真・闇の会夢幻格闘化計画{Dream Duel Project}大番長
大番長 弐への序章(16禁部分有り)エクレール☆5

vsDrラグナロク編

登場人物 斬真狼牙⇒狼 斬真豪⇒豪 エクレール⇒エ バイラル⇒バ  
        アイレーン⇒ア 四条沙羅沙⇒沙 陣内兵太⇒兵 
        Drラグナロク⇒Dr カミラ⇒カ アヌビスグライブ⇒犬 
        久我匡一郎⇒匡 蛇王院空也⇒ 空 天楼久那岐⇒ 久
        久我重明⇒重 アドルフ⇒アド


CG
『それぞれの罪と罰』
 威厳を込めた態度でDrラグナロクを非難しているエクレール             
<−ビッグ・ノア Drラグナロクのラボ−>
(32 terrible beat B)
狼「よぉ、邪魔するぜ、ロリコンヤブ医者。」

 威勢良く電子ロック付きのドアを蹴破り
 中に入る狼牙。

Dr「何だ貴様らは。」

Dr「人のラボにアポも無しに
  訪問してくるとは失礼な奴らだ。」

 明らかに不快で面倒といった表情で
 迎えるDrラグナロク。

狼「ンなもん必要無ぇよ。」

Dr「フン……まあ、落ち着け凡人。」

狼「何だと!?」

 Drラグナロクの見下した様な挑発に
 激昂する狼牙。

Dr「それよりも見ろよ、この神化体を。」

バ「ば、馬鹿な……!!」

(13 holly flame)
ア「あ、あれはルシェルドの顔面部分……!」

 『神化体』を見て、驚愕するバイラルとアイレーン。

 それも無理は無かった。
 Drラグナロクの後ろに、ルシェルドの
 顔面部分が置いてあったからである。
バ「ルシェルドは確かルドルフ将軍によって破壊されたはず…!」

Dr「ああ、そうだとも。」

Dr「もっとも、真核である顔面は私の部下が
  秘密裏に回収した。」

 Drラグナロクは既に手を額に当て、
 少々陶酔に入っている様な言い方で説明する。
?「シクシク……。」

 その時、兵太が耳を澄ませると、
 少女達のすすり泣く声が聞こえてきた。

 兵太が目をやると、そこには牢に
 閉じ込められている少女達がいた。

兵「おいオッサン!これは一体何なんだYO!」

兵「いたいけな女の子達を集めて、
  手前ぇ一体如何いうつもりだ!」

 正義感の強い兵太がそれを
 黙ってみていられる筈も無く、即座に糾弾する。

 しかし……

Dr「五月蝿い奴だ。兵太のくせに。」

兵「俺は眼鏡の虐められっ子じゃねえ!」

Dr「黙れ、兵太のくせに。」

Dr「悔しかったら未来の猫型ロボットでも連れて来い。」

 激昂する兵太を鼻であしらう。

兵「手前ぇ!!」

Dr「こいつらは神化体を稼動させるのに
  必要な木人形{デク}だ。」

「まあいい。阿呆でも理解出来る様に
 説明してやろう。」

 そう言うと、神化体を見ながら語りだす。

Dr「神化体を稼動させるのには
 高い霊力を持つ女が大勢必要だからな。」

Dr「特に処女の木偶が効率がいいらしいがね。」

Dr「全く……好色で野卑な淫神だな、ルシェルドは。」

Dr「まあ、まれにジャンヌの様に処女でなくとも
  稼動可能な特異体質を持つ者もいる様だが……。」

 不意に、何かを思い浮かんだかの如く
 手をぽんと叩く。

Dr「フム……そうだな。」

Dr「丁度、神化体を稼動させる木人形{デク}の
  霊力が足りなくて困っていたところだ。」

 そう言ってエクレールを見る。

Dr「如何だ?お前なら丁度良さそうな木人形{デク}だ。
  ……高い霊力を持ち、しかも処女ときている。」

エ「お……お断りしますわ!」

 嫌悪を感じるその眼差しと言い草に対し、
 拒否の言葉でその意志を表す。 

Dr「ほぉ…前には自らルシェルドの贄{にえ}になろうと
   していた癖に、大きな口を叩くじゃあないか。」

エ「くっ……。」

「まあいい。
 ルシェルドの贄は別に腐る程いるからな。」

Dr「まあ、お前達ホーリーフレイムには
  本当に感謝しているよ。」

Dr「全ては私の思いのままに進んだのだからな。
   私自身、驚く程に。」

バ「何だと!!?」

 挑発的なDrラグナロクの台詞に
 二人は憤りを隠せない。

Dr「NAGASAKIでの虐殺事件……ジャンヌのルシェルド復活……
   いずれも私の思惑通りに進んだ……。」

 自分に陶酔するかの如く、次々と語りだす。

ア「な……!!?」

バ「我々の同胞が殺されたのは、
  貴様のせいだというのか!!!」

 当然の如く、激怒するバイラルとアイレーン。 
 
 だが、Drラグナロクは
 二人を無視するかの如く話を続ける。

Dr「いや……。虐殺に付いては、
  正確には神威との契約の一部だ。」

狼「手前ぇ……神威と組んでいやがったのか!」
(SEドゴォッ)
 その事実を知った狼牙が、横の壁を拳撃で穴を開け、
 憤怒を表現する。

Dr「その通りだ。」

 Drラグナロクは、その質問に
 肯定の答えを出し、話を続ける。

 その態度には、一片の悪びれた様子も無い。

Dr「アホな住民を煽動し、恐慌の中、暴動を起こす。」

Dr「天才の私には掌を返すより簡単な事だ。」

Dr「暴徒は我が魔学力で魔族化し、
  当時戦力の足りなかった神威に提供した。」

Dr「これも神威との契約の一部だ。
  如何だ、中々効率のいい廃物利用だろう?」

兵「手前ぇ……!!」

 直情的な兵太が怒りを露わにするも、
 Drラグナロクは一瞥しただけで、話を続ける。

Dr「そして、神威との契約を果たし、私はルシェルドを復活させた。」

 陶酔が入った目で神化体を見る。
 その目は、既に狂気に満ち溢れている。

Dr「復活させたのは神威の魔力、起動したのはジャンヌだが。」

Dr「もっとも……ジャンヌがルシェルドを起動させるのも
  神威との契約の一部だがね。」

Dr「そんな事は如何でもいいじゃないか。
  むしろ、感謝してもらいたいものだな。」

 そう言って肩を竦{すく}めるDrラグナロク。

ア「感謝……だと!!!!」

 余りにも明け透けな言葉を聞いて激昂するアイレーン。

 そのアイレーンを嘲笑うかの様に、話を続ける。

Dr「お前達の犠牲により、
  私の計画は飛躍的に達成に近づいた。」

Dr「それは、お前達が私の偉大なる計画の
  手助けをする事が出来たという事だ。」

Dr「平凡で下らぬお前達凡人の人生が、
  私の計画の贄{にえ}になる事で、
  輝かしく、そして素晴らしいものとなったのだ!」

Dr「ならば……私に感謝すべきなのではないのかな?」

バ「貴…貴様ァ!!!!

 余りにも……余りにも人を見下した傲慢なセリフに、
 バイラルの怒りは頂点に達している。

狼「言う事は……それだけかよ!!!」

Dr「ククク……まあ、熱くなるなよ。」

Dr「象が蟻を踏み潰すのは、象が蟻に気付かない……
  それと同じだ。」

狼「蟻だと……!!手前ぇ!!」

(SEズガン)
 Drラグナロクの不遜極まりない態度と、
 自分達を蟻に例えられた事で、激昂の余り
 パイルアンカーを放つ空也。

Dr「要するに、貴様ら凡人の知るところでは無い、という事だ。」

 それを超神速でさり気無くかわすDrラグナロク。

 そして、提案するかの様に狼牙達に問う。

Dr「………ところで、お前達はナウイ・オリンの終焉……
  この言葉を知っているかね?」

Dr「ナウイ・オリンとは即ち、現在生きている人類…
  それの終焉とは、人類を『神人{ゴットメンシュ}』へと
  昇華させる道だ。」

Dr「その進化の為には、人類は一度滅ばなければならない!!!」

Dr「それがニュータイプ理論だぁ!!!!!!!!!」

≪画面が暗くなり、テロップが流れる≫
ニュータイプ理論」とは?
 某国立大学に学生として在籍していた頃の
 カトリーヌ(故人)という女性とDrラグナロクが提唱した理論。
 その内容は、非常識・非現実的・非人道的で極めて信じがたい。
 ニュータイプ理論の究極思想はナチスの超人思想に有る。
 理論では…

 世紀末以降、人間の二極分化は引き返せないところまで来る。
 富む者は益々富み、奢る者は益々奢り、
 踏み躙られる者は益々踏み躙られ、
 賢い者は益々賢く、愚かな者は益々愚かになる。
 幸も不幸も集中する者に益々集中し、
 災害は災害の多い場所に集中し、
 楽園は一層楽園になっていく。
 要するに、土地や金や支配力を得る者は益々それを得、
 支配される者は益々支配されるだけになる。
 そして一部の大国を除き、多くの国が餓える。
 幾つかの国は崩れて燃える。
 人間が大自然を征服できると信じて大自然を侮り侵す為、
 大自然が人類に対して復讐の災厄を下すからだ。
 2014年には応酬と全米の1/3と、
 アフリカと中東が完全に荒廃し、第三次世界大戦が起こるだろう。
 そして、人類は大自然から手酷く復讐される。
 奇行も二つに別れ、激しい熱と冷気、火と氷、
 大洪水と大旱魃が代わる代わる人類を襲うだろう。
 だが、人類の中から超人類は現れる。
 最早人類では災厄に対抗出来ずに滅びかけるだろう。
 然し、進化とは滅亡の中の危機から生まれるものである。
 人間を進化へと導く事は、絶滅的危機へと導く事に他ならない。
 災厄に対抗する為に、氷河期に猿が人間に進化した時の如く、
 人類は超人類を生み、ガイアを押さえ、人類の指導者となる。
 そして数十年後、それが人類を想像を絶する究極の状態に導く。
 人類がガイアからいなくなるのである。
 然し、これは人類の滅亡と云う意味ではない。
 人類が人間以外のロボット的生物に、
 一部は人間以上の存在に進化してしまっているからである。
 もっとはっきり言えば、人類の一部は人類からより
 高度な存在に進化して、神に近い生物になっている。
 人類から神へと進化するのであるから、
 神人{ゴットメンシュ}と呼んでも差し支え無い。
 残りの大部分は、進化なのか退化なのか解らないが、
 一種の機械になっている。
 ただ操られて働いた入り楽しんだりするだけの、
 完全に受動的なロボット生物になっているのだ。
 それまでの気候異変と環境異変、政治と娯楽と食物、
 それから起こる突然変異がその様な連中を大量に生み出す。
 神人も同様で、同じ原因から生まれてくる。
 ただ突然変異が大脳にプラスに働いて、
 進化の方向はロボット生物と別方向になるだけだ。
 いずれにせよ、彼等は今の人間の数次元上の知能と力を持つ。
 彼等は団結して地球を支配する。
 それまでのあらゆる危機や問題は、
 彼等神人達の知能と力で急速に解決されていく。
 ロボット生物達の方は、それに従って生きるだけだ。
 これはある意味で気楽な身分である。
 ロボット生物達は神人の認める限度で、多くの物を与えられる。
 食物・住居・職業・娯楽・恋愛、そして思想さえも与えられる。
 ただロボット生物は、自分達が自分達の意思で
 生きていると思っているが、
 実は神人達は全てを見通していて、
 管理工場の家畜の如く彼等を育て飼う事になる。
 こうして人類は、完全に二つに分かれる。
 天と地の如く二つに分かれた進化の方向をそれぞれ進み始める
 一方は限りなく神に近いものへ、
 他方は限り無く機械生物へ近いものへ。
 そして1000年もすれば、ガイアには機械生物の群れが棲み、
 神々が天空から支配する様になるのだ。

匡「その為にこんな事を……許せん!!」

 匡一郎が怒りを露わにする。

Dr「いいや、許されるさ!!」

 だが、匡一郎のもっともな言葉に、
 嘲笑の言葉を浴びせる。

Dr「私は天才だからな!!もう一度言う!!
  私こそは人類を進化へと導く資格の有る天才だ!!!!」

Dr「天才は何でも許されるんだぁ!!

Dr「氷河時代を見ろ。猛獣より遥かに軟弱で、
  草食獣より遥かに鈍足な原始人達は
  みるみる凍えて死んでいった。」

Dr「だが!!その中の一種類のうちの何匹かが滅亡の淵で、
  生き延びたい必死の本能に支えられ……。」

Dr「それまでとは別次元の閃きを感じ、
  火を燃やして温まり、石を投げ、棒で殴って
  獲物や他の原始人を殺して喰い、道具を発見した!!」

Dr「また、猛獣を火で追っ払い、
  集まって協力して暮らす様になった!!」

 Drラグナロクの演説は更に熱を増し、
 その目は狂気で煮えくり返っていた。

Dr「そうだ、ブラーヴォ!!
  みんな死ね!!そして復讐に蘇れ!!」

Dr「人類は不死鳥、私も不死鳥だ!!
  人類の恨みに選ばれた者だけが
  不死鳥になれるのだ!!!!!!」

Dr「ああ、そうだ……。久我匡一郎。」

 そして、思い出したかの様に
 匡一郎に話し掛ける。

匡「何だ。」

 鋭い眼で、自分を名指しした理由を問い詰める。

Dr「お前達にも因縁があってね。」

狼「因縁?祖父の事か……!!」

Dr「事の起こりは我が祖父・アドルフにまで遡る……。」

 事の回想の為、目を閉じながら話す。

Dr「国の総統の命によって祖父が世界侵略の一翼を担う為の
   活動を始めたのが1938年……。」

Dr「祖父は医学を通じて全世界の生命を掌握すべく
   研究する者の集団、ハイリゲン・フラーマを設立した。」

豪「ハイリゲン・フラーマ?」

Dr「聖なる炎、という意味だ。即ちホーリーフレイム……
   ククク、皮肉だな。」

ア「くっ……!!」

 その皮肉がバイラル達に向けられていた事は
 明らかであった。

Dr「そこに日本から『相互同盟に基づいて研究を手伝う様にと命を受け、
  参上した』と称し、お前達の祖父、Dr久我重明{しげあき}が来た。」

Dr「だが……奴は……!!」
<−HF・アドルフの研究所−>
 そこには膨大な火事の焼け跡が有った。

 大小の残り火が燻っているところから、
 火災に遭ったのが昨日今日である事を物語っている。

 そこはアドルフの研究所であり、数々の非人道な
 研究が行われていた場所でもあった。

アド「こ、これは……ワシの研究成果が全て燃やされている!!」

 自分の研究成果が灰塵と化した事を知り、
 頭を抱えるアドルフ。

 その焼け跡の中から現れた重明{しげあき}。

重「すまんな……私は貴国との同盟に基づいて派遣されてきた
  訳では無いのだ。」

アド「じ…じゃあ、何の為に……!?」

 アドルフは訳も理解らず、呆けた様に問う。

重「あんた達の噂は聞いていた。医道に反し……
  人心を惑わし、命を弄ぶ研究に魂を売った輩がいる、とね。」

龍「私がここに来た真の目的は、
   貴様らを叩き潰す為だ!!!!

 最後に怒気を含んだセリフで締めくくる。

アド「シ…シゲアキィ……!!」

アド「許るせぬ!!よくも裏切ったなァ〜〜!!!!

重「医学を裏切ったのは……貴様の方だ!!!!

 重明{しげあき}の真の目的を知り、
 重明{しげあき}に突っ掛かるアドルフ。

 だが、ひ弱な科学者の身で
 鍛え上げられた重明{しげあき}に叶う筈も無かった。

(SEドギャっ)

アド「えひゃい!!

 重明{しげあき}の鉄拳制裁を受けてアドルフは壁に吹き飛ばされる。

重「頭を冷やしてよく考えろ。貴様も医学者なら、
   人の為になる研究をする事だな。」

 そう言い残し、悠然とその場を立ち去る重明{しげあき}。

「ふぁ……ふぁが……」

 薄れ逝く意識の中、
 立ち去る重明{しげあき}を見ながら復讐を決意するアドルフ。

<−ビッグ・ノア Drスダのラボ−>

Dr「そして、祖父の意志を継いで完成したのがこれだ。」

カ&豪「そ、それは……!!」

Dr「知っていたか。そう……新種の蛭{ヒル}、バシムだ。」

Dr「卵のまま人体にジッと潜み、孵化した後は体の何処かにへばり付き、
   宿主から血を鱈腹吸い上げる……。」

Dr「どうだね、このバシムは?最高に可愛い奴等だろぉ?」

 そう言うと、溺愛するが如くビーカーを眺める。

 その目は限りなき狂気を宿し、そして恍惚としていた。

久「フン……反吐が出る……!!

 当然だが、吐き捨てる様に久那岐が嫌悪感を露わにする。

Dr「このバシムに寄生された者は、
  長い間陽光を浴びると砕け散ってしまう上に、
  養分は人間の血液しか摂取する事が出来なくなる。」

Dr「だが、代償として、基本性能が眼界まで向上する上に
  異常な再生力をもつ半不死身の肉体となる。」

兵「それって……。」

Dr「その通り、吸血鬼だ。」

Dr「これを人間だった頃のプラムとかいう凡人にくれてやった。
   無論、計画の事は話していないがね。」

Dr「奴も、所詮は私の計画の為の捨て駒に過ぎんという事だ。」

カ「その為にミレルが……!!」

匡&カ「許せ『ん』『ない』……!!」

 呆れた様に話すDrラグナロクに、
 匡一郎とカミラが怒りの言葉をぶつける。

Dr「許せない?何が許せないだ!!?」

 その時、不当な非難をされたかの如く、
 Drラグナロクは二人を睨みつける。

Dr「人類が進化して人間以外のロボット的生物に!!
  人間以上の神人{ゴットメンシュ}へと進化する事は!!」

Dr「ヤゴが脱皮して蜻蛉になるのと同じ位当然の成り行き、
  極当たり前の進化の必然を受け容れた理論ではないか!!」

 狼牙達を糾弾するかの様に、Drラグナロクは
 火の速さでがなりたてる。
 だが、舌は噛まないらしい。

ア「何故そんな事を……!」

Dr「何故だと…何故だとおおおおおおおおお!!!!?

Dr「はあ、はあ、はあ……いいだろう。
  それ程知りたいのなら特別に教えてやる!!」

Dr「私の本名は須田大介だ……。」

Dr「かつて………私は、国立大学に在籍していた頃は……
 バイラル、貴様の妻・イザベルの同僚だった……。」

Dr「だよな、バイラル?」

バ「ああ……。」

 バイラルとDrラグナロクは、
 どうやら知己の間らしい。

Dr「私は、貴様に恋をしていた同僚の女医、
  カトリーヌが如何し様も無く好きだった!!」

 カトリーヌを語るDrラグナロク、
 さっきまでの狂気に満ちた眼差しは消え、
 優しい目をしている。

Dr「好きで好きで好きで好きで好きで好きで仕方が無かった!!!!」

Dr「少しでもカトリーヌに近づきたいが一心で、
  カトリーヌが研究していた『ニュータイプ理論』への
  協力も惜しまなかった。」

Dr「だが!!!だがッッッッ!!!!あの愚劣なる愚女イザベルは!!!
  『ニュータイプ理論』を
  非現実的で非常識かつ非人道的だと侮辱し!!!!」

 だが、その下りに入ると、優しい目は消え、
 さっきまでの、いや、さっき以上の狂気に満ちた
 眼差しに変わる。

Dr「否定し!!!!

Dr「蔑視し!!!!

Dr「拒否し!!!!

Dr「嫌悪し!!!!

Dr「愚弄し!!!!

Dr「全く理解を示さなかった!!!!!!」

Dr「カトリーヌの偉大な研究に理解を示さず、
  惨い仕打ちをしたんだ!!!!」

Dr「そしてカトリーヌは絶望し、自殺した!!!!!!」

(SEドォォン)
 いつしか、狂気に満ちた目からは
 血涙が流れていた。

Dr「だが!!!!!!だが、私は貴様等とは違う!!」

Dr「カトリーヌの研究が、ニュータイプ理論が
  事実だと証明する為なら!!!!
  如何なる犠牲をも厭わない!!!!」

Dr「そしてイザベルを!!!!」

Dr「あのぉぉお憎っくき愚女イザベルを!!!!」

Dr「この手でブッチッッ殺してやったんだぁぁぁぁぁ!!!!

 身を悶えるかの様に振り回しながら絶叫するDrラグナロク。
 その姿は、狂人そのものと言って何ら差し支えなかった。

バ「妻と……娘を殺したのは……」

バ「妻と娘を殺したのは
  貴様だったのかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!

 事実を知り、Drラグナロクにこれまでに無い
 憤りをぶつけるバイラル。

Dr「その通ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉり!!!!!!!!

Dr「見事正解!!!!

Dr「暴徒と同じく狂わせた後!娘を殺させ!!」

Dr「正気に戻した後!!!絶望に突き落として殺した!!!!」

Dr「ただ殺すだけじゃあつまらんからなぁ!!!!!」

Dr「私の方がカトリーヌの愛を得るに相応しいんだァァ!!!!」

Dr「理論を認めなかったアホ共をいずれ私の前で
  平伏させてやるわぁ!!!!」

Dr「そしてアホ共が理論を認め、カトリーヌを……
  そしてニュータイプ理論を尊崇するんだ!!!!」

Dr媚びろ〜諂{へつら}え〜!!讃えろ〜!!!誉めろ〜!!!!

Dr「我々は天才だ!!ファハハハ!!!!」

 目は血涙を流しながらも、両手を広げて
 哄笑するDrラグナロク。

バ「そんな事の為だけにそんな事を…!!」

バ「その為だけに妻と娘を!!!!!!

Dr「その通りだ…その通りなんだよぉ!!!!!!!!

 天を衝く怒りに身を奮わせるバイラルを、
 Drラグナロクが哄笑する。

沙「フン……。」

Dr「痴嬢沙羅沙ぁ!!貴様ぁ、鼻で笑ったな!!!!」

沙「誰が痴嬢よ……。」

(30 Big Bang Age)
沙「全く……下らないわね。」

沙「何を偉そうにグダグダと御託並べてるのよ。」

沙「要するに、愛する者を救えなかった、という事でしょ。」

 簡潔だが、正鵠を得ている沙羅沙の一言。

バ「!!!!」

バ「何だと!!!?

 怒りが頂点にあったバイラルは、
 沙羅沙のその一言に敏感に反応する。

 その眼差しと口調には、
 明らかに非難の意思が込められていた。

Dr「貴様ぁ!その発言を撤回しろ!撤回を要求するぅ!!」

 そして、Drラグナロクもしかりで、
 沙羅沙に発言の撤回を要求する。

沙「まだ理解らないの?」

沙「愛する者を守れなかった……
  その一点でアンタは
  しっかりと負けているのよ!!」

バ「……………」

 だが、沙羅沙のその一言が
 激昂状態のバイラルを沈黙させる。

沙「そんなアンタが世界を変える
  ……人類を導くですって?
  ちゃんちゃら可笑しいわね!」

沙「ハ、それこそ負け犬の遠吠えよ!」

沙「もし……。」

沙「もしアタイがアンタだったら
  絶対に愛する者を死なせない!!
  絶対に守ってみせるわ!!

バ「………。」

沙「例え、どんな事があっても……よ!!」

エ「沙羅沙……。」

Dr「ぇえぃ!!黙れ!黙れ!!黙れぇぇぇぇい!!!!!!」

沙「五月蝿いわよ。」

 逆上するDrラグナロクに、更に話し掛ける。

沙「アンタのやってる事は、世界中に第二第三の
  カトリーヌを作る事以外の何物でもないのよ!」

バ「……!!」

 その言葉を聞き、何かを悟った様に
 目を瞑り苦笑するバイラル。

バ「……フ……そうか……。」

バ「そうだな……。お前の言う通りだ……。」

バ「知らずと、我々も奴と同じ過ちを繰り返していたのだな……。」

Dr「黙れゆぅたろぉぉぉぉ!!!!

 だが、Drラグナロクの逆上は収まらない。
 それどころか逆に火に油を注ぐ結果となる。

Dr「私は天才だ!!!!!!医学者とはな!!
  天才とはな!!」

Dr「己が理論の為に全てを犠牲にする権利が有るんだよ!!」

 余人には到底理解し難い、
 独善的な理論を展開するDrラグナロク。

Dr「て言うか、貴様らホーリーフレイムも
  同じ穴のムジナだろぉぉがぁぁぁぁっぁ!!!!!!!

 更に、ホーリーフレイムの面々を攻め立てる。

 だが、それに対してエクレールは毅然と言い放つ。

エ「そうですね……それを否定するつもりは有りませんし、
  責任を負わなければなりませんわ。」

エ「けれど…けれど……」

エ「悪事に対しては、責任を取らなければいけないんです!」

CG『それぞれの罪と罰』
エ「私達は、確かに独善的でした……。」

エ「でも、貴方のした事も悪い事だというのも判ります!」

エ「法が定めているからとか、神が決めたとか、
  そういう事ではなく……」

絵「あなたのした事で、泣いている人達がいるから!」

エ「だから、私はそれが悪い事だと
  断言する事が出来ますわ!!」

Dr「きぃ、貴様らがそんな事を言えた口かぁあぁっぁ!!!!」

 だが、逆切れ状態のDrラグナロクを尻目に、
 エクレールは更に続ける。

エ「確かに、私達が独善的だったけど……。」

エ「けど、今は違う!

エ「少なくとも、私達は変わりたいと思っています!」

エ「Drラグナロク…いえ、須田大介!!」

エ「私は、あなたを許しませんわ!!!

 言い終わると、Drラグナロクに向かい、
 凛とした瞳を向けるエクレール。

ア「エクレール……アンタ……。」

Dr「黙れ!黙れ!!小娘如きぃがっっぁ!!」

ルシェルドの真核、即ち神化体が起動し始める。

(32 terrible beat W)
Dr「フ…フハハ…ファハハハ……
  やはり、やはりカトリーヌが言っていた事は本当だった!!
  ニュータイプ理論は正しかったんだぁ!!」

Dr「アァ〜〜〜ッハッハッハッハッハッァ!!

Dr「イザベルめ!!!!ざまぁ見ろ!!ざまを見よ!!!!!!!!」
  神化体とDrスダがが融合し始める。

Dr「見ろ、この神化体を!神々しく、それでいて力強い……
  これぞ人類を神人{ゴットメンシュ}に導く道標よ!!」

Dr「さあ、神化体よ!!人間を神人{ゴットメンシュ}に
  導けェェあああぁぁ〜ははははははははははぁ!!!!!!!!!!

狼「くっ……!!」

 神化体のエネルギーを受け、つまるところ、
 一言で言えばパワーアップするDrラグナロク

デスマッチ vsアヌビスグライブ、Drスダ】
    (絶対参戦キャラ・バイラル、アイレーン、エクレール)

略{りゃ}ああっ!!

 八本のメスで襲い掛かってくるDrラグナロク。
 神人と化したDrラグナロクのその超神速の動きに
 狼牙達は全く攻撃を当てる事が出来ない。

「どうしたどうしたぁ!!」

「くっ!!」

 まだ1分足らずしか経っていないにも関らず、
 狼牙軍団はじりじりと手傷を負わされ、
 満足に立っている者さえいない状態となる。

解剖{バラ}してやるぜぁぁぁぁ!!!!

 『刻む!!』が発動する。刻む!!……
 音速で移動し、音速で斬り刻む技。

 その速さ故、本人ですら何を斬ったか
 認識出来ないという。

 その術技を持って最後の仕上げに入り、
 そして、最初の標的を憎きバイラルに決定する。
 だが……

「!!?」

 突如、アヌビスグライブが後ろからの抱擁によって
 Drラグナロクを拘束する。

「アヌビスグライブ!!?私を裏切るのか!!?」

 その隙をバイラルは逃さなかった。

 かいしんの一撃!!
 Drラグナロクに痛撃が決まった。


(23 silence..)
Dr「あ…アホな…!!何故だ!!
  何故神人{ゴットメンシュ}となった私が…
  貴様等凡人に……!!」

Dr「天才のこの私が何故ェェェェ!!!!

Dr「いや……否…否否!!!!!!そんな事は問題では無い!!」

Dr「何故だ!!何故ニュータイプ理論を!!進化を拒む!!
  何故私達の理論を侮辱!!侮蔑!!拒否!!嫌悪!!否定する!!」

豪「否定はしない…。だが、誤った理想の成就がもたらすのは、
  多くの犠牲を礎に作られる快感と優越感だけだ。」

Dr「ク……!!!だが!!だが憶えておけ!!貴様等は何れ悟る!!」

Dr「人類は!!……人類はいずれは進化しなければならない事をな!!!
  でなければ……人類に待っているのは…進化無き滅び……
  ただそれだけだ……!!!!!」

「カトリーヌ……君の元へ……導いて……。」

 糸が切れた人形の如く、息絶えるDrスダ。

ア「……。」

バ「……。」

エ「……。」

豪「奴にとっては『人類の進化』も、『人類滅亡の危機』も、
  神威の目的も如何でも良かったんだろうな。」

豪「奴にとって重要なのは、愛した女の研究と理論が
  事実であると証明する事だったという事だ。」

豪「愛情に溺れるあまり人の道を見失ったか……
  実に哀れな男だ。」

 Drスダの死体を憐れむ様に
 見ているアヌビスグライブ。

犬「……。」

狼「後は手前ぇだけだぜ。如何する?」

 その声を無視するかの様に、
 アヌビスグライブはDrスダの遺体を抱きかかえ、
 共に闇に消え去る。

狼「お……おい……!」

 闇に消える際、アヌビスグライブは
 心なしかバイラルを見た様に感じられた。

バ「アイツ……。」

豪「おい、バイラル。アイツは一体……。」

バ「いや………何でも無い……。」

沙「とりあえず、捕えられている女の子達を
  助ける方が先決なんじゃないの。」

兵「おお、そうだったぜ!」

 狼牙達は、囚われの少女達を助け出した。

ア「ところで、アンタの祖父ってどんな人だったんだい?」

 アイレーンがDrラグナロクの口から出た、
 匡一郎の祖父重明{しげあき}について唐突に聞く。
 まあ、唐突に。

匡「ん……そうだな……。」

匡「母に聞いた話だが、祖父重明{しげあき}はあの後、あの忌わしき大戦後、
  敗戦で取り残された日本兵と共に敵国に囚われたんだ。」

匡「想像を絶する悪条件下での強制労働により、
  多くの者が死んでいったと云われている。」

匡「まあ、祖父の収監された収容所だけは、祖父の医師としての
  活動のおかげで1人も死者を出さなかったらしいが。」

匡「だが、祖父は日本に帰る機会が幾度も
  有りながらも、この地に骨を埋めた。」

兵「何で?」

 兵太の当然といっちゃあ当然の質問。

匡「収容所は辺鄙な場所に有るからな。目ぼしい薬品が中々こなかったそうだ。
  祖父は日本人捕虜だけでなく、収容所の看守達の為にも
  この地に留まり続けたんだ……。」

匡「母はそんな重明{しげあき}を誇りに思う、と
  俺に聞かせてくれたものだ……。」

 そう言う匡一郎の横顔は、
 どこまでも祖父・重明{しげあき}を
 誇りに思う気持ちに満ち溢れていた。


本陣へ撤退
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撤退
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