『必殺』に見逃せないものとして、
殺しの趣向も又尋常では無い。
念佛の鐵の骨外しの透析圖から始まり、
石工の大吉(近藤洋介)の心臟掴みでは、
其に加えて何と心電圖迄登場した。
參味線屋の勇次の、絲で相手を宙吊りにする殺陣は、
たった數秒の描寫だが、
其の撮影には貳時間程かけたという噂さえ有る。
『必殺』髓壹の藝術的殺しとして名高いのが、
竹細工の市松(沖雅也)の、鋭く研いだ竹串を、
相手の急所に指して絶命させる技と云われている。
其の中の壓卷{あっかん}は、紙で鶴を負つて竹櫛の端につけ、
竹櫛を相手の急所目掛けて投げ付けて刺すと、
竹櫛は開いて端に付いた折鶴が血をドンドン吸い上げて
純白の鶴が眞ッ紅な鶴になって落ちるというものが有る。
主水も只刀を振り囘すだけでなく、
芝居小屋に忍び込んで歌舞伎役者を仕留める際、
役者が自分の喉を插して絶命する演技をする瞬間、
黒子姿で裏に潛む主水が指して本當に絶命させた。
鑓の使用も有る。
大名行列の鑓を奪って家老を刺したり、
鑓使いの鑓を檢めに行った時、其の檢分の最中に刺したりもした。
刀の目拔きを拔き、柄を取って現れた刄で刺す技も登場する。
相手の刀で始末したり、其の儘切腹に見せ掛けた事も有る。
『必殺仕事人・伍 最終囘「主水、下町の玉三郎と會う」』
では、何と將軍家の刀で將軍世繼ぎを殺すという、
とんでもない眞似を仕出かしている。
刀の目利きの最中に不意打ちをかまして殺す事も有る。
尚、主水は殺す際に相手に言葉をかける癖が有る。
「地獄の鎌の蓋が締まる前に早く逝きな!」
「ついでに言っときますがね、アンタの命たったの參兩。
安いもんですな。」
「××樣があの世でお待ちかね。お急ぎを。」
「仰る通り顔触れは揃ったが……あんたもう死んでるぜ。」
等、死者に追い討ちをかける樣なものばかりである。
又、相手に自分の正體を知らせ、
「中村、貴樣仕事人だったのか!!」
と驚かせてから始末する事も多々有る。
能有る鷹が爪を晒す瞬間の格好良さというべきか。
技の全てを擧げると…
・骨外し
・心臟潰し
・仕込煙管
・屋根突き落とし
・鍼灸の針
・髮の毛による絞殺
・花火
・足の指による骨碎き
・竹鐵砲
・木製野球用棒
・獨樂
・參味線の撥{バチ}
・催眠術
・火吹き
・櫛
・仕込み釣竿
・魚籠
・旗付き竿
・簪{かんざし}
・鋼仕込みの繩
・參味線の絲
・鐵製煙管
・花の枝
・組紐
・金絲
・吹き矢
・瓦
・ぽっぺん
・手製の手鑓
・神劍
・竹製火砲
・銀細工の鶴
・南京玉簾
・仕込み參味線
・仕込傘
・水引き
・への字型投具式櫛
・野球用棒状の鎌
・拍子木
・仕込鞭
・兩端に分銅の付いた紐
・小刀
・怪力
・刀
等等、多彩なものが有る。 |