納まったアリスソードを腰に納める。
 当然拳を潰されたチンピラは
 激痛に悲鳴を上げながら尻尾を巻いてdコする。

「『つ、強い……エクちゃん、とんでもなく強い!!』」

アイキャッチ
嶌{シマ}美亜子「汎用キャラだって頑張ってるのよ!」


アイキャッチ
崎村竜二「崎村竜二は応援してくれる子供達を、決して裏切りはしない!」

<−死魔根−とある飯屋・夜>
(18 comical)
  場所は夜の飯屋に移る。
 店では店主が助けてくれた礼にと
 エクレール達に夕食を振る舞っている。
 エクレールの目の前のテーブルの脚が
 折れそうな程に乗っかった大量の御馳走は、
 店主の歓待振りを如実に物語っている。

「いや〜、アナタ滅茶苦茶強いアルよ。」
「助けていただいて、
  ホントに何とお礼を言ってよいやら……」
「そ、そんな事はありません…
 当然の事をしたまでですわ……。」

 そんな感謝の言葉に対し、
 エクレールはエクレールらしく謙遜している。

「それでは、失礼致しますわ。」

 食事も終わり、帰ろうとするエクレールに対し、
 ここで美亜子が重大な問題を提起する。

「ところで、何の当てが有るの?
 何れ持ちBストーンだって尽きるし……
 宿だって決まってないのに
 どうやってBストーンを稼ぐのよ?」

 美亜子が泊まるべき宿の無い事をエクレールに指摘する。
 確かにその指摘の通り、
 今日の……いや、今日のみならず、
 明日からの宿の保障等全く無いのである。

「まずは明日の飯の種や寝床を確保しなきゃ
 にっちもさっちもいかないわ。」
「あの〜……あんた達……
 もし宿無しスズメならわしのとこへ止まるといい。」

 その二人のその状況を見かね、
 老婆が今夜の宿の提供を申し出る。


<−死魔根−スラム街・老人の家>
(21 dash to trush 〜unpluged〜)
 スラム街の一角に、その老婆の家は有った。
 だが家というには余りにも質素な造りであり、
 アバラ屋と言った方がしっくりくる造りとなっている。
 まあ周りの住宅郡も同じ様な建物が多く、
 余り浮いた感じがしないが。

「まあ、汚いとこですが、さっさっどうぞ。」


<−死魔根−老婆の家の中>
「只今。」

 家に入ると、中では所狭しと多くの子供達が遊んでいた。
 中には風邪を拗{こじ}らせていて
 寝込んでいる子供もいる。
 一見するまでも無く貧困による
 劣悪な環境である事は察するに余りある。

「あ!お帰り!」
「お帰りなさ〜い。」

 劣悪な環境にも関らず、
 子供達は明るい挨拶で老婆を迎える。

「さあ、薬を買ってきたよ。これで熱も下がるじゃろう。」

 老婆はそれを入手する為の努力が見て取れる
 ボロボロの袋の中からビン入りの薬を取り出し、
 風邪で寝込んでいる子供に見せる。

「うん。」
「ちょっと狭いですが寝るには困りますまい。」

 そしてそう言ってエクレールと美亜子を
 寝る場所にまで案内する。

「ふぅ…今日も布団無し、か……」

 美亜子のボヤきを聞いて……

「すいませんね、子供が多いもので……
 わしの毛布ですがよければ……」

 老婆は自分の布団を渡そうとする。

「いいわよ、布団が無くても。」

 だが、美亜子は老婆のその申し出を断る。

「そう言わずに…客人に風邪をひかせる訳には行きませんじゃて……」

 そう言って、飽くまで美亜子に布団を手渡そうとする老婆だが……

「子供達に風邪を引かせたらどうするのよ?」

 と遠まわしに美亜子の子供達を気遣う言葉を聞き、
 布団を手渡す事を断念する。

「お客人……」

(25 Warm glow)
「お婆さん、この子達は?」

 すやすやと寝息を立てて寝ている子供達を見ながら、
 エクレールは老婆に子供達の詳しい事を問う。

 「は、はあ…皆、両親に先立たれた孤児達ですじゃよ。
 それでわしが見てるんじゃが、
 今じゃみなわしの可愛い子供達じゃ。
 病気の子もいまして面倒を見ておるんですが…
 薬代にも事欠く次第で……。」
 「そうですか……。」


<−死魔根−
  食屍猿街{モンキーストリート}・ならず者のアジト>
(32 terrible beat A)
 ところは死魔根一帯を荒らしまわっている
 食屍猿街{モンキーストリート}のならず者達のアジトに移る。
 そのアジトはスラム街よりも更に暗く、
 地面には怪しげな色をした水溜まりが散存し、
 そこら辺に物や機械の残骸が散乱しており、
 更にアジトをなしている建物自体が
 バラックを中心としたとても建物とは思えない代物であった。

 ならず者に限らず悪者のアジトというのは、
 どうも決まって暗くてじめっとしていや〜な、
 ダークな雰囲気を醸し出している、
 と相場が決まっているらしい。

 そこでそのならず者集団の頭目である
 阿寒湖まりもとその子分達が
 対立するならず者集団を蹴散らし、
 そのボスを取り囲んでいる。

「くそっ!俺達の縄張り{シマ}でやりたい放題好き勝手しやがって!!」

 ボスはそう強がっているものの、
 既に手下は全てトンコ、残る戦力は自分一人、
 そして手に持っている山刀一本という有様である。

「ヘィヘィヘィ、これからはこの一帯は俺達の縄張り{シマ}だぜ。」
「悔しかったらかかってくるアル!」

 まりもの子分二人が味方の圧倒的優勢をいい事に
 調子に乗って挑発伝説の言葉をかけ、
 ボスに対して嗾{けしか}ける。

「死ね矢コラー!!」

 無謀にもボスはその挑発に乗って
  山刀でまりもに斬りかかる。
 が……


(
SEガシャーン)

「〜〜〜ッ!!!!」

 まりもの左拳が山刀を粉々にし、
 そして、右拳がボスの顎を捉え、
 その一撃はボスを瞬時に戦闘不能に導く。

 「きゃばっ!!

 戦闘不能になったボスは、
 見事に車田吹っ飛びで
 錐揉みしながら壁に叩き付けられ、

 そのまま病院送りとなった。

(SEバァン)
 「まりもの姐御!」

 その時、いきなり慌ただしく子分達が入ってきた。
 その様子からかなり急いできたらしいという事が推測される。

「あんだお?そんなに急いでどうしたい?」
「見つけましたぜぇ!!兄貴をやっつけた女を!」


<−死魔根−飯屋>
(32 terrible beat A)
 ところは再び飯屋に戻る。
 飯屋の周りには殺気だったまりもの手下が
 大勢飯屋を取り囲んでいる。
 これらはエクレール達が飯屋から逃げられない様にする
 人の壁も兼ねているのであるが。

 もっとも、エクレールが本気になれば
 無傷で飯屋から逃げる事などは
 飯屋だけに朝飯前ではあるが、
 無論正義感の強いエクレールが
 飯屋の中の人々を見捨てて
 逃走を図る様な真似をする筈が無い。

「オメーか……おれの舎弟をイワしたって
 エクなんたらってスットコドッコイは……
 ファロンだかマルティなんたらだか知らねえが
 百倍にしてもっさもさ返してくれるぜ!」

 そう言って指をゴキゴキと鳴らしながら、
 まりもはエクレールに一騎打ちを申し込んでくる。

「貴女は……どなたですか?」
「おれの名は阿寒湖まりも、
 この街を裏から仕切っている親分だ!」

 エクレールの問いに対してまりもは
 威勢良く啖呵を切りながらドヤ顔で名乗り上げる。

「そうですか……ところで……
 貴女は何の為に戦っているのですか?」

 一息ついて、エクレールが戦う理由を尋ねる。

「な、何言ってんだ?」

 見当違いなエクレールの問いに、
 まりもは一瞬「ハァ?」な顔を浮かべる。
 まあ無理もないが。

「腕に自信がお有りの様ですが、何の為に戦っているのですか?」

 再び同じ質問を繰り返す。

「ハァ?何訳を判んねぇ事を言ってやんだよ!!」

 だがその質問の意図と内容を把握出来ていないまりもは、
 怪訝な表情で毒づく。

「……どうやら、何も考えておられない様ですわね。
  どうですか、貴方の力を私達に貸して頂けませんでしょうか?」

 エクレールのいきなりの青田刈り、
 即ち寂海王レベルのヘッドハンティング。
 余りにも唐突な申し出に、
 まりもは一瞬困惑の表情を禁じ得ない。

「何だぁ!?いきなりそんな事言われて
 ハイソーですか言うと思ってんのかよ!!」

 当然、まりもはそのいきなりの青田刈りを拒否し、
 エクレールをブン殴る。

「うわぁっ!」

 まりもの鉄拳でエクレールが
 吹き飛ばされたものと早合点し、
 美亜子は即座に両手で目を覆い隠す。
 だが、その拳は虚しく宙を切っていた。

「どうしました?そんな事では私は倒せませんわよ!」

 エクレールが珍しく挑発のセリフを述べる。

「ハターリいってんちろくじゃねえぞいいとこの姉ちゃんよぉ!
 オメーのその覚悟がモノホンか試しちゃる!!」

 その挑発セリフがまりもの鶏冠に来て、
 まりもは本気の大振りの一撃を繰り出す。
 そのジャブの速さをもったストレートは
 正に東洋の神秘・中国拳法であり、
 確実にエクレールの顔を打ち抜いて
 顔面陥没であの世まで飛んでいくねーッ!!

 ……と思ったらまりもの拳は髪一重でいなされていた!!
 拳をいなしたのは両腕のうちどっちだ!!?
 右か!?それとも左か!?
 り…りょうほーですかあああ〜!!!?
 もしかして脚ですかーっ!!?

 
意外! それはもみ上げ!!

 断末魔の一瞬!
 エクレールの中に潜む
 目に余るほど防衛現象{ガード・フェノメノン}が、
 途轍もない奇妙な冒険心を生んだ!!

 普通の人間は拳を顔面に打ち込まれた場合、
 かわそうとか防ごうという考えを持つのに
 逆に失敗したらあの世まで飛んでいくねーッ覚悟で
 一歩踏み込んで!!
 かの秘密結社の改造人間{サイボーグ}並に
 豊かなもみ上げを使って拳をいなしたのだ!!

 まりもの膂力は
 エクレールをもってしても勝利するのは難しく、
 短期決戦でカウンターの一撃に賭けたのである。
 そしてそこへアリスソードによる
 首へのカウンターの斬撃が迎え撃つ。

『くっ!何て奴だ!!ハターリじゃナッサブル!!
 こいつぁ自分の命{タマ}の危機に動じねえ覚悟がある!!
 そして!!恐怖や苦痛みに耐える精神力がある!!
 やめりゃあよかった……
 こんな屈強女{スケバン}に喧嘩ふっかけるなんて……!!』

 アリスソードの鋭刃がまりもの首を捉えるが、
 その刃は首筋で寸止めされた。

「これ以上戦うのは意味が有りませんわ。」

 そう言うと、エクレールはアリスソードを鞘に収める。

「おのれぇ!」
「よくも姐御を!」

 まりもが負けた事に飯屋を囲んでいた手下達は激昂し、
 エクレールを凹らんものと店屋の中に乱入する。

 「
やめろぃ!!

 だが、それらの暴挙はまりも自身によって制止される。

 「こいつはオメーらの敵う相手じゃあねぇよ。」

  まりもはそう言って手下達の行動の愚を諭す。

「し、しかし……」

 だが、手下達は納得しないらしく、
 口々に異議を申し立てる。

「この喧嘩はおれの完敗だ!
 これ以上グダグダ言いやがるとぶっ飛ばすぞぉ!!
 その淑女{マドモワゼル}に手を出すこたぁ、
 この阿寒湖まりもが許さねい!!」

 まりもは更に異議を申し立てる手下達に、
 これ以上の異議は実力を持って阻止すると言い、
 手下達の報復行為を断念させる。


<死魔根ー街外れ−>
(27 All The Time)
 場所は死魔根の街外れに移る。
 エクレールと美亜子、そして黄昏れているまりもがいる。

「おれは今まで自分の力だけを頼りに生きてきた。
 ……取り敢えずは自分の思い通りに
 ならねえ事は何一つなかったし、
 その辺の奴には無論、
 そこいらの魔族にも負けた事が無かった。」

 まりもはそう言うと、拳を握り締め、更に続けた。

「分っていたさ……満たされていたさ。
 だけど……満足サティスファクションしてはいたけどよ、
 心のどこかで虚しさも感じていたんだ。
 どんな狭い街中で力を誇示して
 ブイブイデュエッデュエッと言わせたところで、
 所詮は井の中の蛙……。
 だが如何すれば大海にを出られるのか、
 それすら判らねぇんだ。
 おれって馬鹿だし今現在大した目標も無い
 絶賛燃え尽き症候群からな……。
 そんなおれの心の不満足を……
 目を見ただけで一発でアンタは見抜いちまった。
 しかもおれには見えない何かをあんたの目は見てやがる。
  一体、アンタは何をしようとしているんだ?」

「私ですか……?私も……。」

 一瞬空を見て、間を置いた後、エクレールはおもむろに話し出す。

「私もかつては貴女と同じでしたわ…。
 そんな私でも……
 一人の女性に出会った事で変われたんです。
 私は、彼女と再会した時に、
 誇れる様な私になっていたい……
 だから、私は彼女の為に世界を変えて見せますわ。」
「へぇ……一人の女の為にねぇ……。」


 <
−死魔根−婆さんの家>
 再び婆さんの家に移る。
 だが、婆さんの家の中は何故か人っ子一人おらず、
 外には一人の神父と婆さんと子供達がいた。

 神父の名はジャン=レオン。
 かつては悪鬼のジャンと呼ばれて
 悪行狼藉の限りを尽くしていたが、
 幼い頃のエクレールと出会ってから改心し、
 その後神父になった男である。

「おお、エクレールさんに美亜子さん。」
「お姉ちゃ〜ん!」

「お婆さんに……ジャン神父!!」
「エクレール……久し振りだね。」

 婆さんと子供達が嬉しそうに挨拶し、
 ジャン神父が会釈して
 エクレールは深く頭を下げる。

「一体、これはどういうでしょうか?」
「それがここにおられる神父様が
 子供達を引き取ると申し出て下されましてな……。」
「神父が……。」
「孤児院は施設もしっかりしてましてな。
 これなら病気の子でも安心ですじゃ。」

(32 terrible beat A)
(SEギャルルルルッ)

 「うわぁ!」

 その時、突然降って沸いてきた様な魔族の襲来。

(07confront the enemy)
 【デスマッチ 
 阿寒湖まりも、エクレール、ジャンvs魔族】


 まずは肥った魔族サムタン(仮名)がまりもに突っかかる。
 サムタンはその巨躯を活かして全身を
 アルマジロの様に丸くなって飛んでくるタックル技、
 アルゴスローリングサンダーアタックをかますが、
 まりもに呆気なく棒先一つで止められ、
 まりもの棒でビリヤードの球にされてしまい、
 周りの魔族にぶつけられてしまう。

 次に羽を持った魔族デバレス(仮名)が
 空中からエクレールに襲いかかる。
 これぞ空中殺法・翻飛{ファンフェイ}。
 しかし何度かエクレールを翻弄して
 ダメージを与えたものの、
 特体生に同じ技は通じず、
 交差気味に切り落とされてしまう。
 
 そしてリーダー格の魔族ダーシル魔(仮名)が
 姿を見せなくする秘術を……
 見せる暇もなくジャン神父に瞬殺される。
 一応ジャン神父は当SSでは
 トップクラスの実力の持ち主という設定であるので
 仕方がないと言ったら仕方がないが。
 
 そして残る魔族もまりも一人倒せなかったのに
 この三人を倒せる訳が無く、
 あっけなく全匹倒される。だが……


(SEゲェゲボォッ)

  魔族の最後の一匹が最後の力を振り絞って
  不味いドリンクに酷似した妖気弾を吐き、
  その凶弾が子供達を襲う。
  「危ない!!

(32 terrible beat A)

  その瞬間、エクレールの全身の毛という毛が逆立り、
  エクレールの周囲の空気が鉛の如く重くなる。

  これぞ疾風{ヴィート ヴァン}!!!!!
   初速からいきなり最高の速さに達する足の運びで、
  一瞬の内に間合いを詰める幻の体技。
  日本では神速と呼ばれる絶技である。

  絶対無音にして白黒の世界の中、
  背中に黒い翼を宿し、エクレールは疾走りだす。
  絶対に届く筈の無い距離を一気に詰めていき、
  そして自らを盾にしてにして
  妖気弾の餌食になろうとしていた子供達を助ける

 「エクちゃん!!」

(27 All The Time)
 幸いな事に黒い翼が盾となり子供達は無傷で済み、
 エクレール自身も
さして傷を負っていなかった。

「……間一髪……ですわ。」
「ふぅ〜……普通なら死んでるわよ。」

 エクレールの無事を確認し、美亜子はどっと冷や汗をかく。

「な、何故こんなムチャな事を!!?」

 当然ではあるが、まりもが何故こんな事をしたのかを聞く。

「ええ、そうですわね。全く……
 自分でも無茶だと思いますわ。
 でも、こういう性分なんですの……
 こういうのを見ると放っておけなくて……。」

 その問いにはにかみの微笑を浮かべながら
 エクレールは屈託無くそう答える。
 その答えを聞いてまりもの心には
 言いようの無い昂揚感が湧き出てくる。

『この女、自分のしている事が判った上でこんな事を……
 こいつ、マジか!!?限りなく甘っちょろい奴だぜぃ!!
 マジ正真正銘の精神的に淑女{マドモワゼル}だ!!
 何かよォ……こんな馬鹿だけど
 無条件に熱い女に出会えるなんて
 何だか無性にうれしいぜ!
 この女が何処にいこうとしているのかは知らねえけんどよ、
 だが……だが、んな事ぁどうでもいい!
 マジで気に入ったぜ……おれは……
 おれは無性にこいつについていきたくなったぜ!!』

「やっぱりスゴイ……エクちゃん、ホントに凄いわ!」
「エクレール……アンタに見せたいものがある。」

  ここで昴揚感に昂ったまりもが何かを言い出す。

<−死魔根−スラム街・ならず者のアジト>
(30 Big Bang Age)
 場所はスラム街のまりも達のアジトに移る。
 まりもの後ろには子分達が全員勢揃いしていた。

「こ、これは……」

 その光景に圧倒され、
 美亜子は口をパクパクさせる事しか出来ない。

「こいつらはおれの子分だ。ざっと二百人はいる。
 エクレール……おれはアンタに命を預ける!!
 こいつらも一緒にだ!!」

  まりもがそう言うと、
  まりもの後ろの子分達が一斉に頭を下げた。

「おれ達は一人一人じゃ何も出来ねえ……
 どうしようもねぇ落ち零れのスットコドッコイだ……。
 街で大きな顔をして威張って
 いたずらに力を誇示しているだけで
 何の目的も糞もあったもんじゃねえ
 只の無法者の集まりだい。
 だが、そんな食み出し者のおれ達でも……
 こんだけ集まればきっと何が出来ると思うんだ。
 おれ達はアンタにかけたんだ。
 なあ頼むよ……おれ達の……おれ達の夢の代表になってくれ!!」
「まりもさん……。」

「おっと、おれの事はまりもでいいぜ。」
「ええ……解りました……
 貴女方の気持ちは、ありがたく頂戴致しますわ。」

 エクレールはまりもと契りの握手を交わす。

「ああ、そうそう。アンタに託したいものが有る。」

 まりもは、そう言うと懐のポケットからメモ帳を取り出す。
 そのメモ帳はとても古びていて、
 数々の修羅場を潜り抜けてきた事を如実に語っていた。

「……おれは1年前、
 Bストーンの採掘で一山当てようとした事があった。
 おれが発見したその場所には、
 おそらく膨大なBストーンが眠っている。」
「確かなの?」

 美亜子が事の真偽を確かめるべく質問を投げ掛ける。

「ああ、間違いはねえ。
 だが、そこは今となっちゃあ亡霊の住処となって、
 とても人が留まる事は出来ねえ。
 そんな土地でも早い時期から開発すれば、
 成功は確実だった。
 だが、あと一歩というところで……
 だがアンタなら出来るかも知れん。このメモをアンタにやろう。
 それをアンタの……そしておれ達の夢の為に役立ててくれ!!」

「まりも……ありがとうございます……!!」

 こうして、
 新ホーリーフレイム・オルレアンの旗揚げに一歩近付いた。

予告
斬真豪「早川家に財政的支援を求めにいくまりも。
     だが、早川家では重大な事件が勃発していた.
     まりもは果たしてどう動くのか!?」
阿寒湖まりも「次回大番長AA『序章その二 「御旗の下に・第二章 再会」』」
狼牙軍団全員「立てよ人類!!

今週の特体生
ジャン神父(オリジナルキャラ)
体力 経験 距離 信頼 気力 攻撃 命中 回避 治安 収益 給料
200 70 90 130 50 99 50 80
スキル 属性 対属性
神の拳 白魔 黒魔・魔族
神の拳(気力3)〜攻撃力1,5倍・絶対回避・絶対命中

後書き
二話から早速大番長以外のキャラを出しました。
ちなみにオリキャラのジャン神父のモデルは
御察しの通りジャ○=○ノです。

美亜子は最初に仲間になる汎用キャラであり、
非常に愛着がありますので
これからもエクレールの初代相棒、
そして読者の代表的なキャラとして
バンバン出していきたいと思います。

ついでにまりもがエクレールに渡したメモは
後々の伏線にしようと思っております。


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また私の妄想に満ちたサイトは
http://shin-yaminokai.jp/
となっております。
よろしかったら是非遊びに来て下さいませ。


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