真・闇の会夢幻格闘化計画{Dream Duel Project}続・聖夜の天使達

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第 十話「神々の黄昏・前篇〜天才」

<−どこかの郊外−>
(32 terrible beat B)
 宿舎を砲撃した犯人であるムラタ一味と、
 狼牙軍団との交戦が行われている。

「ひいいい!」

「ひ、引けぇ!退却!!」

 ムラタ率いる戦車師団が狼牙軍団によって
 気持ちがいい程蹴散らされていく。

「へっ、手応えの無ぇ奴等だ。」

 物足りなさそうに手を振りながら
 狼牙が語る。

「さあ、ちゃっちゃと行くよ!」

 ムラタ軍団を斬り払いながら、
 剣道が突き進んでいく。

 そして、狼牙は遂に軍団を指揮していた
 ムラタに合見{まみ}える。 

「き、貴様は斬真狼牙!」

 圧倒的な戦力の差、そして
 圧倒的な個人としての力量の差……。

 もっとも出会いたくない相手に出会い、
 ムラタは仰天する。

「手前ぇは……誰だったっけ?」

ムラタだ!元PGG副総長!!

 ムラタが忘れ去られた事に腹を立て、
 そうがなりたてる。が……

 狼牙は思い出した様に拳を鳴らす。

「そうか。じゃあ……かかって来な。」

え?

 ムラタは、自分が墓穴を掘った事に
 ここで初めて気付いたが、
 覆水は盆に返る事は無かった。

「かかって来いってんだ。」

 後悔後にも役にも立たず。
 拳を鳴らしながら、ムラタに向かって
 前進を続ける狼牙。

「お前ら、何をしている!!やっておしまい!!」

 だが、ムラタは、部下を叱咤するだけで対抗する術を知らず、
 部下はそんなムラタを見限り逃亡する。

「コラァ、腰抜け共!何を逃げて……!!」

 と逃げた部下達を非難するも虚しく、
 残るは自分一人となっていた。

「漏れも…逃げろー!!……あ!

 ムラタ は に げ た。
 し か し、 ま わ り こ ま れ た!
 コマンド?

「狼牙……ムラタを捕えたぞ。如何する?」

 ボコボコにされたムラタを狼牙の前に連行し、
 指示を仰ぐ加倉井潤と崎村竜二。

「まあ、取り敢えずは牢座敷にでもぶち込んどくか?」

「判った。後でアンパンくれよな。」

「ヒヨコもな……。」

 ぶち込んだ後の褒賞を約束させ、
 ムラタを牢座敷に連行する二人。

「わぁ!!止めろ!!オレを誰だと……」

「止めろアンパン野郎!!」

わぁぁ〜〜〜〜〜!!

 抵抗も空しく、牢座敷に連行されるムラタ。
 その姿にはPPGの副総長時代の偉そうな姿は
 どこにも無かった。



<−聖城学園−牢座敷>
(23 silence..)

ううう……如何してこのオレがこんなところに?」

 自分の境遇を愚痴るムラタ。その側に
 一人の男がいた。

「お前、誰…ん?……お前は……ムラタ!」

「スパーンか!?」

 スパーンとムラタは顔見知りらしく、
 互いに姿を認めると、互いに名前を呼び合う。

「……ところで、お前何でこんなところに?」

「それはな…くそっ、思い出しただけでも腹が立つ!!」

 憤怒の表情を浮かべながら、
 スパーンは壁を殴打する。

「部下共が弟のスパパーンを立てて反乱してきやがった。」

「追放された俺は腹癒せにソネットを襲ったんだ。」

「それで?」

「ところがソネットは既に狼牙軍団に
 所属していて、ボコられた俺は
 こんなところに閉じ込められたんだ。」

「何か、投げ遣りな説明だな。」

 いい加減な説明に呆れるムラタ。

「やかましい!あ〜〜〜!!
 女日照りでむかついてきた!!!!」

「こうなりゃ、男でも構わん!
 ムラタ、ケツ貸せ!!!!」

 突如ブチ切れたかと思うと、ルパン脱衣をかまして
 ムラタのズボンを一気に脱がし、
 菊座に己の剛直の焦点を合わせる。

 既にその目は血走り、思考は正常ではなかった。

「何!?よ、よせ!よせぇ〜〜〜〜!!!!

 無意味な抵抗も空しく、
 自分の菊座をスパーンの剛直に貫かれ……

(SEずぶり!!!!!!!)
アオッ!!!!!!!!

 ムラタは、ゲイに目覚めた。(笑)



<−執行部室−>
(08 Make me funky)
 執行部室の中、狼牙を初めとして、
 狼牙軍団の主要メンバーが一堂に集まっている。

「フム……今日皆に集まってもらったのは……」

 開口一番、豪が地図を広げて全員に説明する。

「先程捕えたムラタを尋問して光速で手に入れた情報だが……。」

「どうやら、暗黒鳳凰団の本拠地はここに有るそうだ。」

 そう言うと、真宿の旧魔界孔辺りを指し示す。

 そこは巧妙に入り組んでおり、通常の探索では
 到底発見し得ない場所にあった。

 しかも、その入り口は常人では入り込めない
 巨大な大穴の横腹に有った。

「ち……。こんなところに有るんじゃお手上げだぜ……
 何も出来ねえ。」

 狼牙が悔しそうに舌打ちする。
 実際、侵入しようにも何も案が浮かばないのである。

「そうですねぇ…どなたか滑空出切る方が
 いれば良いのですけど…。」

 侵入するにあたり、滑空による
 侵入を提案する咲苗。

「ヘリコプターじゃ有るまいし、
 そんな世界ビックリ人間大賞がいるかよ。」

 半ば呆れた顔で、その案を却下する狼牙。だが……

「いや、何事も聞いて見なければ判らんぞ。」

 豪はその案を善しとして支持する。

「我々が特体生だという事を忘れたか?」

「いや、それよりもグランメサイアで
 飛んでいった方がいいんじゃねえの?」

 狼牙が直接的な方法を提案する。だが……

「狼牙、これを見てみろ。」

 豪が示した地図を見るに、魔界孔跡の孔は
 グランメサイアがやっと入れるだけの大きさくらいしか無く、
 グランメサイアで孔に突入しようと言う案が
 いかに無謀であるかを物語っていた。

「そういやぁ……確かに入れねぇわ。」

「そうだ…私、試しに聞いてみますわ。」

 豪の提案を実現すべく、
 エクレールが呼びかけを提案する。

「委員長、この部屋の放送機材、
 お借りしますわね。」

「え、ええ。いいけど…。」

「んな事聞いたって無駄だって。」

「何事もやって見なければ判らんと言っているだろう。」

 やる前から案を諦めている狼牙に対し、
 やる前から諦める事の非を説く豪。

(SEピンポンパンポ〜ン)

「あーあー……七転び八起き、七転び八起きぃ〜。」

 校内放送で、空中浮遊能力者を公募するエクレール。

「こほん…こんにちは。私、エクレールです。」

「狼牙軍団所属の特体生の皆様に質問がありまーす。」

「皆さんの中で空を飛べる方はいませんか?」

「飛べる方がおられましたら、
 執行部室まで足を運んで下さいましね。」

 ……数分もしないうちに……

「ほら、来られましたわよ、豪さん。」

 豪の方を向き、クスッと笑うエクレール。

「あの……気がつかなくて、申し訳有りません。」

「空を飛ぶ位、拙者には軽いでござるよ。」

「くーちゃんの空飛ぶ絨毯と
 まーちゃんパワーがあれば
 余裕しゃくしゃくなのだー!」

 高羽紗枝と渡半蔵とクレオ・アリバがやって来た。

「ほれ、言ってみるものだろ。」

 得意気に狼牙に話し掛ける豪。

「……まあな。」

「という訳でだ。我々は今から総力で
 暗黒鳳凰団の本拠地を急襲する事となった。

「では、各々戦闘の準備を怠らない様に。
 以上!!」



<−グランメサイア−甲板>
(23 silence..)
 真宿に向うグランメサイアの甲板。
 蛇王院空也と仮面を外した神風戦士ダルクがいる。

「かつては殺しあったお前とこうして共に戦うとはな……。」

「そうだな……。奇妙な縁だ……。」

 その言葉を信ずる限り、やはり
 神風戦士ダルクの正体はジャンヌらしい。 

 その様子を、たまたま通りがかったエクレールが
 扉の内から覗く。

「『やはりジャンヌ様は生きておられたのですね……』」

 ジャンヌの姿を見て、ジャンヌの生存を確信する。
 しかし……

「ところで、お前ぇ……一体誰なんだ?」

 ジャンヌと判り切っているのにも拘{かかわ}らず、
 空也が一見見当違いな質問をする。

「『え?』」
「何?」

 その見当違いな質問に、一瞬何の事か、という
 顔をするジャンヌと扉の内のエクレール。

「何を言う。ジャンヌ以外の何者だと言うのだ。」

 当然だが、そう言うより他は無いジャンヌ。

「違うんだよ……。何かがな。」

 だが、空也は尚、ダルクが
 ジャンヌである事を否定する。 

「以前にシャイラが掴んだ情報に拠れば、
 ジャンヌには双子の妹がいるらしい、と聞いた。」

 観念したかの様に、目を瞑り、
 その言葉を肯定するジャンヌ……
 いや、ジャンヌの双子の妹。 

(21 dash to trush 〜unpluged〜)
「そうよ……私は……ジャンヌの双子の妹、ジャネット。」

 姿形こそはジャンヌに瓜二つなものの、
 言葉遣いといい、雰囲気といい、
 明らかにジャンヌとは違っていた。

 扉の内でその事実を知ったエクレールは、
 当然の事ながら、驚愕の色を隠せないでいる。

「『え?ママ?……ママは死んだはずなのに……
 それ以前に……ママがジャンヌ様の妹……だなんて……』」

 むしろ、驚愕するのも無理は無い。

 ジャンヌだと思っていたダルクが自分の母のジャネットであり、
 そのジャネットとジャンヌが双子の姉妹という事実に
 驚愕するな、という方がムチャな要求である。

「なぜジャンヌの振りをしているんだ?」

「エクレール達を……悲しませたくなかったからよ。」

「それに、私は姉さんを……止められなかった。」

「間違っていると判っていて、姉さんを止められなかった罪……。」

「その罪を償う為なら、私はジャネットである事を
 捨てても構わない……。」

「そうか……。」

 自嘲気味な顔で話を続けるジャネットと、
 沈痛な面持ちでその話を聞いている空也。

「誰だ!?」

 不意に扉の内のエクレールの気配を感じ、
 空也が呼び止める。

 二人がテントの外を見ると、
 全てを聞いていたエクレールがいた。

「エクレール……。」

「嬢ちゃん……。」

「ママが……ジャンヌ様の……。」

「いつから……聞いていたの?」

「最初……から……。」

「お前ぇら……親娘だったのかよ……。」

 ヲイヲイ、といった表情の空也。

「ごめんなさい……」

 エクレールを抱きしめるジャネット。
 エクレールの目尻には涙が浮かんでいた。

「ママ……。」

「生きている事も、姉さんの振りをしていた事も……
 黙ってて……」

「ううン。いいよ……。」

 目を瞑ったまま首を振るエクレール。

「ママが生きていただけで……ボク……。」

「ねえ、ママ……。」

「何?」

「前のボクは……」

「前のボクは、使命の為なら……
 簡単に命を捨てる覚悟も出来た。」

「でも、今は……。」

「ボク……まだ死にたくない!」

「大切な人達と離れ離れになりたくない!」

 ジャネットの胸に抱き付くエクレール。

 そんなエクレールの頭を抱き抱える様な感じで
 抱きしめるジャネット。

「大丈夫よ、エクレール。」

「大丈夫よ。私達は、負けない。
 ……そして死んだりはしない。」

「あなたを死なせたりはしない……。」

「狼牙軍団のみんな……エクレール……
 必ず、必ず守ってみせるわ。」

「姉さんの過ちを……繰り返さない為にも……。」

「うン……生きて返ったら……
 剣を教えて……。」

「ええ。分ってるわ。必ず教えて上げる。」



<−グランメサイア−甲板の端>
 甲板の端で、暇を持て余している空也。

 どうやら、親娘水入らずを邪魔するのは
 野暮だと思ったらしく、いつの間にか退出したらしい。

「やれやれ……だぜ。」



<−暗黒鳳凰団本拠−Drラグナロクのラボ>
(32 terrible beat B)
 暗黒鳳凰団の本拠兼Drラグナロクのラボ。

 都合によって少々速すぎる展開では有るが、
 既に斬真狼牙によって残すは
 Drラグナロクのラボだけとなっている。

(SEドォン)
「よぉ、邪魔するぜ、ロリコンヤブ医者。」

 威勢良く電子ロック付きのドアを蹴破り
 中に入る狼牙。

「何だ貴様らは。」

「人のラボにアポも無しに
 訪問してくるとは失礼な奴らだ。」

 明らかに不快で面倒といった表情で
 迎えるDrラグナロク。

「ンなもん必要無ぇよ。」

「フン……まあ、落ち着け凡人。」

何だと!?

 Drラグナロクの見下した様な挑発に
 激昂する狼牙。

「それよりも見ろよ、この神化体を。」

「ば、馬鹿な……!!」

(13 holly flame)
「あ、あれはルシェルドの顔面部分……!」

 『神化体』を見て、驚愕するバイラルとアイレーン。

 それも無理は無かった。
 Drラグナロクの後ろに、ルシェルドの
 顔面部分が置いてあったからである。

「ルシェルドは確か崩壊したはず…!」

「ああ、そうだとも。」

 アイレーンの過去の記憶による
 発言を肯定するDrラグナロク。

「もっとも、真核である顔面は私の部下が
 秘密裏に回収したがね。」

 Drラグナロクは既に手を額に当て、
 少々陶酔に入っている様な言い方で説明する。

「シクシク……。」

 その時、兵太が耳を澄ませると、
 少女達のすすり泣く声が聞こえてきた。

 兵太が目をやると、そこには牢に
 閉じ込められている少女達がいた。

「いたいけな女の子達を集めて、
 手前ぇ一体如何いうつもりだ!」

「おいオッサン!これは一体何なんだYO!」

 正義感の強い兵太がそれを黙ってみていられる筈も無く、
 即座に糾弾する。しかし……

「五月蝿い奴だ。兵太のくせに。」

 と、まるで蝿を追っ払うかの如く手をひらひらさせる。

「俺は眼鏡の虐められっ子じゃねえ!」

「黙れ、兵太のくせに。」

 激昂する兵太を鼻であしらう。

「手前ぇ!!」

「まあいい。阿呆でも理解出来る様に
 説明してやろう。」

 そう言うと、神化体を見ながら語りだす。

「こいつらは神化体を稼動させるのに
 必要な木偶{デク}だ。」

「神化体を稼動させるのには
 高い霊力を持つ女が大勢必要だからな。」

「特に処女の木偶が効率がいいらしいがね。」

「全く……好色で野卑な淫神だな、ルシェルドは。」

 不意に、何かを思い浮かんだかの如く
 手をぽんと叩く。

「フム……そうだな。」

「丁度、神化体を稼動させる木人形{デク}の
 霊力が足りなくて困っていたところだ。」

 そう言ってエクレールを見る。

「如何だ?お前なら丁度良さそうな木人形{デク}だ。
 ……高い霊力を持ち、しかも処女ときている。」

「お……お断りしますわ!」

 嫌悪を感じるその眼差しと言い草に対し、
 拒否の言葉でその意志を表す。 

「まあいい。
 ルシェルドの贄は別に腐る程いるからな。」

「何も暗黒のアダムを贄に使用する必要も有るまい。」

「暗黒のアダム?」

「我が願いに必要な暗黒のアダムと暗黒のパンドラは
 我が眼前に揃った。」

 マリーシアの姿を見て一言付け足す。

「そう……暗黒のパンドラことマリーシアの力と……
 その暗黒のパンドラの力を受け取った者……
 暗黒のアダムことエクレールがな。」

 そして、バイラルとアイレーンを見て
 嘲る様にこう付け足す。

「まあ、お前達ホーリーフレイムには
 本当に感謝しているよ。」

「全ては私の思いのままに進んだのだからな。
 私自身、驚く程に。」

「「何だと!!?」」

 挑発的なDrラグナロクの台詞に
 二人は憤りを隠せない。

「NAGASAKIでの虐殺事件……ジャンヌのルシェルド復活……
 いずれも私の思惑通りに進んだ……。」

 自分に陶酔するかの如く、次々と語りだす。

「な……!!?」

「我々の同胞が殺されたのは、
 貴様のせいだというのか!!!」

 当然の如く、激怒するバイラルとアイレーン。 
 
 だが、Drラグナロクは
 二人を無視するかの如く話を続ける。

「いや……。虐殺に付いては、
 正確には神威との契約の一部だ。」

「手前ぇ……神威と組んでいやがったのか!」

(SEドゴォッ)
 その事実を知った狼牙が、横の壁を拳撃で穴を開け、
 憤怒を表現する。

「その通りだ。」

 Drラグナロクは、その質問に肯定の答えを出し、
 話を続ける。
 その態度には、一片の悪びれた様子も無い。

「アホな住民を煽動し、恐慌の中で暴動を起こす。」

「天才の私には掌を返すより簡単な事だ。」

 冷酷な目で掌を返す真似をする。

「暴徒は我が魔学力で魔族化し、
 当時戦力の足りなかった神威に提供した。」

「これも神威との契約の一部だ。
 如何だ、中々効率のいい廃物利用だろう?」

「手前ぇ……!!」

 直情的な兵太が怒りを露わにするも、
 Drラグナロクは一瞥しただけで、話を続ける。

「そして、神威は契約を果たし、ルシェルドを復活させた。」

 陶酔が入った目で神化体を見る。
 その目は、既に狂気に満ち溢れている。

「復活させたのは神威の魔力、起動したのはジャンヌだが。」

「もっとも……ジャンヌがルシェルドを起動させるのも
 神威との契約の一部だがね。」

「そんな事は如何でもいいじゃないか。
 むしろ、感謝してもらいたいものだな。」

 そう言って肩を竦{すく}めるDrラグナロク。

「感謝……だと!!!!」

 余りにも明け透けな言葉を聞いて激昂する狼牙。
 その狼牙を嘲笑うかの様に、話を続ける。

「お前達の犠牲により、
 私の計画は飛躍的に達成に近づいた。」

「用済みとなった神威も死んだ。」

「それは、お前達が私の偉大なる計画の
 手助けをする事が出来たという事だ。」

「平凡で下らぬお前達凡人の人生が、
 私の計画の贄{にえ}になる事で、
 輝かしく、そして素晴らしいものとなったのだ!」

「ならば……私に感謝すべきなのではないのかな?」

「貴…貴様ァ!!!!」

 余りにも……余りにも人を見下した傲慢なセリフに、
 バイラルの怒りは頂点に達している。

「ククク……まあ、熱くなるなよ。」

「象が蟻を踏み潰すのは、象が蟻に気付かない……
 それと同じだ。」

「蟻だと……手前ぇ!!」

(SEズガン)
 Drラグナロクの不遜極まりない態度と、
 自分達を蟻に例えられた事で、激昂の余り
 パイルアンカーを放つ空也。

「要するに、貴様ら凡人の知るところでは無い、という事だ。」

 それを超神速でさり気無くかわすDrラグナロク。
 そして、提案するかの様に狼牙達に問う。

「………ところで、お前達はナウイ・オリンの終焉……
  この言葉を知っているかね?」

「ナウイ・オリンとは即ち、現在生きている人類…
 それの終焉とは、人類を『神人{ゴットメンシュ}』へと
 昇華させる道だ。」

その進化の為には、人類は一度滅ばなければならない!!!

それがニュータイプ理論だぁ!!!!!!!!!

 そう言うと、その身をバッと狼牙達に翻し、
 大の字になって立ち塞がるかの様な形になる。


≪画面が暗くなり、テロップが流れる≫
『ニュータイプ理論」とは?』
 某国立大学に学生として在籍していた頃の
 カトリーヌ(故人)という女性と須田大介が提唱した理論。
 その内容は、非常識・非現実的・非人道的で極めて信じがたい。
 ニュータイプ理論の究極思想はナチスの超人思想に有る。
 理論では…

 世紀末以降、人間の二極分化は引き返せないところまで来る。
 富む者は益々富み、奢る者は益々奢り、
 踏み躙られる者は益々踏み躙られ、
 賢い者は益々賢く、愚かな者は益々愚かになる。
 幸も不幸も集中する者に益々集中し、
 災害は災害の多い場所に集中し、
 楽園は一層楽園になっていく。
 要するに、土地や金や支配力を得る者は益々それを得、
 支配される者は益々支配されるだけになる。
 そして一部の大国を除き、多くの国が餓える。
 幾つかの国は崩れて燃える。
 人間が大自然を征服できると信じて大自然を侮り侵す為、
 大自然が人類に対して復讐の災厄を下すからだ。
 2014年には応酬と全米の1/3と、
 アフリカと中東が完全に荒廃し、第三次世界大戦が起こるだろう。
 そして、人類は大自然から手酷く復讐される。
 奇行も二つに別れ、激しい熱と冷気、火と氷、
 大洪水と大旱魃が代わる代わる人類を襲うだろう。
 だが、人類の中から超人類は現れる。
 最早人類では災厄に対抗出来ずに滅びかけるだろう。
 然し、進化とは滅亡の中の危機から生まれるものである。
 人間を進化へと導く事は、絶滅的危機へと導く事に他ならない。
 災厄に対抗する為に、氷河期に猿が人間に進化した時の如く、
 人類は超人類を生み、ガイアを押さえ、人類の指導者となる。
 そして数十年後、それが人類を想像を絶する究極の状態に導く。
 人類がガイアからいなくなるのである。
 然し、これは人類の滅亡と云う意味ではない。
 人類が人間以外のロボット的生物に、
 一部は人間以上の存在に進化してしまっているからである。
 もっとはっきり言えば、人類の一部は人類からより
 高度な存在に進化して、神に近い生物になっている。
 人類から神へと進化するのであるから、
 神人{ゴットメンシュ}と呼んでも差し支え無い。
 残りの大部分は、進化なのか退化なのか解らないが、
 一種の機械になっている。
 ただ操られて働いた入り楽しんだりするだけの、
 完全に受動的なロボット生物になっているのだ。
 それまでの気候異変と環境異変、政治と娯楽と食物、
 それから起こる突然変異がその様な連中を大量に生み出す。
 神人も同様で、同じ原因から生まれてくる。
 ただ突然変異が大脳にプラスに働いて、
 進化の方向はロボット生物と別方向になるだけだ。
 いずれにせよ、彼等は今の人間の数次元上の知能と力を持つ。
 彼等は団結して地球を支配する。
 それまでのあらゆる危機や問題は、
 彼等神人達の知能と力で急速に解決されていく。
 ロボット生物達の方は、それに従って生きるだけだ。
 これはある意味で気楽な身分である。
 ロボット生物達は神人の認める限度で、多くの物を与えられる。
 食物・住居・職業・娯楽・恋愛、そして思想さえも与えられる。
 ただロボット生物は、自分達が自分達の意思で
 生きていると思っているが、
 実は神人達は全てを見通していて、
 管理工場の家畜の如く彼等を育て飼う事になる。
 こうして人類は、完全に二つに分かれる。
 天と地の如く二つに分かれた進化の方向をそれぞれ進み始める
 一方は限りなく神に近いものへ、
 他方は限り無く機械生物へ近いものへ。
 そして1000年もすれば、ガイアには機械生物の群れが棲み、
 神々が天空から支配する様になるのだ。


@「神人」たる異能力を備えたカサフ達を暗黒鳳凰団に集める。

A幹部達に命じて、世界的集会等を開いて
 進化に必要なエネルギーを集めさせる。

B暗黒のアダムと暗黒のパンドラの力の融合により、
 完全神化体「ゴスメルダー」を創造。

C組織的、作為的に戦争や自然破壊等で、
 地上と人類を破滅に向かわせる。

Dその混乱の中で、完全神化体「ゴスメルダー」によって進化した超人類
 「カサフ」が僅かに生き残った人類を導く。
※ちなみに、カサフとはヘブライ語で魔術師の意で、
 古代には特体生はそう呼ばれていたと云われている


本陣へ撤退
本陣へ撤退
撤退
撤退