エピソード

EPSODE1〜黒田蒼鬼という漢{おとこ}

おれの名は九十九逸彦。聖城学園在籍の平凡な男子学生だ。
「エピログねぇ、スキルもねぇ、キャラクリチェックは何物だ?」
の哀しき汎用キャラだぜ。チクショー!
普段は毎日真面目に狼牙軍団に勤めて、
妹達を大事にする普通の学生だ。 
巷じゃあ、人呼んで「疾風の逸彦」。
その筋じゃ少しは知られた特体生で、
どんなヤバい仕事でも事情次第で引き受ける人情家さ。

現番長・黒田蒼鬼は今でこそ広く名前が知られているが、
ネオ・ホーリーフレイム『ノア』との戦いまでは、狼牙軍団の中では
余り名前が知られていなかった。
まあ、蒼鬼が専守専制に徹していた事も有ったがな。
どうもあいつは少しお人好し過ぎるところがあるんだよなぁ……。

ノアとの戦いの時……
あの時は、ノアに寝返る者が激増していた時だった。
その日もノアに寝返ろうとした奴がいた。
まあ……そいつはおれがとっ捕まえたさ。
狼牙軍団の初期メンバーの実績は伊達じゃないぜ!

裏切り者をどうするかで、狼牙軍団は大いに揉めた。
委員長とかの穏健派からは追放だけで済まそうという意見が出、
バイラルとかの強硬派からは極刑に処すべきという意見が出、
会議は一向に収まる気配が無かった。
まあ、裏切り者の処分がどうなろうと
今後も寝返る奴は出てくるだろうがな。
結局、処分を下すのは直接の指揮者である
蒼鬼という事になったんだ。



<−聖城学園・牢座敷−>
裏切り者「ひ……ひぃ……!!」

蒼鬼「……。」

裏「い、命だけは……!!」

蒼「何故裏切った……。」

裏「そ…それは……。」

蒼「裏切った理由が解らねぇと、如何し様もねぇだろうが。」

裏「え?」

蒼「テメーが裏切ったのは事実だ。だが……。」

蒼「それは狼牙軍団や俺がテメーにとって
  いるだけの価値が無かったというだけの事だ。」

裏「……。」

蒼「いいか。裏切りてぇなら裏切れ。
  だがな……だがな、裏切る時は俺に一言相談しに来い。」

蒼「俺が何とかしてやる。テメーが意地でもそこにいたいと
  思う様な俺に……狼牙軍団に変えてやる。」

蒼「その上で、尚裏切りてぇならいくらでも裏切れ。」

蒼「その上で、もし……
  もし変えてぇなら、テメーの力を俺に貸してくれ。」

裏「蒼鬼さん……。」



まあ、簡潔に説明するならこんなところだが、
こんな事が有って、結局処分は保留になった。

だが、不思議な事にこの事件以降、狼牙軍団から
ノアに寝返ろうとする者は一人もいなくなったんだ。
いや……それどころか、今まで寝返った連中まで蒼鬼を通して
次々と狼牙軍団に復帰していったんだ。
改めて考えると、すごい人間力だよな。

黒田蒼鬼の名前が狼牙軍団の中で知れ渡ったのはこの事件からさ。
蒼鬼には他にも逸話が有るが、今日はここまでにしておこうか。

EPSODE2〜失ってはならぬもののために

おれの名は九十九逸彦。聖城学園在籍の平凡な男子学生だ。
「エピログねぇ、スキルもねぇ、キャラクリチェックは何物だ?」
の哀しき汎用キャラだぜ。チクショー!
普段は毎日真面目に狼牙軍団に勤めて、
妹達を大事にする普通の学生だ。 
巷じゃあ、人呼んで「疾風の逸彦」。
その筋じゃ少しは知られた特体生で、
どんなヤバい仕事でも事情次第で引き受ける人情家さ。

ネオ・ホーリーフレイム・『ノア』との戦いも終わり神威との決戦が
近付いていた頃の話だ。
元ホーリーフレイムの総長、ジャンヌが神威との決戦を前に焦ってか、
単独行動の末に戦場で孤立して取り残されてしまったんだ。
すぐに援軍を出すかどうかで、狼牙軍団は大いに揉めた。
すぐに援軍を出そうという意見と、相手の罠を懸念しての
慎重論の二つに分かれ、会議は一向に収まる気配が無かった。



<−聖城学園・校門前−>
 聖城学園の校門をこっそりと抜け出し、ジャンヌの救出に
 向かおうとするエクレール

エ「ママが危ない目にあってるのに……。」

エ「何もしない訳にはいきませんわ……。」

蒼鬼「何処へ行く気だ?」

 気付くと、そこには蒼鬼がいた。

エ「あの……ママを助けに……。」

蒼「で……あの時、ルシェルドに喰われかけた様に
  自分から死に向かっていくつもりか?」

エ「……それは……」

蒼「はっきり言っておくが、俺は自己犠牲とかいう言葉が嫌いだ。」

エ「で、でも……!」

蒼「何だ?」

エ「ママが危ない目に逢っているのに、このまま
  何もしない訳にはいきませんわ!」

蒼「そうか……分かった。だがな、俺も一緒についていってやる。」

蒼「それと……。」

 蒼鬼が暗闇に目をやると、そこにはジョドーがいた。

ジョ「……。」

蒼「ルシェルドの時もそうだったな……。」

ジョ「ああ……。」

蒼「喰われると判っておきながら何故止めなかった?」

ジョ「ジャンヌ様の為だ。大儀の為には……
  ある程度の犠牲も止むを得ないのだ。」

蒼「寝言なら養老院で言え……!!」

 普段は滅多に表情を現さない蒼鬼が、静かだが、
 明らかに怒りを露わにした表情で言い返す。

ジョ「……何を言っても無駄の様だな。」

蒼「ああ……その通りだ。」

蒼「行くぞ、エクレール。」

エ「は、はい……!」

<−どこかの戦場−>
ジ「目が霞んできたな……。もう……終わりか……」

蒼「ジャンヌ!」

エ「ママ!」

ジ「エクレール……黒田蒼鬼……何故ここに?」

エ「あの……ママが大変って聞いたから……ボク……。」

蒼「率直に言う。テメーを助けに来た。」

ジ「そうか……。」

蒼「じゃあとっとと帰るぞ。ついて来い。」

ジ「無理だな。」

エ「え!?」

ジ「この傷だ。私はもう助からないだろう。
  それに、助かるとしても、私は足手纏いにしかならない。」

蒼「ジャンヌ……」

蒼「歯ぁ喰い縛れぃッッッ!!!!

 そう叫ぶや否や、ジャンヌに気付けの平手打ちを喰らわす。

エ「……!!?」

ジ「くっ……!!」

蒼「いいか…よく聞けよジャンヌ……。」

蒼「死ぬから人間は綺麗なんじゃねぇ!死ぬ程の目に会っても…
  まだ自分が生きている事を思い出して…必死に生きて……
  にっこり笑えるから、人間は綺麗なんだ!!」

ジ「何故だ……私はお前達を汚れた民だと断罪し、
  滅ぼそうとした女なのだぞ!なのに……」

蒼「フン……。」

蒼「俺は、その罪故に他の人々を
   蔑んだり裁いたり出来る様な人間じゃ無ぇからな。」

蒼「それに……。」

エ「それに……?」

蒼「母親が殺されて泣く奴を見るのは……
  真っ平ゴメンだからな……。」

蒼「それも、二回泣く奴を見るのはな……」

エ「蒼鬼さん……。」

ジ「そうか……。」

蒼「俺が敵を引き付ける。エクレールはジャンヌを連れて
  戦場から撤退しろ。」

蒼「撤退したら狼煙を上げるんだ。そしたら俺も撤退する。」

エ「でも、そしたらあなたが……」

蒼「これが死に逝く人間の顔に見えるか。」

エ「分かりました……。」

ジ「蒼鬼……死ぬなよ。」

蒼「ああ。」



まあ、という訳で、エクレールはジャンヌを連れて見事撤退、
蒼鬼も常人ならとっくにお陀仏になっている程の大怪我を負いながらも
無事に撤退を成功させたんだ。



<−真夜中の聖城学園−>
ジ「蒼鬼……。」

蒼「何の用だ?」

ジ「一つ聞きたい事が有る……。」

ジ「『母親が殺されて泣く奴を見るのは真っ平ゴメンだ』……
  お前はそう言ったな。」

蒼「ああ。」

ジ「それはどういう意味だ?」

蒼「それはだな……。」

蒼「俺は……NAGASAKIの孤児院で育った孤児だ。」

蒼「孤児院の院長は……俺が姉と慕い、母と呼んだ
  女性{ひと}だ。」

蒼「孤児ならば、日本人だけでなく、外国人も受け入れていた。」

蒼「本当に……本当に心の温かい人だった。」

蒼「だが、その人は……。」

蒼「十年前の……神威とラグナロクが起こした
   外国人虐殺事件で……」

蒼「殺された……。」

蒼「だが神威やラグナロクを憎む前に許せなかった……。」

蒼「俺自身が許せなかった!!」

蒼「俺は……俺は何も出来なかったんだ!!」

蒼「だから……だから俺は俺と同じ悲しみを持つ奴を
  つくりたくねぇんだ!!!!」

ジ「そうか……。」

ジ「不思議だな……。お前といると、ふと一昔前の
  平和だった頃の懐かしい匂いを思い出す……。」

ジ「蒼鬼……」

蒼「何だ?」

ジ「出来ると思うか?」

ジ「守り通せると思うか?」

蒼「さあな……。んな事ぁ俺にも判ンねぇよ。」

ジ「フ……そうだな。」



てな訳だ。
蒼鬼には他にも逸話が有るが、今日はここまでにしておこうか。



本陣へ撤退
本陣へ撤退
撤退
撤退