真・闇の会夢幻格闘化計画{Dream Duel Project}続・聖夜の天使達
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第 一話「秘密結社・暗黒鳳凰団」

<−何処かの海岸−>
(23 silence..)
 魔界孔での神威との決戦から数ヵ月後の夜の事だった。

 その夜、斬真狼牙は外に出歩いていた。

 海面が鏡の如くに空を映し、彼の姿を映し出す。
 夜風が吹き荒れ、整った髪をなびかせる。

 不意に後ろから鋭い気配がするのを狼牙は感じた。
 その気配の持ち主……

 細身ながら、精悍な体付きと眼光を持つ青年、
 久我匡一郎がそこにいた。

「久し振りだな……狼牙。」

「そうだな。数ヶ月振りか……。」

 懐かしげな顔つきで匡一郎を見る狼牙。

「ところで、俺に何の用だ?」

「狼牙…暗黒鳳凰団いう秘密結社を……知っているか?」

「何だそりゃ?」

 聞き慣れない単語を聞いて、訝{いぶか}しがる狼牙。

「ていうか、何でその秘密結社ってのを知ってるんだ?」

「暁の組織力と情報網を以てすれば難しい事ではない。」

「暁?ああ……あの世界を股にかける諜報組織の事かよ。」

 どうやら、暁という組織はかなり有名な組織らしく、
 その手の情報に疎い狼牙でさえその存在を知っているらしい。

 二年前、その組織によって、裏世界では非人道的なツアーで有名な
 「人間狩り」の主催者が成敗された事は狼牙も知っていた。

 蛇足になるが、あのスパーンも参加する予定だったらしいが、
 当日に風邪で寝込んでしまった為に参加出来なかったらしい。

「そうだ、暁のエージェント、
 矢矧大和という男から仕入れた情報だ。」

「大した情報網だ。で、今回の用件は?」

「人を一人始末したい。手伝ってくれ。」

(SEドォォン)
 その瞬間、雷が落ち、轟音を響かせて辺りを震撼させる。
 雷の直撃を受けた大木は無惨に燃え、辺りを朱に染める。

「ほう……それは物騒じゃねぇか。
 それで、どこのどいつを殺るんだ?」

「総帥のDrラグナロクという男だ。」

 そう言うと、古ぼけた新聞を狼牙に放り投げる。

「こ、これは……!!」

(35 Kamui @)
 新聞の見出しには『大型タンカー爆発!!』の文字が大きく載っている。

「それは奴の仕業だ。零式の情報によれば、
 あの男は今、アニマルウェポンを開発中だという。」

「アニマルウェポン……!!?」

 アニマルウェポンと言う、聞き慣れない言葉を耳にして、
 狼牙は一瞬怪訝な顔をする。

「この事件も大方海豚{イルカ}にでも爆弾を背負わせって
 突っ込ませたんだろうな。」

「………!!」

「俺も悪人とは言え、多くの命を奪ってきたから
 大きな口は叩けないが、奴は人の命を弄ぶ……。」

「しかも、何も知らない動物を使う事で……、
 無差別テロをやろうとしている……!!」

「奴だけは許してはおけない……俺の手で始末するつもりだ……!!」

 そう呟く匡一郎の眼は、冷徹な態度ながら穏健な
 普段の彼とは思えない様な殺気に満ちていた。

「そうか……まあ……いいだろう。」

(23 silence..)
「久しぶりだな、匡君。」

 後ろから、その話を一部始終聞いていた斬真豪が現れる。

「ええ。数ヶ月ですかね……。」

 軽く会釈する匡一郎。

「ああ、そうだな。……で、
 秘密結社・暗黒鳳凰団の目的は掴めたのか?」

「一応、極秘プロジェクトは掴んであります。」

「極秘プロジェクト?」

 次々に出てくる自分の知らない言葉の連続に、
 狼牙は頭を混乱させる。

「ああ。組織内では 『プロジェクト ラルフ』
 『プロジェクト ジェスト』と呼ばれているらしいが……。」

「ラルフ?ジェスト?」

「そうだ。豪さん、まずはこれを見て下さい。」

 懐からプロジェクトの内容が書かれた資料を差し出す。

『プロジェクト「ラルフ」』
*通常の伝染ウイルスの数十倍の感染力を持ち、
 宿主細胞をあっという間に喰い潰し、ありとあらゆる抗ウイルス剤を無効化、
 熱湯による消毒さえ効かない遺伝子操作による新病原性ウイルス.ラルフ。
 これらを愛玩用の動物に植え付けペットとして世界中にばら撒く。

『プロジェクト「ジェスト」』
*生物兵器とは、生物を訓練あるいは脳そのものを操作する事によって
 動きを制御し、その生態に爆薬等を括り付け、
 敵に特攻させる事により攻撃を加える事を目的とした生きた兵器。
 そこで使用されるバイオコンピューターは
 生態と同じ蛋白質で出来ている為、
 あらゆる生態の脳の錐体路系統運動野に直接埋め込む事が可能であり、
 集積度は従来の数億倍にもなり、更に学習によって増殖も可能。
 全ての動物を兵器化出来、思い通りに攻撃や防衛が可能となる。
 海では海豚や鯨が生きた潜水艦や魚雷となり、空では鳥が戦闘機になる。
 渡り鳥に小型の核爆弾を積めば正に大陸間弾道弾になる。
 陸においては犬や猫等が超小型の高性能戦車であり、
 証拠も残らないメリットも持ち、低コストで最大の軍事的効果を生む。

「むゥ……考えようによっては神威よりも厄介な相手になるな…。」

 予想以上の内容に、
 深刻な面持ちで低く唸る豪。

「まあ、これからはDrラグナロクの動向を探りますので、
 組織の動向の方はよろしくお願いします。」

「当ては有るのか?」

「某国で落ち合った元暗黒鳳凰団所属の科学者から、
 色々と聞き出してあります。」

「それと、既にプロジェクトに携わる人物を
 リストアップしていますので。」

 そう言って、メモを手渡す。
 そのメモには、どれも見知った名前ばかり連なっていた。
 要するに、有名どころの名前ばかり書かれてあったのである。

「そうか。……ああ、それとだな、例の件だが……。」

「暗黒鳳凰団の特S級特殊工作員『イデア』……の例ですか?」

「そうだ。今までその詳細は掴めていなかったが、
 先月、半蔵が姿を捉える事に成功した。」

 一枚の写真を取り出すと、
 そこには死体の山で埋め尽くされた戦場が写っており、
 中央に暗黒鳳凰団の特殊部隊の服装を纏った、
 エクレールに酷似した少女がいる。

「こ……これは……!?」

 写真に映った少女があまりにもエクレールに酷似しているのを見て、
 匡一郎は一瞬おのれの目を疑った。

「……見ての通りだ。」

「何かの間違いでは……。」

 別の可能性を模索する匡一郎に、
 冷静に豪が言う。

「我々もそう思いたい。だが、この少女が
 エクレール君では無いとは言い切れない。」

「偶然の産物によるそっくりさんか、クローンか、
 姉妹などの血縁者か、偽者か、それとも……
 エクレール君本人か……」

 豪が考え付く限りの可能性を口にする。

「イデアの足取りはこれっきり掴めていない。
 イデア……おそらくは偽名か何かだろうが、
 ここ数日の間に来日したという情報がある。」

「そうですか……。」

「しかし、工作員を特殊傭兵かテロリストとしてしか扱わない様な奴らが、
 何故ただの工作員に特Sの扱いをするのか……」

 顎に手を当て、沈思黙考する匡一郎。

「まだまだ分からん事は山程有る……。
 何か分かったなら俺に連絡をくれ。幸運を祈る。」

「判りました。」 

「兄貴。」

 さっきから会話の内容が理解出来ず、
 沈黙を余儀無くされていた狼牙が我慢出来ずに開口する。

「何だ、狼牙?」

「何だ、じゃねぇだろ。秘密結社とか、極秘プロジェクトとか、
 さっきから訳の判らねぇ事ばっかり言いやがってよ。」

「そうか。では、秘密結社暗黒鳳凰団の勢力説明をしよう。」

「暗黒鳳凰団はかなりやっかいな組織だ。
 現時点で領土こそ有していないものの、
 どこに本拠が有るのかがさっぱり判らん。」

「じゃあ、如何し様も無ぇってのか!?」

「慌てるな、狼牙。」

「本拠の位置さえ判れば何とかなる。」

「どうやって探すつもりなんだ!!?」

 激しく豪に問い詰める狼牙。

「実はな……。」

「実は……?」

 狼牙に耳打ちをする豪。

「さっぱり思い付かん。
 何しろ、何も考えが浮かばんからな。」

SEドスッ!
「げふぅ。」

 真顔で思わせ振りな言葉を言っておきながら、
 何の意味も無い答えに、
 思わず狼牙の怒りの籠った突っ込みの拳が炸裂する。

 それをまともに受け、滝の様な鼻血を吹き出す豪。

先に涅槃に逝ってやがれ!!

「全く……乱暴な奴だな。」

 ハンカチで鼻血を吹きながら、豪の話は続く。

「まあいい。次に暗黒鳳凰団を構成する幹部の説明をしよう。」

(35 Kamui @)
「総帥{フューラー}のDrラグナロク。本名は不明だが、
 情報によれば、かなりのマッドサイエンティストだそうだ。」

「情報によると、再び魔界孔を開こうとしているらしい。」

「何だと!!?」

 その言葉に驚きを禁じ得ない狼牙。
 豪はその狼牙にある怪しげな書物を見せる。

「文献の民々書房に拠れば……。」


 『秘密結社暗黒鳳凰団』…彼らは人類全てを
 「神人類{ゴットメンシュ}」へと進化させることを目論み、
 そこへ完全なる「神化体」をもって、
 完全なる統治を実現させんとする。

 暗黒鳳凰団の起源はエジプトのピラミッドに端を発する。

 「王家の谷」と呼ばれる遺跡地帯には数々のピラミッドが眠る。
 表の歴史上では、その発掘がされたのは近年であるが、
 しかし、その時には既に多くの秘宝は盗み出された後であった。

 裏の歴史においては既に、王家の墓から恐るべき秘宝…、
 否、「秘法」が発掘されていた。
 名も無きファラオにまつわる恐るべき「秘法」が…。

 その「秘法」とは古代エジプト文明において栄え、
 現代科学をも超越する脅威のオーパーツである。

 そして世界中から有能な科学者、考古学者を集め、
 暗黒鳳凰団はそれら「秘法」を長きに渡り解析した。
 結果、遺伝子操作・電子義手や電子義眼に人造人間等の
 サイボーグ技術開発・脳改造による人造特体生の発現、
 各種強化薬物の研究開発、etc...
 「人間」を「強化」するオーバーテクノロジーを有するようになる。
 (古代エジプトにおいての「死者の蘇生の術」は、
 表の歴史にもその名前のみが伝えられている。)

 人類を進化させるための「秘法」…そこには続きがあった。
 それは世界を治める「秘法」…それこそが
 「神化体」を降臨させる秘儀である。


「もうとっくに滅亡したとされる秘密結社だが、
 ごく最近になってDrラグナロクが再興したらしい。」

「次に、アヌビスグライブ。
 経歴から性格まで、一切が不明の存在だ。」

「何せ、一切口を聞いた事が無いらしいからな。」

「何だそりゃ?」

「そして、さっき話した特殊工作員のイデア。」

「アヌビスグライブ以上に謎の存在だが、
 その強さだけは確実だ。」

「まあ、大体の説明は以上だ。」

「おおまかな説明だな……。

「あ……そうそう、あのムラタもいたな。」

「あの野郎……生きていたのかよ……
 しぶてぇ野郎だ。」

「憎まれっ子世に憚る……だな。」

 匡一郎が冷静に的確な表現でムラタを批評する。



<−暗黒鳳凰団本拠−Drラグナロクのラボ>
 暗黒鳳凰団の本拠兼Drラグナロクのラボ。
 ここでDrラグナロクは部下の報告を聞いていた。

「総帥{フューラー}……神威が斬真狼牙に倒されました。
 付け加えますに、魔界孔が閉じたとの情報が……。」

「そうか……。捨て置け。」

「神威は今や邪魔者以外の何者でも無い。
 同じ邪魔者の手で邪魔者が消えたのだ。
 何を慌てる必要がある?」

「御意……。」

「暗黒のアダムと暗黒のパンドラの件、いかが致しましょう?」

「全力を持って捜せ。我が悲願にはそれらが必要だからな。」

 そう言うと、手中のワイン入りグラスを粉々に握りつぶす。
 そして、その口は無意識のうちにニヤリ、と笑っていた。

「御意……。」




 魔界孔再び……この国に再度暗雲が立ち込める……。

(主題歌 01 Dash! To Truth)
≪OPムービー≫


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