真・闇の会夢幻格闘化計画{Dream Duel Project}続・聖夜の天使達

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第 五話「光と影の邂逅」

<−エクレールの夢の中ー>
(35 Kamui @)
 再びエクレールの夢の中に現れるイデア。
 相変わらず、輪郭だけで姿は見えない。

「ねぇ、エクレール……マリーシアが好きなの?」

「誰なんです?」

「エクレールの好きな人はみんな嫌い、大嫌い!!
 まず、マリーシアから殺してあげる!」

「すぐに逢える……もうすぐ逢えるよ……
 もうすぐ……もうすぐだよ。」

 くすくすと笑いながら、
 再び溶け込む様に消え去る。



<−どこかの部屋ー>
(35 Kamui @)
 真っ暗で閑散とした部屋の中、
 たた一人のイデア。

 部屋の中にはほとんど何も無く、
 無機質な壁に覆われた部屋には
 灯りすら無く、暗闇に包まれている。

「クス…早くエクレールと遊びたいな……。
 エクレールの好きなものはみんな嫌い!!」

 そう言うと、イデアは部屋の隅に有った
 水銀の球を人差し指の先に乗せ、
 狂々{くるくる}と回す

「エクレールの大好きなマリーシアを、
 真っ赤な血で染めて上げる。」

「綺麗に引き裂いてあげる……。
 クスクス……楽しみだなァ。
 あたしのエクレール……。」

 暗闇の中、イデアの笑い声だけが
 不気味に響き渡っていた。



<−聖城学園−>
(08 Make me funky)
「行こう。」

 突然、何かを決した様に、
 エクレールがマリーシアに語りかける。

「行こうって……どこに……ですか?」

 当然、『いつ、どこに、何の為に行くのか』という
 疑問が沸いてきたマリーシアは、
 エクレールに質問する。

「敵のところへ……。」

「敵のところ……?」

 訳の分からない発言に、
 マリーシアが少々困惑した表情を浮かべる。
 
「確かめたいンだ。」

「何を確かめたいの?」

「相手が何を考えているのかを確かめたいンだ。」

「相手が、何を望ンでいるのか理解らないまま
 ただ戦うのは……もう嫌だから……。」

 かつての独り善がりで、正義の味方気取りで、
 相手の事を何も知ろうとしなかった自分を
 思い出しながら、そう呟く。

「そう……ですか……。」



<−真宿−何処か判らない荒廃した場所>
(23 silence..)
 真宿の荒廃した廃ビル群。
 エクレールとマリーシアに容赦無く
 刃の如き突風が吹き付ける。


(35 Kamui @)
「ようこそ。招かれざる侵入者よ。」

「……?」

 いつのまにか、エクレールの後ろに
 気付かれる事も無く人が立っていた。
 その男、Drラグナロク。

「……あなたは!?」

「人に名前を問う時は、まず自分から名乗るのが礼儀だが……」

 どことなく人を見下した様な目で話し掛ける。
 メガネの内の目は見えず、口元は二ィ、と笑っていた。

「狼牙軍団所属……マリーシアと申します。」

「同じく……エクレールと申します。」

 礼儀という言葉を知っているのか?、と
 突っ込みを入れたくなるが、
 一応礼儀正しく名乗りを上げる二人。

「私はDrラグナロク。暗黒鳳凰団の総帥{フューラー}だ。」

 倣岸不遜な態度かつ、自分の正体を隠そうともしない、
 自信に満ちた話し方で答える。

「あなたが……総帥{フューラー}!?」

「その通りだ。」

「あなた達の目的は、一体何なんですか?」

「ふむ……そうだな。」

 しばしの沈思黙考の後、割とあっさりと答える。

「人類を破滅の危機に追い込み、
 人類を神人{ゴットメンシュ}に進化させる……。」

「一言で言えばそういう事になるな。」

「それが暗黒鳳凰団の最終目的だ。」

「……!!」

 組織の目的を包み隠さずに話すところに、
 Drラグナロクの恐るべき自信が伺える。

 それでなければ、組織の最終目的を
 敵であるエクレールやマリーシアに明かす筈も無い。

 だが、裏を返せばエクレール如きに知られたところで
 何の支障も無いという、ある意味
 エクレールを人と思わない態度であった。

「ところで、如何でもいい話だが……。」

 エクレール達を見下した様な眼差しで、
 再び話を続ける。

「お前達の言う、汚れた者達とやらと釣るんでいる事について、
 一言感想を聞かせて貰おうか?」

嘗めないで!!私は……いえ、私達は……
 もうあの頃の私達ではありませんわ!

 そう言うと、エクレールは過去を振り切るかの様に、
 間髪を入れずに抜剣する。

「フ……呆れたものだな。」

 それを見て、皮肉に満ちた笑いを込めるDrラグナロク。
 そして……

「イデア。しばし相手をしてやれ。」

「判ってる……。」

 少女の名前を口にすると、雲散するが如く消え去るDrラグナロク。

 前から人影が現れ、対峙するエクレールとイデア。

「やっと……やっと逢えたねエクレール!」

 やっとエクレールに逢え、満面の笑みを浮かべるイデア。
 それは態度にも顕著に出ていた。

「な、何故私が……?」

 自分と瓜二つの少女の出現に、
 ただ驚愕するしかないエクレール。

「こんにちはエクレール……。あたしはイデア。」

?」

 エクレールとイデアの間にはかなりの距離があったが、
 イデアは驚異的な跳躍力でその距離を無に等しいものにする。

「逢いたかったよエクレール!
 だって、ずっと夢の中でしか話せなかったもの。」

「エクレール、遊ぼう!」

 愛剣を抜き、エクレールに突きつける。

「如何して私達が戦わなければならないんですか!?」

 イデアの一方的な遣り取りに、
 困惑の色を隠せないエクレール。

「だって……だってエクレールの事、大好きなンだもン、あたし!!」

きゃあっ!」

 イデアの鋭い剣撃がエクレールを襲う。
 間一髪防御したものの、吹き飛ばされる。

アハハ!可愛いよ!エクレールの叫び声!大好き!
 もっと可愛い声聞かせてよ!」

 フラフラと立ち上がるエクレールを見て、
 狂気の哄笑を上げる。

「あたし、エクレールと同じ技なら何でも使えるよ!
 だって……」

「だって、あたしはエクレールなンだもン!」

「エクレールと同じだよ……だからね……え!?」

 その時、横のマリーシアがエクレールを助けに来る。

「大丈夫ですか、エクレール!?」

「マリーシア!」

「エクレールと遊ぶのを邪魔したな……!」

「お前はエクレールが好きな仲間だな!
 丁度いい……エクレールの前で引き裂いてやる!

 エクレールとの一時を邪魔され、激昂するイデア。
 その双肩は怒りで打ち震えている。

「エクレールはあたしのもの、他のコと仲良くしちゃダメ!」

「どうしてエクレールがあなただけのものなんですか!?」

 当然の疑問を投げかけるマリーシア。だが……

「エクレールはあたしだけのものだ!あたしとだけで遊ぶんだ!」

 答えになっていない支離滅裂な答えを返し、
 愛剣を突き付ける。

 そして、マリーシアにかかろうとするイデア。だが……

「マリーシアに怪我をさせたら……絶対に許さない!!

 エクレールがイデアとマリーシアの間に
 毅然とした態度で立ち塞がる。

「エクレール……何で!?……あたし、エクレールが大好きなのに…
 エクレールと遊びたいだけなのに……!!」

 悪戯を咎められ、言い訳をする子供の如く、
 イデアはエクレールに話し掛ける。

「エクレールは判ってくれるよね!?」

「言った筈だ……。」

 子供が親に同意を求めるかの様にエクレールに同意を求める。
 だが、エクレールはその言葉に耳を貸さずに続ける。

「マリーシアを……大切な仲間を傷付けたら絶対に許さない!!」

(32 terrible beat A)
【デスマッチ マリーシア、エクレールvsイデア】

 膠着状態。だが、エクレールは立っているのがやっとである。

「何だ、結構弱いのね……。」

 あからさまに期待外れ、といった態度を示す。

 その時、ヴァルシオンから放たれた衝撃波がイデアを襲う。
 それを間一髪、紙一重で交わすイデア。

誰だ!?

 イデアが振り返ると、一際高い廃ビルの屋上に
 腕を組んで踏ん反り返った格好で神風戦士ダルクがいた。
 
 その姿を見て、エクレールとマリーシアは
 思わずジャンヌの名を口にする。

「「ジャンヌ様!!?」」

「ジャンヌ様?ん〜何の事かな?」

「私は神風戦士ダルクだ。
 断じてジャンヌでは無い。」

 ダルクは、即座に自分がジャンヌである事を否定する。
 だが、誰が見てもジャンヌじゃあんか、もとい
 ジャンヌである。

「え?」

「ジャンヌでは無い、と言ったのだ。」

とぅ!

 ダルクは廃ビルの上から一気に飛び降りる。
 常人ならば確実に潰れたトマト、
 即ち即遠い世界に旅立つ事になろうあろう高さを
 難無く降り立つ。

「エクレールよ……ここは去れ。後は私に任せるが良い。」

「そ、それは出来ませんわ!!」

ふん!

「う……」

 エクレールが自分の提案を拒否したと確認するや否や、
 いきなり首筋に手刀を放ち、エクレールを気絶させる。

「マリーシア。」

「は……はい……!」

 横のマリーシアを一瞥し、気絶しているエクレールを託す。

「エクレールを……頼む。」

「はい……。」

 エクレールを背負って立ち去るマリーシア。
 何故か、ダルクの背中に懐かしいものを感じながら。

「待たせたな。始めようか。」

殺してやる!!

 そう言い放つや否や、愛剣をダルクに向ける。
 そして、戦闘開始を告げるが如く突風が二人を襲う。

シャアァァァァ!!!!

 ダルクの必殺の一撃『赤い彗星{ルージュ コメート}』が
 合図となり、激闘が始まる。

【デスマッチ 神風戦士 ダルクvsイデア】

 押され気味のイデア。後ろに飛び、間合いを取る。

「エクレール……強くなって……。
 強くなってあたしと遊んで!!」

「また逢おうね。次は……」

「マリーシアは絶対殺す!!」

 マリーシアの殺害を宣言するイデア。
 その目には、爛々たる狂気に満ちており、
 まるで爬虫類の目に酷似していた。

「最も辛くて、最も苦しい方法で……」

殺してやる!!

 そう言い放つと、闇の中に消え去る。



<−エクレールの夢の中−>
(23 silence..)
 真っ暗な世界に一人ぼっちのエクレール。
 空中には、今までのエクレールの記憶が流れる。

「あれは…マリーシア…もし、彼女に出会わなかったら……
 どうなってたんでしょうか……。」

 暗闇の中を宛ても無く、ふらふらと彷徨う。

「一緒に一生懸命戦った……狼牙さん達と戦うまでは
 殆ど知らなかったけど……仲間になれたから、
 力をあわせて頑張れた……。」

「みんなを護る為に戦えた……もしマリーシアに逢わなかったら……
 どうなってたんでしょうか?」

「マリーシアは大切な……大切な仲間……
 二人一緒だからこそ最後まで戦えた、大切な大切な仲間……。」

「もし、マリーシアがいなかったら……。」

「「どうなってたンだろう?」」

 何気なく漏らしたエクレールの呟きが、
 期せずしてイデアの声とシンクロする。

(35 Kamui @)
 エクレールが後ろを振り向くと、
 いつのまにかエクレールの記憶にイデアが立っている。

「イデア!?…何故ここに……!?」

 予想もクソもあったものではない訪問者に、
 驚愕するエクレールを見ながらイデアが話し掛ける。

「何故?あたしはエクレールだもの。」

「だからエクレールの事は何でも知っているンだよ。」

 中腰になりながら、エクレールを見つめる。
 その眼差しは、まるで猫科の動物の目に酷似している。

「ねぇ…もし……。」

「もしマリーシアに出会わなかったら、
 こンな苦しい想いはしなくて済ンだ……。」

「そう思った事って……無い?」

 宙を浮いてエクレールに近付き、
 まるで提案するかの如く問い掛ける。

違う!

 何かを振り払う様に、イデアの問いに即答で否定する。

「確かにあの時は苦しかったけど……
 でもそれはボクが決めてやった事なンだ!
 マリーシアのせいじゃない!」

「でも辛かったよね!痛かったよね!」

 エクレールの耳元に口を近づけ、
 悪魔が囁く様に猫撫で声に似た声で囁く。

「ねぇ、こう思わない?」

「もしね、もしこの日本が消えちゃえば……
 こンな辛い事をしなくて済んだンだよね。」

「日本なンか消えちゃえば、
 こンな苦しい事をせずに済ンだンだよ。」

 掌に日本列島の形を模した炎を作り出し、
 そしておもむろに握り潰す。

 その行為には、明らかに憎悪が籠っていた。

「辛かったけど……でも二人で頑張ったから……。」

「じゃあこれは?」

 イデアが、血塗れのジャンヌの姿になる。

「ジャンヌ様を死なせたンだよね。」

 元のイデアの姿に戻る。

「……苦しかったね。……辛かったね。
 こンな事、したくなかったよね!」

「この頃のボクは……正義の味方気取りで、狼牙さん達の戦う理由も、
 本当の心も判らずにただ独善的に戦ってた……。」

あンなに悲哀しい戦いだなンて知らなかったンだ!!

 エクレールが目尻に涙を浮かべながら叫ぶ。
 
「そう…知らなかったンだよね。
 でも……死なせたンだよね、ジャンヌ様。」

「辛かったよね……哀しかったよね……。」

「うう……。」

 返す言葉も無く、嗚咽を漏らす。
 その姿は、必然的に顔を俯{うつむ}かせた直立状態になる。

「辛かったよね…。前の戦いでエクレールは
 心に深い傷を負ってしまった……。」

巻き込ンだのは、日本の汚れた連中だ!

 突如、イデアの目に怒りの炎が宿り、
 拳を握り締める。

「可愛そうなエクレール……傷付けられてしまったエクレール……。」

「エクレールをこンな目に遭わせたのは、汚れた連中だよ!!」

「あいつらが汚れた力に染まったから
 エクレールがこンな目に遭ったンだ!!」

 怒りに身を震わせながら、
 エクレールに訴えるが如く話し掛ける。

「そンな汚れた連中、守る事なンて無いよ。エクレール……」

 目から怒りの炎が消えた後、
 イデアはエクレールの耳元で囁く。

「ねぇ……」

「もう日本の事も、汚れた連中の事も忘れて一緒に遊ぼう……。」

「一緒に遊ぼう……みンな忘れて楽しく遊ぼう……。」

「エクレール……大好き。エクレールがいれば何もいらない。
 さあ、こっちへおいで……エクレール、おいで……。」

「マリー…シア…。」

 エクレールの前に移動し、優しく手を延ばすイデア。

「おいで……。」

 エクレールを抱きしめるイデア。
 エクレールの目の焦点は既に合っていない。

「もう…もう何も心配する事なンかないよ。
 あたしと一緒にいようね。」

「あたしの事だけ考えて……。あたしだけを見て……。
 他の誰も心の中に入れちゃダメ……。
 許さないンだから……!」

「マリーシア……。」

 エクレールの口からマリーシアの名前が洩れる。
 それを聞いて、イデアは明らかに不愉快な顔になる。

「まだマリーシアの事を覚えているの……!?」

(30 Big Bang Age)
 エクレールの体が激しく光る。

「二人一緒に大切なものを護る為に戦おうって約束したンだ!」

「約束は守る!マリーシアは……
 二人で交わした約束は絶対に守ってくれるから……!」

「そう…ボクはマリーシアの事を信じる!!」

 エクレールの脳裏にダルクの言葉が響く。

「思い出すのだ!!エクレールよ!」

 今度はダルクの声だけでなく、姿も浮かんでくる。

「どんな時も自分を……仲間を信じるのだ!!
 信じて願い続けるのだ!!お前の願いを!!!」

「私の…私の願い……。」

「自分自身と戦うのだ。
 エクレール、闇に飲み込まれるではない!!」

「そうだ……ボクは約束したンだ!
 マリーシアやみんなと……」

 エクレールの脳裏にこれまでの
 マリーシアとの思い出が次々に浮かんでくる。

「そして自分自身と!」

ボクは自分自身の心の為に戦うンだ!!!!」

きゃあああああっっっっ!!!!!?

 拳を握り締め、力の限り叫ぶ。
 途端、エクレールの全身が力強く輝き始め、
 イデアがエクレールの夢の中から追い出される。



<−NAGASAKI・神風戦士 ダルクの隠れ家−>
(27 All The Time)
 何処かのアバラ屋。直立不動で立っている神風戦士ダルクと
 横になって体を休めているエクレールがいる。

「あれ?ここは……?」

「私の隠れ家だ。」

「ジャンヌ様……痛{つ}ぅッッ!!!」

 立ち上がったエクレールの全身に激痛が走る。

「無理をするな。」

「ジャンヌ様でしょ?生きておられたんですよね!!?ジャンヌ様!!」

 エクレールは、ダルクを見て出した
 『ジャンヌは実は生きている』という仮定を出す。

 そして、ジャンヌが生きていると思い、
 顔に希望の光を宿す。しかし……

「何度も言っているであろう。私はジャンヌでは……無い。
 神風戦士ダルクだ……!」

 首を横に振って、エクレールの出した仮定を否定する。

「そう……ですか……。」

 ダルクがジャンヌでは無いと知らされ、
 肩を落として落胆するエクレール。

「ところで……ジャ……ダルクさんはジャンヌ様と
 どういった関係を……。」

「さあ……な。今は言えぬ。
 いずれ言う機会も有るだろう……。」

 天を仰いで、ダルクが一言寂しげに呟く。

「でも……何故私の記憶の中にイデアが……?」

「そうだな……。強いて言うなら。
 あの少女はお前の影、お前の心の一部だ。」

「……イデアが…私の一部……?」

「後悔、哀しみ、そして自分自身への苛立ちを感じたのだ……
 ジャンヌを死なせてしまったという心の叫びをな……。」
 
「お前の出せなかった叫びが、
 強い光となって黒き翼の力をを通じ、
 一瞬にして影を焼き付けてしまった…。」

「それがあのイデアという少女なのだ……。」

 寂しげに、そして悲しげにエクレールに告げるダルク。

「私はあの時、ジャンヌ様を死なせてしまった自分を……
 如何すればいいのか解らなかった……。」

「心の底で……許せなかった……。」

「だからイデアは私の事を……。」

「イデアは私の心………。」


本陣へ撤退
本陣へ撤退
撤退
撤退